お金持ちになるにはまず、お金持ちになると決めること
「全ては『決める』ことから始まるんだよ。現実は、決めたところから動いていくものだから」
えびすさまは口癖のように言う。
「どんな学校に行きたい? どんな会社に入りたい? どんな人と付き合いたい? 今までだってずっと決めてきただろう? それらと一緒なんだ。どんな生き方がしたい? お金のある生活とない生活とでは、どちらを選ぶ? 金持ちになりたいなら、まずは『金持ちになる』と決めること。それを決めなければ、何も始まらない」
言っていることはわかる。意識の方向性を定めなければ、進むことはできないから。
「決めるって言ったって、未来のことはわからないし……」
「何を躊躇う必要があるの? わかるか、わからないかなんてどちらでも良いことだ。わからないと決められない、なんて無駄なプライドは捨ててしまいなさい。できるってわかっていたらやる、わからなかったらやらない? 失敗を怖がり、恥ずかしがるがために自分のやりたいことを我慢するって、本末転倒だと思うけどね?」
私のいつものパターンは、「勝てる」と思ってから動くことだった。今回もどこかに勝機を見出したくてまだ様子を伺っている私に、えびすさまは新しい視点を授けてきた。
「確かに、成功するかどうかはわからない。でも、失敗するかどうかだってわからないんだよ。言うなれば単なる二択の世界だ。コイントスみたいなもの。どちらに転ぶかわからないなら、僕だったら『うまくいく』ほうに賭けるけどね。
せっかくなら信じてあげたいじゃない。最初から失敗するだろうな、って心持ちで挑戦するのはつまらないし、第一自分を見くびりすぎでしょう。自分自身との対話において、謙遜や忖度は不要だよ。僕も君も、そんなところで立ち止まっているべき人間じゃない」
彼はそうピシャリと言い切り、私をじっと見つめてくる。ついついうまくいくのはひと握りだという思考に戻りがちだけど、確かに二択のコイントスだと思えば、確率は五分五分。そこに持ち前の運要素を加えたら、挑戦も幾分軽やかにできるような気がした。
決めることを迷ったり言い訳をするのは時間の無駄
「そもそもね、世の中にはこんなに金持ちがいるのに、自分にできると思わないほうがおかしいんだよ。やったことのないことは『知らない』『わからない』が当たり前。誰だって初めはそうだ。
ただ、知ってしまえば、わかってしまえば難しく考えずとも難なくできるようになる。前も言ったことがあるよね? 金持ちになるって、自転車や逆上がり、九九ができるようになることと一緒なんだよ」
えびすさまは私の肩に手を置き、
「自分のことぐらい、自分が一番に信じてあげよう?」
と優しく言った。
「少しぐらい怖くたって、勇気が必要だって、一歩踏み出してみる。そのハードルを乗り越えられた人だけが得られるのが、自由で豊かな世界で生きる権利だ。それは神様からのご褒美。
でもその特権を手にできるのは『決めて』実際に動いた人だけ。忙しくても、難しそうでも、わからなくても。まずは『やる!』って決めて飛び込んでみる。そうしないと、チャンスを得ることすらできないのだからね」
「決めて、もしもそのゴールにたどり着けなかったら? どうしたら良い?」
「あぁ、ここを勘違いする人はとても多いね。この『決める』という行為は、一度決めたら絶対に変えちゃダメ、という類のものではないんだ。到達速度もゴールの場所も、何度でも自由に設定できる。
どうなるかはそれこそ『わからない』んだから、気楽に挑戦してみたら良いんだよ。僕を含めて、未来が百パーセントわかる人なんていない。だからどうぞ、軽やかに。自信を持って」
段々と、えびすさまの言葉の意味がわかってきた。わからないけど決める、というよりは、わからない「から」決めるんだ。決めちゃえば言い訳もしなくなるし、動き出せるから。
「自分にもできるかどうかを不安に思う人はたくさんいるね。投資を始める前ならなおさらだ。ただ、もし決めていたなら、こういった発言も出てこないんだよ。これはどっちつかずで揺れ動いている段階、決めきれていない段階での思考だからね。できるかどうかなんて、する前は正直関係ない。
できるかどうかはやってみてからわかること。やってみてできなかったら、そのときに初めて対策を考えれば良い。それからでも遅くはないだろう?
