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2021.10.12

【デジタル庁】発足で、私たちの生活はどう変わる? キャリアを見直すきっかけにも!

デジタル化の遅れは取り戻せる? 「デジタル庁」の発足により私たちの生活がどう変化していくのか、ギモンを専門家に伺いました。

デジタル化の遅れは取り戻せる!?
ついに本格始動!【デジタル庁】で変わる、私たちの暮らし

コロナ対策はもっとスムーズにできたはず? 行政手続きもオンラインが当たり前に! 海外事例に学んで、デジタル化の遅れは取り戻せる…!?

気になる「デジタル化」について、AIビジネスデザイナー・石角友愛さんに話を伺いました。

AIビジネスデザイナー 石角友愛(いしずみ・ともえ)さん

’10年にハーバードビジネススクールでMBA取得後、Google本社などを経てシリコンバレーで「パロアルトインサイト」を起業、CEOに。日本企業に最新のAI導入支援を行う。著書に『いまこそ知りたいDX戦略』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)など。

デジタル庁創設で、行政のサービスは使いやすくなる?

Oggi編集部(以下Oggi) 約1年前の菅内閣発足直後から、ときおり「デジタル庁」のニュースを見聞きしていましたが… いよいよ発足しますね。役所で行ういろいろな手続きがオンラインで済んだり、ハンコが電子化されたり、デジタル化が進む、という認識でよいんでしょうか?

石角さん(以下敬省略) そういったことも含めて、「国や地方自治体のDXを促進すること」がデジタル庁創設の目的ですね。

Oggi DXは「デジタルトランスフォーメーション」の略、ということでいいですか?

石角 はい。単純に物事をデジタル化するだけではなく「トランスフォーメーション」、つまり変容するさまを指します。デジタル化を促進して、国民の生活や行政職員らの仕事の質を上げること、ですね。

Oggi この1年、コロナ禍の給付金申請をオンラインでしたらかえって時間がかかったり、ワクチン接種の予約データが一元管理されていないために二重予約が生じたり…。「なんだか効率が悪いな」と感じることが多かったので、これを機に何がどう変わるのか気になります。私たちの生活に直接影響があるのは、やっぱりマイナンバーですか?

石角 そうですね。マイナンバーカードの人口に対する交付率は、現在35%弱(’21年7月1日時点)。カードをもつメリットを正直あまり実感できない、というのが実情で、現状では転居の手続きをするにも保育園の申請をするにも、半休をとって区役所に出向いて、書類を提出して長時間待つのが当たり前のようになっていますね。でも今後マイナンバーカードを使ってオンラインで完結する行政手続きが増えれば、だいぶ便利になるのではないでしょうか。

Oggi 仕事を休む必要もなくなりますし、ラクですね。

石角 デジタル庁が目指すのは、さらに各省庁間や地方自治体などの情報管理を一元化すること。今はたとえば年金や健康保険、運転免許証などのデータはそれぞれ別に管理されていますが、それらをマイナンバーで紐づければ、各所から書類を集めて回るような手間がなくなります。

Oggi 欲を言えば、オンライン申請に使う役所のサイトも、もっと使いやすくなるとうれしいんですが…。これまでは欲しい情報がどこに載っているのかわかりづらかったり、見つけたと思ったらもうワンクリック必要だったり、使い勝手が今ひとつで。

石角 それも目標として謳われていて、平井(卓也)デジタル改革担当大臣も「国民目線に立ったUI/UX(ユーザーインターフェイス/ユーザーエクスペリエンス)が大事」と強調しています。だれにとっても見やすくて操作性がよい使いやすいサービスを目指すと。これはIT業界の人間からするとごく当たり前の話で、私がGoogleで働いていたときも、常に「このボタンは要る?」「この配置は変だよね」といった議論をしていましたが、ようやく。7月時点の情報によると、今回、デジタル庁の人材は民間からもかなり採用されているようなので期待したいです。また、一般市民から見えづらい目的としては、IT予算の削減があります。

Oggi デジタル化すると、逆にお金がかかるのでは?

石角 これまでは各省庁がそれぞれいろいろなIT企業に、似たようなシステムの構築や補修を発注していたんです。令和2年度の情報システム関連予算は約8000億円で、その半分以上がメンテナンス費用。それらをデジタル庁に集約することでムダを省き、コストを削減するという狙いです。

菅政権の目玉政策が9月1日いよいよ実現!

©毎日新聞社/アフロ

デジタル庁は何をするの?

