目次Contents
この記事のサマリー
・「させていただく」は誤りではなく、相手の許可と恩恵がある場面で使える敬語表現です。
・正しく使えるか迷ったら、「許可を受けているか」「恩恵があるか」の2点で判断しましょう。
・丁寧さを意識して多用すると、くどく聞こえるため、必要な場面だけに絞って使うのがコツです。
「させていただく」は丁寧な言い方として広く使われていますが、場面によっては回りくどく、不自然に聞こえることがあります。実はこの表現そのものは誤りではなく、相手の許可や恩恵があるかどうかが使い分けのポイントです。
意味や注意点、違和感の原因、言い換え表現まで確認していきましょう。
「させていただく」の意味や使うときの注意点は?
まずは意味と注意点から確認します。

意味
「させていただく」は、相手や第三者の許可を受け、そのことによる恩恵を意識しながら、自分の行為をへりくだって述べる表現です。「させてもらう」を丁重に言い表した形で、この場合、漢字「頂く」は避け、ひらがなで表記するのが適切です。
使う時の注意点
「させていただく」の使い方が適切かどうかの判断は、次の2つの条件を、どの程度満たしているかによります。1つ目は「相手側または第三者の許可を受けているか」、2つ目は「そのことで恩恵を受けるという事実や気持ちがあるか」です。
具体的な可否の判断については、次の例文にてご確認ください。
使い方を例文でチェック!
使うときの注意点で説明した2つの条件について、実際に例文を用いて確認していきましょう。

「あなたが作成した書類のコピーをとらせていただけますか?」
この例文では、相手に「コピーをとってもいいか」と「許可」を求めて尋ねています。さらに、コピーを取ることで、自分は別の場所でも書類を見ることができるという「恩恵」を受けます。
そのため、この文は「させていただく」の使い方が適切だといえますね。
「1週間受け取りに来ない場合、Aさんの荷物は処分させていただきます」
荷物を処分することで管理の手間が省けるという「恩恵」があります。本来は相手の許可が必要な行為ですが、条件を満たした際の一方的な通告を、あえて「させていただく」を使うことで強制的なニュアンスを和らげる効果があり、ビジネスシーンでは適切に機能します。
「誠に勝手ながら、本日は休業させていただきます」
この例文は、休業することで店側が「恩恵」を受けるといえますが、厳密には客の「許可」を得ているわけではないため、条件を十分に満たしているとは言いがたい面があります。
ただし、広く了承を求めるニュアンスとして社会的に定着しており、不適切と断定することは難しい表現でもあります。言い換えとして「休業いたします」もシンプルでいい選択肢です。
「させていただく」に違和感を持つ理由は?
本来「させていただく」は正式な敬語であり、間違った敬語ではありません。しかし、適切ではない状況下で多くの人が頻繁に使用したことで、違和感を覚える人が増えていきました。その結果「させていただく」という言葉自体に「間違った敬語」というイメージがついてしまいました。
「させていただく」は、適切な場面で必要なだけ使えば、自然で違和感のない言葉です。しかし、ビジネスシーンなどで丁寧に話そうと意識しすぎて、むやみやたらに使うと「くどい」「うざい」「うっとうしい」「聞きづらい」などとマイナスなイメージを持たれることも少なくありません。
どんなに素晴らしい内容のプレゼンをしても、言葉の使い方のせいで相手の心に響かないとなっては、本末転倒です。必要以上に丁寧に話そうとせず、自信を持って、正しい言葉を必要な時に使うよう心がけましょう!
言い換え表現は?
言いやすい上に丁寧なイメージが強い「させていただく」。多用してしまいがちなフレーズですが、不適切な使い方の乱発は厳禁です! 別の言葉に言い換えて、正しくスッキリとした形で伝えましょう。

「休業させていただきます」→「休業いたします」
「させていただく」は「いたします」と言い換えることができます。「いたします」とは「する」の謙譲語「いたす」のあとに、丁寧語の「ます」がついた言葉です。
「休業いたします」とすることで、丁寧なイメージを損なわずに、違和感を与えていた「させていただく」の「許可」のニュアンスがなくなり、シンプルな言い回しになりましたね。
「拝見させていただきます」→「拝見します」
「拝見」は「見る」の謙譲語であり「させていただく」も謙譲語です。同じ種類の敬語を二つ重ねることは「二重敬語」と呼ばれ、適切な使い方ではありません。
「拝見」という謙譲表現を用いるなら、「拝見します」で十分丁寧です。ここでの「します」は、「する」に丁寧の助動詞「ます」が付いた形です。
「ご確認させていただき、お渡しさせていただきます」→「確認し、お渡しします」
二重敬語と同じくらい気をつけたいのが、一文の中で「させていただく」を連発すること。意味もなく文章が長くなり、読みづらく、聞き取りづらくなります。丁寧に話すというのは、長く話すことではありません。余分な言葉を削る方が、美しい日本語になりますよ。
「させていただく」に関するFAQ
ここでは、「させていただく」に関するよくある疑問と回答をまとめました。参考にしてください。
Q1. 「させていただく」は間違った敬語ですか?
A. いいえ、表現そのものが間違いというわけではありません。相手や第三者の許可を受け、そのことで自分が恩恵を受ける場面では、適切な敬語表現です。
Q2. どんなときに使うのが適切ですか?
A. 判断の目安は二つです。ひとつは相手側や第三者の許可があること、もうひとつはその行為によって自分が恩恵を受けること。この両方があると、使いやすくなります。
Q3. 「休業させていただきます」は正しい表現ですか?
A. 広く使われている表現で、大きく不自然とは言い切れません。ただし、相手の明確な許可を得ているわけではないため、場面によっては「休業いたします」のほうがすっきり自然に伝わります。
最後に
「させていただく」は、丁寧である一方で、使う場面を誤ると回りくどい印象を与えることもある表現です。大切なのは、相手の許可や恩恵がある場面かどうかを意識しながら、必要なところで適切に使うこと。迷ったときは「いたします」などのシンプルな表現に言い換えると、より自然で伝わりやすくなりますよ。
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武田さゆり
国家資格キャリアコンサルタント。中学高校国語科教諭、学校図書館司書教諭。現役教員の傍ら、子どもたちが自分らしく生きるためのキャリア教育推進活動を行う。趣味はテニスと読書。



