「リードしない」リーダーの時代−自分らしいリーダーシップを見つける
新しい年が始まり、キャリアやライフプラン上の目標を考えている人もいると思います。着々と仕事経験を積んできた皆さんは、そろそろ責任ある仕事を任されたり、リーダーの役割を引き受けたりする機会も増えてくるタイミング。今回は、そんな皆さんと一緒に、「リーダーシップ」について考えていきたいと思います。
リーダーシップとは?
皆さんはリーダー、リーダーシップと聞いてどんなイメージを持ちますか? または皆さんの身近にいる「リーダー」はどんな人ですか?
リーダーシップ研究で有名なジョン・P・コッターによれば、リーダーシップにはカリスマ性など個人の資質は関係なく、リーダーシップの役割は「変化に対処すること」です※。
変化への対処は、今日ビジネスの世界で活動する全ての人に求められています。例えば、新型コロナウィルス感染拡大の影響で、私たちの仕事や生活は大きな変化に直面しました。変化に応じてお客様への対応や製品・サービスを変更したり、これまでの仕事のやり方を大きく変えることになったりした人も多いでしょう。
そのような状況下で求められるのがリーダーシップです。リーダーは、地位や肩書ではありません。いつでも誰でも、変化に対処する場面ではリーダーになることができ、リーダーシップを発揮できるのです。
また、リーダーシップを磨くことは仕事以外の場面でも役立ちます。家族や友人関係、趣味の集まりなど、皆さんが所属するさまざまなコミュニティも、変化に直面することがあるでしょう。私たちの人生は変化の連続です。リーダーシップを磨くことで、変化に振り回されるのではなく、大切な人たちとともに変化を乗り越えていくことができるようになります。
最近の潮流は「リードしない」リーダー
近年のリーダーシップ研究では、従来の「強いリーダー」のイメージとは真逆のリーダーシップスタイルが注目されています。
例えば「サーバントリーダーシップ」(メンバーを率いるのではなく、メンバーに奉仕するように支援的に関わる)や、「オーセンティックリーダーシップ」(自分自身の弱さや不完全さを認め、自分らしさを大事にする)などです。
なぜこのようなリーダーシップが注目されるのかといえば、変化の激しい今のビジネス環境では、リーダーひとりの才能でチームをまとめ続けることに限界があるからです。ビジネスで起こる問題は複雑で、正解は誰にもわかりません。リーダーがひとりで何から何まで判断し、メンバーがそれに従うというかつてのやり方では、成果が出づらくなっているのです。
逆に、チームメンバーの多様な個性を最大限生かすことで、成果を実現するのが今のリーダーの仕事です。そのため、メンバーの良さを引き出し、メンバーの横に並んで一緒に走るような、自然体のリーダーシップが注目されているわけです。
明日からの一歩
この記事では、リーダーシップとは何か、リーダーシップの最近の潮流についてお伝えしてきました。
最後に、明日からすぐに実行できる、自分らしいリーダーシップのためのアクションを紹介します。
仕事でもプライベートのつながりでもかまいません。身のまわりで魅力的なリーダーを1人見つけ、観察してみましょう。その人のリーダーシップにはどんな「その人らしさ」があるか、考えて言葉にしてみてください。
その人がリーダーシップを発揮することで、周りの人にとってどんな良いことが起きていますか。逆にその人がいなくなると、周りの人にどんな影響があるでしょうか。思いつく限り、挙げてみましょう。
周囲のさまざまなリーダーシップを観察し、自分らしいリーダーシップとは何だろう? と考えるきっかけにしてみてください。これからの何回かの連載では、皆さんが自分らしいリーダーシップを見つけ、磨いていくためにヒントとなるような情報をお伝えしていきたいと思います。
※「DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー 2011年9月」「[新訳]リーダーシップとマネジメントの違い」(ジョン・P・コッター/編集部訳)(ダイヤモンド社)
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児玉 結
株式会社リクルートマネジメントソリューションズ HRDサービス開発部主任研究員。広告業界などを経て2008年に同社に入り、以来一貫して企業向け研修など人材育成サービスの企画に従事。新入社員~管理職まで、幅広い領域の企業研修の企画を担当。マネジメントやリーダーシップ、学習や成長といったテーマでの調査・研究も行っている。