●マイナンバー制度の整備・普及
● 国・地方自治体の情報システムの改善・共通化
● 国の情報システム予算を一括計上
● 官民をあげたデジタル人材の育成・確保
● 最新テクノロジーの活用・規制の改革

外国のデジタル事情は? カギは政府への信頼感

Oggi DXが進めば便利だし、税金のムダも減らせていいと思うんですが… 本当に実現します!?

石角 もちろん、デジタル庁ができたからといって急にデジタル化が進むわけではありませんし、国民のデジタルリテラシーが急に高まるわけでもない。成果もすぐには出ないでしょう。でも国のDXとともに民間企業、特に中小企業にもDXが広がることで、労働時間が削減されたりすれば、幸せになる人は増えるのでは? 政府資料には「デジタル時代の官民のインフラを今後5年で一気呵成(かせい)に作り上げる」と書いてありますし、強いリーダーシップで推し進めてほしいと、個人的には思いますね。

Oggi なるほど…。外国ではどうなんでしょう?

石角 長い年月をかけてデジタル化した国もあれば、トップダウンで一気に進めた国もあります。たとえば、住所変更や入学、年金、離婚など生活にかかわるほぼすべての手続きがオンラインで完結するデンマークは、50年以上前から国民ひとりひとりにIDとなる番号を付与してきたという積み重ねがあります。〝電子国家〟として有名なエストニアも同様。ソビエト連邦から独立した’90年代初頭からデジタル化に舵を切り、地道に国民の信頼を得てきました。今では行政手続きの99%をオンライン化したことで、844年分の労働時間が削減できたというデータもあるほどなんです。選挙も国民の約半数が電子投票していて、投票率も上がっているそうです。

Oggi わざわざ投票所に行かなくてもよくなるんですね。

石角 一方で韓国は、’97年のアジア通貨危機で経済状況が劇的に悪化、翌年就任した金 大中(キム デ ジュン)統領のもと、国が生き残るための国家戦略として情報通信技術が取り入れられました。政府の強いイニシアチブでDXが整備された例です。

Oggi 多少強引に思えても、危機的状況を打開できるのなら…。

石角 国民の生活の質が上がれば、最終的には国民の理解も得られると思います。日本でも明確なビジョン設定と、それをわかりやすく伝えるコミュニケーションを大事にしたうえで、確実に結果を出していく実行部隊が求められますね。「マイナンバーはイヤだ」という人や、政府を信頼していない人も一定数いて、なかなかハードルは高いですが。

Oggi コロナ禍やオリンピックの混乱も、DXによって回避できることが多少はあったんじゃないかと思ってしまいました。昨年、台湾では、マスクがどこで買えるか、リアルタイムでわかるアプリを政府がつくったと聞きましたし。

石角 IT担当相のオードリー・タンさんが開発した「マスクマップ」ですね。国民健康保険の情報をマスクの購入情報と紐づけるシステムで買い占めを防ぎ、みんなが等しく買えるようにしたんです。マスクがどの程度行きわたっているかが可視化されただけではなく、数ヶ月後には過剰供給されることも見通して、輸出すらできたとか。今年もワクチン接種の予約システムで注目されていました。台湾は’02〜’03年にSARSが大流行した際にとても苦労した経験から、国民の健康保険を一元管理する組織が確立されていたんです。ちなみに、オードリー・タンさんの著書の中に印象的な言葉があって。「青銀共創」というんですが…。

Oggi どういう意味ですか?

石角 「青=若者」と「銀=お年寄り」がともに解決策をつくっていく、つまり「だれひとり取りこぼさない」という姿勢を表す言葉だそうです。マスクも、当初はクレジットカードや電子マネーから購入情報を吸い上げる設計にしていたそうですが、お年寄りなど現金でしか買い物をしない人やいわゆる〝デジタル弱者〟の存在に気づいて、方法を変えた、と。ワクチン接種予約も、コンビニなどからできるようにしたそうです。日本もデジタル化を進める際に、ハンコを使う人、FAXを使う人、それぞれの理由がある人に寄り添っていくことが大事だと思います。

Oggi ちなみに、日本の民間企業のDXは、進んでいるといえるんですか?

石角 民間企業も国際的に大きな後れをとっています。DXを支える大事な技術としてAIを導入している企業はアメリカでは50%程度ですが、日本では4・2%。

Oggi そんなに圧倒的な差がついているんですか!?