やりもしないのにそういった問いを口にするのは時間の無駄だし、優柔不断だという証明にもなる。相手の時間よりも自分の保身を優先するって、そもそも失礼なことだがね。できるかどうかじゃない。やるか、やらないか。ただそれだけだ」
お金持ちになると決めることで、やっとスタート地点に立てる
「決めたら本当に手に入る?」
「うーん、その考え方は危険だね。得られるものが明確になっていないと行動できない、というのはあまりに人任せな考え方だ。本当に手に入れられるかは自分次第だし、もし君が言葉通り決める『だけ』で何もしないのであれば、当然望みが叶うこともないだろう」
私はえびすさまの言葉を思い返していた。確かに、えびすさまは「決めたら叶う」なんて言っていない。「決める」ことで、やっとスタート地点に立てるんだよ、ということを繰り返し伝えてくれていたんだ。
「金持ちになって何を得るか、もまた、自分で決めるものだね。一人ひとり得たいものは違うから。お金を得て何をしたいか、金持ちになってどんなことを叶えたいか。それが丸ごと同じ人は、この世に一人も存在しない。
・金持ちになると決める
・金持ちになって『何を得るか』を決める
金持ちへの道のりは、ただひたすらに『決めて・行動する』の繰り返しだよ」
決めて、行動する。一見シンプルなようで、これを続けるというのはとても根気が必要だと感じた。例えばどこかで横槍が入ってきたら、私は簡単に止まってしまいそう。そんなことを口にしたら、「何を今さら」と言わんばかりにえびすさまはこう返してきた。
「そもそもこの日本で、金持ちを目指す時点で少々変わっている自覚はあると思うんだけどね? 人間は幸い、思っているほど他人に興味がない。もっと言えば、金持ちはそれに輪をかけて、他人に興味を持たない。いつまでも同じところでぐるぐると回っている人に割く暇などないからね」
振り返ってみると、えびすさまには「結論だけ」を求められることも良くあった。やる、やらない。行く、行かない。日常の些細なことから人生に関わる重要な局面まで、成功者ほど、簡潔に結果を伝えることを好む傾向があるのかもしれない。
「どのみちさして興味を持たれていないのであれば、自由にやりたいことをやったらいいじゃない? 誰に何を遠慮することもない。お金は増やそうと思わなければ増えることはないんだよ。お金持ちとして生きようとしない人が『お金持ち』になることはあり得ない。あすかちゃんが決めない限り、あすかちゃんの人生は永遠に動かないんだからね」
お金持ちになるには、お金持ちになると決めること。私をお金持ちにするのは、他の誰でもない。「私自身」なんだ。
今回の学び
・全ては「決める」ことから始まる
・お金持ちになるには、お金持ちになると決めること
・ただし、決めるだけで行動しなければお金持ちになることはできない
TOP画像/(c)Shutterstock.com
職業お金持ち 冨塚あすか
個人投資家。1988年生まれ、仙台出身。慶應義塾大学卒。「お金を理由に何かを諦める、という事態とは生涯無縁でいよう」と決め、20歳のときに10万円から資産運用を始める。紆余曲折ありながらも持ち前の分析力と嗅覚、人当たりや運の良さで資産を順調に拡大。会社員を辞めてからは2年ほど、専業投資家として資産運用のみで生活をする。現在は、オンラインサロンを通じて、投資の仕方や生き方、女性がお金持ちになるために必要な「お金の帝王学」について指南している。趣味は旅行と食べ歩き、お金持ちの話を聞くこと。
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