天気による不調は気のせいではない
昔から、「雨が降ると古傷が痛む」とか、「季節の変わり目は体調を崩しやすい」など、天気と体調とを関連付けることはよくいわれてきました。しかし、その因果関係がはっきりとわからなかったため、当事者が症状をうったえても「気のせい」であるとか、「心の問題」として片付けられてしまっていました。でも、それは決して「気のせい」でも「心の問題」でもありません。
私は長年、自律神経と痛みの関係性について研究を続けながら、原因不明の慢性痛を抱える患者さんたちを1万人以上、診察してきました。そして、実験や研究を続けていくうちに、天気の変化が私たちの体や心に大きな影響を与えているという事実を突き止めることができたのです。
天気の変化に伴う不調には、頭痛、めまい、首・肩こり、腰痛、関節痛、むくみ、耳鳴り、だるさ、気分の落ち込みなど実にさまざまなものがあり、それらの病態を総称して「気象病」と呼んでいます。私は、その中で痛みを伴う症状のことを「天気痛」と名付けました。
これらの不調は、天気(気圧、気温、湿度)の変化が耳の奥の内耳や自律神経に作用して現れるもので、誰の身にも起こりうる症状なのです。
気圧の変化に敏感な人は、雨が降る日がわかる
天気の変化に敏感でない人でも、「蒸し暑くなってきたから雨が降るかもしれない」とか「急に北風が吹いてきたから雪が降る可能性がある」ということくらいはわかりますが、敏感な人、すなわち気象病に悩んでいる人は、台風が発生する前からそれがわかったり、翌日の雨を予測できたりします。
なかには、気圧が何ヘクトパスカル下がったか、あるいは何分後にゲリラ豪雨に見舞われるか、といったことを正確に当てる人たちもいます。気象病持ちの人は、それだけ気圧に対して敏感なセンサーを持っているということです。
こういった人たちが天気の変化を見通せるのは、ズキズキした痛みを感じるより前に体に生じる違和感を、鋭く察知できるからなのだと思います。ムズムズやモヤモヤといった、痛みに至る前段階のなんとなく気持ちの悪い感覚によって、その先の○日後、○時間後、○分後に、自分の体で起こることを予想できるのです。
自分の体調によって天気の変化がわかるという自覚がある場合は、体調の変化と天気との関連性を日誌につけてみてください。1ヶ月ほど続けると、天気と痛みの関連性が明らかになり、自分のなかでも具合が悪くなるパターンが見えてきます。急な痛みに備え、薬を飲むタイミングも計りやすくなるので、オススメの方法です。
気象病対策のカギは「耳」と「自律神経」
気圧の影響を受けやすい人は、内耳のセンサーが敏感なことがわかっています。内耳は聴覚や平衡感覚をつかさどり、視覚とともに、体が倒れないようバランスを保つための情報を脳へと伝達する役割を果たしています。
たとえば、めまいは内耳に異常が発生しているときに起こりうる代表的な症状のひとつです。気象病の患者さんのなかには頭痛がひどくなる前に、めまいが起きている人も少なくありません。とくに感受性の強い人であれば、天気が崩れる数日前から、めまいが気象病の予兆として現れているほどです。
私が行う気象病対策は、気圧を感じるセンサーである内耳の状態をよくすること。そして自律神経のコントロールです。
気圧の変化だけが体調不良に関与しているのであれば、耳の血行不良をよくするだけでもすぐに症状の改善が見込めます。ここからは、今すぐできる、耳の血行を整える方法をお伝えします。ぜひ実践してみてください。
◆くるくる耳マッサージ
内耳の血行をよくする方法として最初に紹介するのは、〝くるくる耳マッサージ〟。
やり方はとても簡単です。[1]~[6]の手順でやってみてください。
1. 両耳の上部を軽くつまみ、5秒間、上に引っぱる
2. 両耳の真ん中を軽くつまみ、5秒間、横に引っぱる
3. 両耳の下部を軽くつまみ、5秒間、下に引っぱる
4. 両耳の真ん中を軽くつまみ、横に引っぱり、そのまま耳を前から後ろにゆっくり大きく5回まわす
5. 両耳を包むように曲げて、5秒間キープする
6. 両耳を手のひらで覆い、円を描くように前から後ろにゆっくり5回まわす
※耳を引っぱりすぎず、痛みや違和感を覚えたら中止してください。痛みが引かないときは、耳に異常がある可能性があるので医療機関を受診しましょう。
耳がポカポカと温まってきたのではないでしょうか? くるくる耳マッサージのいいところはセルフケアで即時効果も期待できるところにあります。
◆耳の後ろのツボ押し
耳の後ろにあるツボを刺激することでも、血行をよくすることができます。オススメのツボは、耳の後ろにある「完骨(かんこつ)」、「頭竅陰(あたまきょういん)」、「翳風(えいふう)」の3つです。
乳様突起… 耳の後ろ側にある出っ張った骨の部分。
ツボ1「頭竅陰(あたまきょういん)」
乳様突起の上にあるくぼみのところ。平衡感覚を正常にしてくれるツボ。
ツボ2「完骨(かんこつ)」
乳様突起から人差し指1本分後ろのくぼみのところ。首から頭への血流をよくするツボ。「完骨」は首から頭にかけての血行をよくするツボなので、めまいや頭痛への効果が大きいです。
ツボ3「翳風(えいふう)」
耳たぶの付け根にあるくぼみのところ。全身の血流を改善するツボ。
※ツボ押しにより急激に血行が良くなり、症状がひどくなる場合もあるので、体調が悪化した場合は、すぐにツボ押しをやめて安静にしましょう。
ツボを刺激する方法はいろいろありますが、左右の人差し指で軽く押すのがもっとも簡単なやり方です。
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