石角 でも、後れをとっているからこそのアドバンテージもあります。デジタル先進国が遠回りした経験のムダや失敗から学んで、賢い戦略を立てられますから。たとえばアメリカでは昨年、大手SNSが独占禁止法に抵触するのではないかと提訴されました。ほかにもプライバシーの問題、社会全体がデジタル化することで生まれる格差など、先例として研究すべき問題が山積しています。

世界各国政府のデジタル化の状況は…?

国連の電子政府ランキング(国連 E-Government Survey 2020より)

1位 デンマーク
2位 韓国
3位 エストニア
4位 フィンランド
5位 フオーストラリア

9位 アメリカ

14位 日本

UNDESA(国連経済社会局)が国連加盟193か国を対象に、昨年7月に発表(発表は隔年)。公共サービスやサイトが使いやすいか、インターネットやブロードバンドの契約者数、学び続けている大人の割合などから導かれ、日本は前回の10位より順位を落とす結果に。韓国は過去10年、3位以内をキープしている。

「デジタル庁の発足が自分のキャリアにどういう意味をもつのか、考えるきっかけにしてください」

Oggi 格差と言えば… 読者の中には、「今の自分の仕事は、将来AIにとって代わられるんじゃないか」という不安を抱いている人や、デジタル分野に苦手意識のある人も少なからずいます。

石角 率直に言って、「今の仕事をずっとし続けたい」という人は、仕事を失う可能性もあると思います。終身雇用の考え方がもともとないアメリカでは、そのようなことが起き始めています。機械的なメールなら、AIに送ってもらえばいいんですから。先日テレビ局の方とお話ししたんですが、アナウンサーの仕事にも一部、AIが導入されているそうです。今やどんな仕事も、DXと無関係ではありません。ちなみに日本人の平均年間給与は436万円ですが(国税庁「令和元年分 民間給与実態統計調査」)、AI人材になれば平均700万~800万円、高い専門性があれば日本でも、新卒で1000万~2000万円もらえるケースも増えてきています。

Oggi でも、いきなりAIのスペシャリストにはなれないですし、文系だったりしたら…?

石角 まずは、本やセミナーなどで勉強しつつ、今いる場所でAIの技術を使ってみるのがいいと思います。たとえば今、マーケティングの仕事をしているなら、マーケティングとAIをかけ合わせて、どう唯一無二の存在になるのかを考えるのがいちばん取り組みやすい方法ですね。そしていちばん大事なのは、自分をアップデートし続けること。昔は大学で4年学んだら、その後40年仕事ができましたが、今は4年に1回は学び直しが必要な時代です。

Oggi 学び方のアドバイスはありますか?

石角 仕事しながらでもオンラインで続けられる〝MOOC〟がおすすめ。できればただYouTubeを眺めるだけではなく、自分の意見を発信したり受講生同士のつながりがあったりするインタラクティブなもの、修了書などが得られて〝やり遂げた〟ことを周囲にも示せる方法がいいと思います。デジタル庁発足も単なるニュースで終わらせずに、自分の将来やキャリアについて考えるチャンスだととらえてみてください。

今月の覚えておきたいキーワード

キーワード1|DX

DXは3つの段階に分けられ、アナログをデジタルに移行することを「デジタイゼーション」、そこで得られたデータを使って業務改善することを「デジタライゼーション」、さらにそれらを取りまとめて組織や社会に革新を起こすことを「デジタルトランスフォーメーション」と呼ぶ。

キーワード2|オードリー・タン

©CTK Photobank/アフロ

1981年、台北生まれ。独学でプログラミングを学び中学校を中退。シリコンバレーで起業後、2016年に史上最年少の35歳で台湾政府に入閣。新型コロナウイルスへのデジタル対応が注目を集め、アメリカの名門・スタンフォード大学の研究で取り上げられるほどの成功例に。

キーワード3|AI 人材

DX促進で大きな役割を果たすAI(人工知能)の知見をもつ人材のこと。世界では現在70万人のAI人材が不足していると言われていて、経産省は2030年には国内でも24.3万人のAI人材の需要があると試算(’19年4月発表)。今後、圧倒的な売り手市場になる見通し。

キーワード4|MOOC

Massive Open Online Courseの略で大規模公開オンライン講座の意。「ムーク」と読む。MOOC先進国のアメリカでは、オンラインプログラムで学位が取得できる大学も。教育と就労を繰り返す「リカレント教育」の重要性も、近年見直されている。

掲載している情報は2021年8月10日現在のものです。

2021年Oggi10月号「Oggi大学」より
イラスト/八重樫王明 構成/酒井亜希子(スタッフ・オン)
再構成/Oggi.jp編集部

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