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一億円は通過点。お金を味方につけて、理想の人生を歩む方法
一億円。
それは、投資を始める前の私にとっては想像もつかないほどの大金だった。どうやったら稼げるかもわからない。億万長者は自分とは違う生き物で、何か特別なことをして稼いでいるのだとばかり思っていた。…… でも、今は違う。
一億円。
それは、誰もが当たり前に手にすることができるお金。得るのに才能は一切関係なく、秘訣もなく、ただシンプルに「やるか、やらないか」。やらない人が圧倒的に多いから、ただ行動さえすれば結果が伴う簡単なゲーム。
「一億円を手にするなら、あすかちゃんなら何をする?」
「いくらスタートで、何年ぐらいで?」
「手持ち百万円で、期間は十年にしようか」
「そしたらビジネスと投資の両輪かなぁ。どちらかでいくよりも、両方走らせたほうが遥かに効率良いもん。それに投資だけやってたところで暇だしね。…… というか、そもそも十年はかからないでしょ。百万円から一億円なら、五年もあれば十分すぎるぐらいじゃない?」
えびすさまとは、いつの間にかそんな会話をする仲になった。私がちゃんとお金を手にし出したからだ。何をしても稼げる、とわかって以降、私の元へは行動すればするほどお金が入るようになっていた。
「お金を得る方法に、唯一の正解というものは存在しない。強いて言えば、その行動を取って結果的にお金が増えたのであれば、それはみんな正解だ。ビジネスでも良い。投資でも良い。『愚か者の税金』と名高い宝くじでさえも、それでお金を得られたなら、その人生においては正解となる」
まぁ、あんなギャンブルよりは真っ当に投資をしたほうが、高速かつ高確率でお金を増やせるけどね、と、彼は悪戯っ子のように舌を出す。
「稼ぐ方法なんて何でも良い。稼ぎ方を限定しないというのは、お金を得るにあたってひとつ、重要なポイントだね。稼ぎ方の向き不向き、得手不得手は人それぞれだから。どうやってお金を稼ぐのかは、自分のライフスタイルや性格に合わせて自由に決めていって良いんだ」
早起きが苦手で煩雑な事務作業が嫌い。なるべく手間をかけたくない、という面倒くさがりの私が最終的に選んだのは、中長期の金融投資だった。のらりくらり、一ヶ月に一度口座をチェックするだけの緩い運用ながら、置き場所の選定が功を奏し、資産は順調に増えていた。
えびすさまが具体的な手法を教えてくれたことはない。言及するのはせいぜい投資商品にどんなものがあるか、世の中にどんな稼ぎ方のジャンルがあるかといったところまでで、「何を買え」「何を売れ」と指示をされたことや、耳寄りな投資情報を彼の口から聞くことは一切なかった。
一度だけ、好奇心を抑えきれずに聞いてみたことがある。
「えびすさまは具体的に何をして、どう稼いでいるの?」
彼は私をまっすぐに見つめ、「それを聞いて何になるの?」と返してきた。そして続けて、
「あすかちゃんは、それを知ったら僕と同じように稼げると思う? 考えてみればわかるだろう、そんなことはあり得ないよね。なぜなら、僕と君とでは根幹となる部分、つまり『使い手側』のマインド面の鍛えられ方が全く違うのだから。
こうして方法論という切り口から入ってくる人は、大抵そのままお金に飲み込まれていってしまう。今までずっと無視してきた『お金』に急に掌を返し、そしてドロドロに執着していく。そんなことをしていては嫌われる一方だ。
お金の扱い方は、金持ちでいる上では非常に大切なこと。まずはきちんと向き合うところから始めないと、あっという間に溺れてしまうよ」
稼ぎ方も投資手法も無限にある。でも、どんな方法を知ったところで、使い手がポンコツだったら、そういった道具は全て錆びたガラクタでしかないのだ。
「本当にお金を稼ぐ気があるのなら、自分自身を整えることが、何よりもまず優先すべきこと。多くの人が投資で成功できないのは、そこを飛ばしてすぐに小手先のテクニックばかりに走るからなんだよね。何をしてもうまくいかない『手法ジプシー』の完成だ。
急いては事を為損じる。お金を稼ぐのは確かに簡単なことだが、土台がぐらついた状態では絶対に成し遂げることはできない」
お金を活かすも殺すも全て自分次第。鍵となるのは自身の在り方。自分が整っていない状態でお金持ちになることは不可能。私は自らの幼稚さと浅はかさを反省し、それ以来、彼に具体的な手法の話を聞くことはなかった。
自分自身を理解し、正直に行動することが大切
