ビジネスシーンなどで頻繁に耳にする「させていただく」という言葉。丁寧で遜った印象を受けますが、自分が正しく使えているか確認したことはありますか? 早速、意味を確認していきましょう!
「させていただく」の意味や正しい使い方とは?
実は「させていただく」という言葉の使い方が、文化庁が作成した「敬語の指針」という資料で解説されるほど、問題となっていることを知っていますか? この機会にきちんと意味を理解して、正しい使い方をマスターしましょう!
意味
「させていただく」とは、相手に許しを請いながら、遠慮がちに動作を行うことを意味します。「させてもらう」の謙譲語で、この場合の「いただく」は補助動詞であるため、漢字で「頂く」と書くことはできません。
使う時の注意点
「させていただく」の使い方が適切かどうかの判断は、次の二つの条件を、どの程度満たしているかによります。一つ目は「相手側または第三者の許可を受けているか」、二つ目は「そのことで恩恵を受けるという事実や気持ちがあるか」です。
具体的な可否の判断については、次の例文にてご確認ください。
使い方を例文でチェック!
使うときの注意点で説明した二つの条件について、実際に例文を用いて確認していきましょう。
1:「あなたが作成した書類のコピーをとらせていただけますか」
この例文では、相手に「コピーをとってもいいか」と「許可」を求めて尋ねています。さらに、コピーを取ることで、自分は別の場所でも書類を見ることができるという「恩恵」を受けます。そのため、この文は「させていただく」の使い方が適切と言えますね。
2:「1週間受け取りに来ない場合、Aさんの荷物を処分させていただきます」
荷物を処分することで、スペースが空いたり、管理する手間がなくなる「恩恵」を受けますね。また、同時に荷物はAさんという第三者の所有物であるため、それを処分する「許可」も求めています。よって、これも適切な使い方です。
3:「誠に勝手ながら、本日は休業させていただきます」
お店の張り紙などでよく目するこのフレーズはどうでしょう。店側は、休業することにより、別の用事を済ませたり、体調を整えることができるという点で「恩恵」を受けているといえます。しかし、休業の判断や決定は店側が行うものであり、客に「許可」を得るものではありません。そのため、使い方が適切とは言えないでしょう。
4:「大学では経済学を専攻させていただきます」
この例文も、大学で経済学の学位を得るという点では「恩恵」を受けますが、その学問の専攻に第三者の「許可」は必要ありません。そのため、この例文の使い方は適切とは言えないでしょう。この例文の場合、「大学では経済学を専攻します」で十分です。
本来「させていただく」は正式な敬語であり、間違った敬語ではありません。しかし、適切ではない状況下で多くの人が頻繁に使用したことで、違和感を感じる人が増えていきました。その結果「させていただく」という言葉自体に「間違った敬語」というイメージがついてしまいました。
「させていただく」は、適切な場面で必要なだけ使えば、自然で違和感のない言葉です。しかし、ビジネスシーンなどで丁寧に話そうと意識しすぎて、むやみやたらに使うと「くどい」「うざい」「うっとうしい」「聞きづらい」などとマイナスなイメージを持たれることも少なくありません。
どんなに素晴らしい内容のプレゼンをしても、言葉の使い方のせいで相手の心に響かないとなっては、本末転倒です。必要以上に丁寧に話そうとせず、自信を持って、正しい言葉を必要な時に使うよう心がけましょう!
言い換え表現とは?
言いやすい上に丁寧なイメージが強い「させていただく」。多用してしまいがちなフレーズですが、不適切な使い方の乱発は厳禁です! 別の言葉に言い換えて、正しくスッキリとした文で伝えましょう。
1:「休業させていただきます」→「休業いたします」
「させていただく」は「いたします」と言い換えることができます。「いたします」とは「する」の謙譲語「いたす」のあとに、丁寧語の「ます」がついた言葉です。
「休業いたします」とすることで、丁寧なイメージを損なわずに、違和感を感じさせていた「させていただく」の「許可」のニュアンスがなくなり、シンプルな言い回しになりましたね。
2:「拝見させていただきます」→「拝見します」
「拝見」は「見る」の謙譲語であり「させていただく」も「させてもらう」の謙譲語です。謙譲語や尊敬語といった敬語を二つ重ねることは「二重敬語」と呼ばれ、適切な使い方ではありません。
「拝見」という謙譲語を使うのであれば、後半は「する」の丁寧語「します」というシンプルな言葉でまとめましょう。「させていただく」と回りくどい言い方をしなくても、十分丁寧ですね。
3:「ご確認させていただき、お渡しさせていただきます」→「確認し、お渡しします」
二重敬語と同じくらい気をつけたいのが、一文の中で「させていただく」を連発すること。意味もなく文章が長くなり、読みづらく、聞き取りづらくなります。丁寧に話すというのは、長く話すことではありません。余分な言葉を削る方が、美しい日本語になりますよ。
英語表現とは?
英語に敬語はありませんが「させていただく」という言葉の「やらせてほしい」「やらせてもらう」というニュアンスを持つ英語はあります。実際の会話でもよく使われるので、確認していきましょう!
1:let me …
「let」は「させてやる」「することを許す」という意味を持つ言葉です。「確認いたします」と言いたい時は「Let me confirm」と表現できます。
2:allow me …
「allow」は「許す」という意味を持つ単語です。「サンプルを取らせてください」と言いたい時は「Allow me to take a sample」と言います。「let」と違い「allow」は後ろにto不定詞が必要です。
最後に
改めて使い方を確認したい敬語「させていただく」について解説しました。正しい使い方は理解できましたか? 敬語は便利ですが、適切に使わないと、逆に相手に不快感を抱かせてしまうかも。正しく使うことで、ワンランクアップした会話を楽しんでくださいね。
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