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具体的であればあるほど、あなたの夢は現実になる
「あすかちゃんは今、どんなことがしたい? 最近何か、新しくやりたいことは見つかった?」
えびすさまは会ったときに良く、私が叶えたいことを尋ねてくれる。
「どうしていつもそんな風に聞いてくれるの?」
「だって、言っておけば叶うものだからね」
「どうして?」
「これはアファメーションという、心理学の技法でね、発した言葉をもう一度自分の耳で聞くことで無意識下に届き、夢が叶いやすくなるんだ。普段、僕たちが自分で思考する際に使っている顕在意識はわずか五パーセント。九十五パーセントは思考の枠を超えたところで稼働している潜在意識だ。
この潜在意識が『無意識』と呼ばれるもので、ここにちゃんと刷り込むことができると、夢や理想は圧倒的に叶いやすくなる。だから、これがしたい、あれがしたい。そういった夢ができたらどんどん公言したほうが良い。口にするごとに、夢はますます叶いやすくなっていくよ」
夢を口に出していたら、その「潜在意識」とやらにも届けられるし、自分自身で認識できるほか、他人からもそういう目で見られるようになって後戻りもしづらくなる。口にすることで得られる効果は幾重にもありそう。
言えば叶う。それだけで叶うなら、それはとてもお手軽な方法のように感じた。
「ただし、ここで注意すべきは、その夢が曖昧な状態では、いくら口にしたところで永遠に叶わない、という点だ。中途半端な人が中途半端な気持ちを口にしても、得られるのは中途半端な結果でしかない」
私の「簡単そう」という思考を見透かすように、えびすさまは言った。
「言葉の定義は人それぞれ違う。『幸せ』『豊か』『お金持ち』という単語も、概念や定義は千差万別だ。したがって『幸せになりたい』とひと口に言っても、どういったものが『自分にとっての幸せ』なのかがわかっていなければ、叶えたくても叶えようがないんだよね。それは神様も、自分自身も」
彼は「さらに、」と言葉を続ける。
「仮に幸運にも叶ったとして。『自分にとっての幸せ』が何か、ということがわからないと、その訪れた『幸せ』を認識できないままスルーしてしまう。せっかく叶っても認識できなければ、叶っていないことと一緒だよね。その状況はとてももったいない」
幸せになりたい、と言って、幸せが訪れても、それが幸せと認識できなければ叶っていないのと一緒……。そんな状況に陥るのは嫌だった。
「自分にとっての『幸せ』は何か。どんな状態でいられて、どんなことができたら幸せと感じるのか。それらをどんどん分解して、事細かに決めていくことが必要だ。
自分の中にしっかりと落とし込むんだよ。その幸せには、お金を必要とするものも、そうでないものもあるだろう。それで良い。幸せな気持ちに優劣はないのだからね」
「幸せに優劣はない、って素敵な表現! ふっかふかのお布団で寝たり挽きたての美味しいコーヒーをいただいたり、確かにお金がかからない幸せっていうのも、思っている以上にたくさんあるのかも」
夢を叶えるにはお金という概念を取り払うことが大切
えびすさまは「あすかちゃんの幸せセンサーは敏感だからね」と微笑み、そして幾分寂しそうにこう続けた。
「一方で、幸せに優劣がないと言えど、勝手な線引きをしてしまう人はとても多い。こんなに望んではいけない、望んだところで叶うはずもない、と『自分の幸せ』の上限を勝手に決めてしまう。
『やりたいことは何ですか?』
『叶えたい夢はどんなことですか?』
と聞いても出てこない。わからない、と悩み、止まってしまうんだ。大人になってから改めて『夢』というものを考えると、お金がネックになった瞬間、思考が停止してしまうことがある。
真面目な人ほどこの傾向は顕著でね。子どもの頃はあれだけ自由に、のびのびと思い描けていたにもかかわらず。社会というものは、時として残酷なものだ」
大人になるということは、現実世界でお金を使って日々生きるということ。夢を描くにもお金を意識するのは、仕方のないことのように思えた。
「枠を取り除く方法はないの?」
「一旦お金という概念を取り払ってしまうことだね。例えば『十億円あったら何がしたいか?』と考えてみる」
「十億円!? 何でもできちゃいそう!」
私の笑顔に「その感覚がミソさ」とにっこり笑い、
「十億円は結構な額だからね。それで叶えたいこと、叶えられることを、思いつくままに次々と書き出していくんだ。ビバリーヒルズの一等地にハリウッドスター並みの豪邸を建てるにはもちろん足りないが、それでも多くの人にとって、大抵のことは叶えられる金額だろう。あ、やりたいことは他人の評価から考えるのではなく、自分自身の心に従って書いていくと良いね」
見栄や周りにどう思われるかではなく、自分自身がどうしたいか。きっと、ここを意識しないと変な方向に行ってしまうということなのだろう。えびすさまはこの十億円ワークのやり方をさらに詳しく教えてくれる。
「ひと通り書き出したら、今度はそこに値段を当てはめていく。この際にポイントとなるのは、通常想定される金額のほか、ミニマムの金額を同時に振ってみることだ。
例えばポルシェに乗りたいとして、それは生産台数限定のレアモデルが良いのか、新車で買うのか、中古でも良いのか。それだけでも数千万円は変わってくるよね。仮に所有したいのではなく本当に『乗りたい』だけだったとしたら、今はシェアリングエコノミーの時代が到来しているのだから、数万円台で個人でも簡単に借りることができる。
試乗や、僕のように持っている人に乗せてもらう、という手段を取るなら無料だ。ポルシェに乗るという夢が無料で叶うんだよ? 手が届かないと思い込んでいるだけで、実際には今すぐにだって叶えられることはたくさんある」
ポルシェが無料で叶うなんて、私にとっては眼から鱗だった。そうか、今まで気が付かなかっただけで、お金をかけずに夢を叶える方法もいっぱい存在するんだ。
「こういった作業を繰り返していくと、自分が欲しいもの、そして必要な金額が明確になってくる。さっきのポルシェのように『お金がなくても叶うこと』は意外と多いから、最初の段階では恐らく、十億円以上を必要とする人はほとんどいない。
まずはそこで弾き出した金額、それを稼ぐところから始めよう、と設定すると無理がないよね。ここまで決めた状態で、宣言しながら進めば……、夢は本当に、あっという間にスルスルと叶っていく」
「ねぇ、もし、もしだよ? 全部叶っちゃったらどうしたら良い?」
私はワクワクを抑えきれずに聞いてみた。
「全部叶ったらどうするか。良い質問だね。心配しなくても大丈夫だ。お金を得た後に見られる景色から、必ず新しい夢が見つかるようになっている。だって夢は常に、更新し続けていくものだからね」
今回の学び
・夢は口に出すことで叶いやすくなる
・枠を外す魔法は「十億円あったら何がしたい?」
・お金がなくても叶う夢もたくさんある
TOP画像/(c)Shutterstock.com
職業お金持ち 冨塚あすか
個人投資家。1988年生まれ、仙台出身。慶應義塾大学卒。「お金を理由に何かを諦める、という事態とは生涯無縁でいよう」と決め、20歳のときに10万円から資産運用を始める。紆余曲折ありながらも持ち前の分析力と嗅覚、人当たりや運の良さで資産を順調に拡大。会社員を辞めてからは2年ほど、専業投資家として資産運用のみで生活をする。現在は、オンラインサロンを通じて、投資の仕方や生き方、女性がお金持ちになるために必要な「お金の帝王学」について指南している。趣味は旅行と食べ歩き、お金持ちの話を聞くこと。
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