「金持ちというのはね、とても楽しく心地の良い生き方だ。ただ、常に自分との対話が必要とされる。本当は何を感じているのか。本当はどうしたいか。そういった自分の内面に、とことん正直でいること。何が好きで、何が嫌いか。喜怒哀楽、快・不快、在り方の好み。そういった自分の思考と感情を、ひとつずつ紐解いていく。
それは時として、苦しい作業となることもあるだろう。でも『金持ちになる』と決めたなら、決して諦めないことだ。あすかちゃんはこれから十億円を目指すことになる。それを、もう良いかな、などと途中で投げ出すことはあってはならない。
金持ち界へワープできる人と、貧しいままで生涯を終える人との違い。金持ちになれるのは、気づき、行動し続けられる人だけだ」
えびすさまがお金持ちなのは、彼が自分に正直に、真っ直ぐに生きてきた証なのだと思った。
「お金を稼ぐ目的は、理想の人生を叶えるためだね。そんな理想の人生を歩むには、まずは自分にとっての『理想』をきちんと知っておく必要がある。
幸せの定義。自分が願う働き方、稼ぎ方、そして生き方。事細かに記しておくと、彼らお金にとってはそれがガイドマップとなる。これはなるべく丁寧に書くと良い。
気を付けることとしては、十億円ワークと一緒だね。ここに『他者の理想』を入れ込むと、自分の向かうべきところからベクトルがずれてしまい、途端に現実がちぐはぐになってくる。
理想というのは、あくまでも『自分にとって』の理想だ。自分がいて、そして家族やパートナー、周りの人、という順番を遵守すること。まずは自分にフォーカスして、満たしてあげないと意味がない。
貧しい状態の人から施しを受けても心配になるだけだし、何より重たくて怖いからね。豊かな状態で分け与えるから、みんなが物質的にも精神的にも豊かになれるんだ。
金持ちの世界に『自己犠牲』は一切必要ない。我慢なんてしなくて良い。ただただ、自分の心に素直に正直に、理想の人生を追い求めて良い。これから『お金持ち』として生きるにあたっては、このことを絶対に忘れてはいけない」
そうして彼は穏やかな笑みを浮かべ「大丈夫だよ」と私に告げた。
「自分が本当に望む生き方をきちんと認識したとき、現実は勢い良く動き始める。お金はとても頑張り屋だからね。『夢を叶える力になりたい』、彼らがそう思うと、信じられないほどの瞬発力を見せてくれるんだ。
あすかちゃんがすべきことと言えば、その加速にくれぐれもふるい落とされないこと。もしも途中で辛くなったら、お金持ちになった『先』の自分がどんな言葉をかけてくるかを思い浮かべてみて。
自分を信じ抜く限り、お金持ちである『未来のあすか』は、『今のあすか』を全力で応援してくれるから」
未来の私。それはきっと、誰より心強い、一番の味方。この先どんな幸せな未来が待っているんだろう。私は私に、どんな世界を見せてあげられるんだろう。どんな素敵な体験をプレゼントしてあげられるだろう。未来の私と会話をするような感覚を覚えたら、ワクワクが止まらなくなった。
「未来の私」は「今の私」のために。そして「今の私」は「未来の私」のために。ただただ全力で、お金持ち街道をアクセル全開、一直線。豊かさが確約されている状態で進めるんだから、こんなに楽しいことってない。
私は他の誰のためでもない、まずは「私自身」のためにお金持ちになることを、改めて強く決意した。見ていてね、「未来の私」。こうなったら想定の十倍速ぐらいでその未来、叶えてあげるんだから。どうぞくれぐれも、覚悟していてよね。
……そして、ふと思った。もしかして人って、このために生まれてくるのかな。きっとそれに気が付き、自分で自分を満たし続けられる人が、幸せなお金持ちになっていくのでしょう。
ねぇ、聞こえる?
私はあなたを絶対に、幸せにします。
だから一緒に思いっきり、とびっきり幸せな人生を歩もうね。
今回の学び
・稼ぐ方法は何でも良い
・自分が整っていない状態でお金持ちになることは不可能
・自分の心に正直に、理想の人生を追い求めよう
TOP画像/(c)Shutterstock.com
職業お金持ち 冨塚あすか
個人投資家。1988年生まれ、仙台出身。慶應義塾大学卒。「お金を理由に何かを諦める、という事態とは生涯無縁でいよう」と決め、20歳のときに10万円から資産運用を始める。紆余曲折ありながらも持ち前の分析力と嗅覚、人当たりや運の良さで資産を順調に拡大。会社員を辞めてからは2年ほど、専業投資家として資産運用のみで生活をする。現在は、オンラインサロンを通じて、投資の仕方や生き方、女性がお金持ちになるために必要な「お金の帝王学」について指南している。趣味は旅行と食べ歩き、お金持ちの話を聞くこと。
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