【目次】
・「お役御免」は良い意味で使われるの?「召放」との関係も
・「お役御免」の使い方を例文でチェック
・「お役御免」の類語にはどのようなものがある?
・最後に
「お役御免」は良い意味で使われるの?「召放」との関係も
「お役御免」は、<おやくごめん>と読みます。「お役」は「役目や役割」、「御免」は「それらの役を解く」という意味があることから、「お役御免」は「役目や役割をやめさせられること」「仕事をしなくてもよくなること」という意味です。
また「お役御免」は、人にも物にも使うことが出来ます。しかし、注意しなければならないのは、他人に対して「お役御免」という言葉を使う場合、失礼に当たる事があるということです。
江戸時代の「召放(めしはなち)」と同義語
「召放」という言葉をご存じですか? 「召放」とは、武士のいた江戸時代に使われていた言葉です。武士の罪に対する罰として、私たちがよくイメージするのは切腹かと思いますが、「召放」も刑罰の一種になります。「召放」とは、武士に対する刑罰の一つで、幕府から解雇されるという罰でした。
切腹より軽い罰とはいえ、「召放」は子孫にとって辛い罰になります。切腹は一代で済む罰ですが、「召放」は子孫にまで影響が出てしまいます。なぜなら、幕府から解雇されれば、子孫は継ぐ家を失ってしまうからです。
「お役御免」の使い方を例文でチェック
「お役御免」は、日常会話でなかなか使われる機会がないかもしれません。慣用句的な表現といえます。「お役御免」の使い方を例文を用いて説明するので、一緒に確認していきましょう。
1:「今までの会社にとって彼は非常に有益な人材であったが、会社の方針を一新するにあたって、お役御免にすることを視野に入れたほうが良いのではないだろうか」
これは、ビジネスシーンでの使い方です。もともとは役に立っていた人物が、時代の変化や方針の変化によって、能力不足と周囲から考えられた時に使われます。現在の「お役御免」のポピュラーな使い方として、免職やリストラを指すことが多いです。
2:「お気に入りの器だったけれど、使い込んで欠けてしまったので、そろそろお役御免にしても良いだろう」
もう一つの「お役御免」の意味として、「不用品の処分」という意味が挙げられます。役目を全うして処分するときは、今までお世話になったという愛着を込めて、「お役御免」と感謝を述べるのです。
3:「長らく彼女の補佐役を務めてきたが、もう彼女は一人でやっていけると判断したため、お役御免を願い出た」
自分から自分のお役御免を願い出る場合の使い方です。相手や物だけでなく、自分に対しても使うことが出来ます。
「お役御免」の類語にはどのようなものがある?
「お役御免」は、「役割や仕事などをやめさせられる」や「不要になったものを処分する」などの意味がありますが、類語にはどのようなものがあるでしょうか。
1:お払い箱
「お払い箱」は、もともと「御祓箱」と呼ばれる小箱です。中世から近世にかけて、「御師(おし)」と呼ばれる人物が、毎年諸国の信者に配って歩いた、厄除けの大麻を納めた小箱を指していました。
そして、毎年の暮れに、その小箱の中身の古いものを捨てて、新しいものに取り替えたところから、「お祓」と「お払い」をかけて、「お払い箱」という言葉が生まれたのです。
現在では「お役御免」と同じように、「勤めを辞めさせられること」や「不用品を廃棄すること」という意味で使われます。
2:引導を渡す
「引導」とは、<いんどう>と読み、もともと仏教の用語です。「衆生を導いて、悟りの道に入らせる」という意味があります。また、「葬儀の際に、導師が棺の前に立ち、死者が悟りを得られるように法語を唱えること」という意味もあります。段々と大きな意味で捉えられるようになり、「先に立って導く」ことを指して、「引導」と言うようになりました。
そこから「引導を渡す」というのは、「今までしてきた自分の役割を退いて、別の人間にその役割を譲渡する」という意味で使われるようになったのです。
3:首
「首」は一番馴染みのある表現なのではないでしょうか。「首にする」なんて慣用句を耳にすることがあると思います。ですが、その語源については今まであまり触れられてきませんでした。
実は「首を切る」の語源は、日本の古典芸能の一つである、人形浄瑠璃だと言われています。人形浄瑠璃とは、簡単に言うと人形劇です。使われる人形は分解することができ、演目ごとに頭を取り替えて使い回します。公演が終わり、役目を終えた頭は、首ごと胴体から外されてしまうのです。
この様子を人間になぞらえて、役目を終える人のことを、「首を切る」と表現するようになりました。
最後に
今回は、「お役御免」の成り立ちや意味、類語について詳しく見ていきました。少し古めかしい言葉だな、という印象を受けた方もいらっしゃるのではないでしょうか。
実際にルーツを辿ってみると、やはり昔の習慣や宗教、文化から生まれた言葉が、時代を経て使い方を変化させて現代まで残ったことが分かりました。普段何気なく使っている言葉のルーツを辿ってみたら、面白い発見があるかもしれませんね。
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