仏事のプロが教える、お墓参りの持ち物
子どものころ、親や親戚の見よう見まねでなんとなくしていたお墓参り。大人になって「お線香ってこれでいいの? お花はこれであっているの?」そんな迷いがある中でお墓参りをしていませんか?
そこで、今回は、お墓参りの基本から素朴な疑問の答えまで、お墓参りの基本マナーをご紹介します。
お墓参りには何を持って行けばいい?
いざ、お墓参りに出かけるとなると、どんなものを持参するのがマナーなのか、意外と知られていないものです。一般的な持ち物リストはこちら。
・掃除用具(ゴミ袋、雑巾、軍手など)
・線香
・果物・菓子などの飲食物
・花
・数珠(仏式の場合)
このうち、線香、果物・菓子などの飲食物、お花はお供え物です。それぞれ、マナーを詳しく解説していきます。
お供え物のマナー
◆1. 線香
線香は、場を清め、故人の食べ物としての役割があるといわれます。また、香りによって心身を浄化する意味合いもあります。持参するのは、市販の線香でかまいませんが、香りの良いものを選ぶと良いでしょう。
線香は、まず火をつけ、それを消してから香炉と呼ばれる、お墓にある線香を置く場所にお供えします。線香に火をつける道具に特に決まりはありません。ライターから直接つけても良いですし、一度ろうそくに火をつけてから線香に火をつけてもかまいません。
また、線香の火を消すときに息で吹き消すのはNG。手であおいで消すのがマナーです。
線香を横に寝かせて供えるタイプの香炉は、多量の線香を焚くと高熱を発し、香炉にヒビが入ることがあるので注意しましょう。また、お墓参りが終わってお墓から去る際、火事を防ぐため、焚いた線香には水を少しかけて消します。ただ、焚いた直後に香炉に水をかけて急に冷やすと、香炉にヒビが入りやすくなるので、注意してください。
◆2. 果物・菓子などの飲食物
お供え物の飲食物は、故人の好きだった食べ物を選ぶと良いでしょう。主な飲食物について気をつけたいことをご紹介します。
果物やお菓子など
お墓に果物やお菓子などを置いて帰るとカラスなどが来て、食い散らかしてしまいます。お参りが済んだら、その場でいただくか、持ち帰りましょう。
お酒
故人の好きだったお酒などもお供えして大丈夫です。ただし、墓石にかけると墓石が変色することがあるので、おすすめしません。直接かけるのではなく、容器にいれたままお供えしましょう。
缶類
アルミ缶に入った飲食物をお供えする場合は、墓石の上に長期間放置すると缶のあとがシミになってしまいます。スチール缶の場合は、さらにサビが染み込んでしまうこともあります。缶類もお参りが終わったら、放置せずに持ち帰るようにしましょう。
◆3. 花
花は、色や種類などに、特に決まりはありません。故人が好きだった花などを用意しても良いでしょう。ただし、バラなどトゲがある花の場合はあらかじめトゲを取り除くのが無難です。生花店で“お墓参り用”と言えば、アレンジしてもらえます。一般的に、左右が「対(つい)」になるように用意します。
また、一般的には束になった花をお供えしますが、「故人が生前に大輪の花を一輪飾るのが好きだったから、お墓にも同様に供えたい」などの理由から、一輪をお供えするのは問題ありません。命日やお彼岸、お盆など、特別なタイミングでアレンジ花を供えるなどのも良いと思います。
花粉は事前に取り除くのがベター
お供えするときにユリなどは花粉が墓石につくとシミになることがあるので、お供えする前に花粉は取り除いておきましょう。
造花でもマナー違反ではない
「花は造花でもいいか」というご質問をよくいただきますが、特に生花でなければならない、ということはありません。昔は、お墓を華やかにするために、家の庭に咲いている花を持参したものでした。現代ではなかなかすべてのお宅に花が咲いているわけではないため、生花店でお花を買ってお墓に飾ることが一般的になっています。
お墓が遠い、忙しいなどの事情で頻繁にお墓参りには行けないけれど、お墓に花を絶やさないようにしたいのであれば、造花を飾るのも良いでしょう。あるいは、大型の霊園などでは年間契約などで、定期的にお墓をお掃除しお花を供えることを代行するサービスを行っていることもあります。そちらの利用も検討されてはいかがでしょうか。
◆お墓に植木を植えたい場合
「故人が大好きだったお花を枯らさずに近くに添えたい。植木をお墓の近くに植えてもいいか」というご質問もいただくことがあります。
植えてはいけない、というわけではないですが、墓域に植木を植えた場合は、剪定等の手入れが必要になるでしょう。植木を放置した結果、根が張りすぎて、墓石や地下の納骨棺、外柵等を押してしまい、傾きの原因になるなど、墓石を痛めることがあるためです。また、霊園、お寺の墓地それぞれにルールがありますので、まずお墓の管理者に聞いてみましょう。植木の高さ・種類などが決まっていることもあります。
墓前に到着したら、まずはお掃除から
お墓参りの持ち物がすべてそろったら、お墓参りに出かけましょう。お墓に着いたら、まずはお掃除から行います。
1. お墓の敷地内と墓石の掃除をすませます。
2. 花は風で倒れないよう茎を短く切って、花立に供えます。
3. 水鉢にお水をあげ、お菓子や果物、お酒などもお供えします。
4. お線香に火をつけて香炉皿に置きます。
5. しゃがむか腰を低くして手を合わせ、心をこめてお参りしましょう。
お参りする際、墓石よりもご自分の目線が高くなってしまう場合は、ご先祖様を見下ろさないようにしゃがんでお参りすると良いです。
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お墓参りに持参する持ち物や、お墓参りの基本マナーについてご紹介してきました。
お墓参りは、ある程度マナーはあるものの、厳格に決められているわけではありません。ですので、一般的なマナーは押さえながら、あまりマナーに固執する必要はありません。それよりも、故人のご冥福を祈り、清い心でお墓に訪れ、心を込めてお参りしましょう。お墓を大事に綺麗に保つ気持ちも忘れずに。
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メモリアルアートの大野屋 終活・仏事アドバイザー 川島敦郎
1956年東京都出身。大学卒業後ブライダル会社に勤務。企画やプランナー育成に携わり、業界資格の試験官も務めたエキスパート。ブライダルの世界から2005年にメモリアルアートの大野屋に入社。葬儀ディレクター、生前相談アドバイザー、セミナー講師としても活躍し、現在「大野屋テレホンセンター」で仏事アドバイザーとして年間5000件以上の相談に答える。
大野屋テレホンセンター著「もう悩まない!葬儀仏事お墓ズバリ!解決アンサー」(二見書房)、監修「小さな葬儀とお墓選び・墓じまい」(自由国民社)
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