「お金ありき」の人生にしてはいけない
「あすかちゃんは、お金があれば幸せだと思う?」
予期せぬ質問に困惑する。いつものえびすさまの主張と真っ向から対立するような問いだったからだ。
「どうしたの? 急に。えびすさまいつも、お金があれば幸せというわけじゃないよ、お金はあくまでも選択肢を増やす手段だよ、って私に教えてくれるじゃない。お金がなくても叶えられる幸せはいくらでもあるっていうのも、こないだの十億円ワークで改めてわかったし」
あぁ、わかってくれていたんだねぇ。と、えびすさまは嬉しそうにの笑みを浮かべる。
「今日はその続きの話をしよう。お金があれば幸せか、というところから、もう少し奥に踏み込んでいく時期が来たね」
「続き?」
「そう。お金がなくても叶えられる幸せはいくらでもある。僕たちは経済状況にかかわらず、今この瞬間から、すぐに『幸せ』になれる。お金を『目的』とする人生は無意味だと言わざるを得ない。その上で、『お金があれば幸せ』というわけではないけれど、ただ、あすかちゃんが言ってくれた通り、お金があればできることは確かに増えるね。
資本主義社会において、人生の選択肢を増やす『手段』として最も有効なのがお金だから、僕はお金があって良かったと思うし、お金があるって便利だな、と日々ありがたく思っている。
さらに、世界全体の経済的混乱を経て、選択肢を増やすのみならず『防御』としての手段。お金のない不幸せを回避できることもまた、お金の重要な役割だと感じるんだ。自分と大切な人を守る手段。ここでもやっぱりお金は大活躍をしてくれる」
経済状況にかかわらず、今この瞬間からすぐに「幸せ」になれる。これは「幸せに優劣はない」という教えと通ずるように思えた。その上で選択肢を増やし、さらに減らさないということを担ってくれる「お金」の存在。こうしてお金の特徴を知るごとに、感謝の気持ちがどんどん込み上げてくる。
他人を笑顔にするお金の使い方が自分の幸せにつながる
「幸せになるお金の使い方、を覚えているかい?」
「自分のためよりも他人のためにお金を使ったほうが幸福度は高まる、ってやつよね?」
「そう。
お金があるから
↓
他人を喜ばせる機会が増えて
↓
自分のしたことで他人の笑顔や幸せを感じられる機会が増えて
↓
結果として自分も幸せになる
お金をアイテムとして正しく使うと、こういった循環が巻き起こるね。この循環は自分がお金を使うほどに大きくなり、ますますの豊かさを享受できるという嬉しいスパイラルを生んでくれる」
自分がお金を使うほどに、幸せと豊かさの循環が大きくなる。なんて素敵な世界なんだろう。輪が大きくなっていく様子を想像してニンマリと幸せに浸る私を見て、えびすさまは次の問いを投げかける。
「じゃあ反対に、不幸せになるお金の使い方はわかるかい?」
「うーん、自分のためだけにお金を使うこと?」
「惜しい。そうだな…… 使い方、というか扱い方と言ったほうが正しいかな」
「不幸せになる扱い方。本当は使いたくないのに使ってしまうとか? 感謝の気持ちが持てないとか?」
良い線だね、と彼は頷き、解説を始めてくれた。
「不幸せになる扱い方は、貯め込んでしまうことだ。『お金ありき』の人生を歩んでいる人たちだね。そうなるとどうしても諭吉コレクターに変貌してしまう。お金を収集することに熱心に、命をかけて取り組んでしまうんだ。
集まってくると、今度はそのお金がなくなるのを嫌がり、内へ内へともっていくようになる。お金を眺めているときが幸せ。お金が手元にあるのが安心。それが本当に自分にとっての幸せだと言うのであればそれは構わないんだが、そうして貯め込む行為では、循環が一切起こらない。
循環が起こらないとしたら、幸せを感じられるのは自分ひとりということになる。どれだけお金を集めたとしても、豊かに繁栄、拡大していくことはない。ずっとひとり、部屋の隅っこで縮こまっているだけ。そんな未来は幸せとは言えないよね?」
想像してみたら背筋が寒くなり、鳥肌が立った。さっきの循環の輪をイメージしたときとは大違い。すごく寂しくて、暗い情景が見えた。
「お金ありき、の人生に足を踏み入れやすいのは、貯金や節約が好きな人だね。日本人にも多い属性だ。『お金持ちは悪』というイメージを持つ人が多いのは、恐らくこういった金銭への執着が強いままお金持ちになってしまった人たちの印象が強いからだろう。
前に、節約は貧乏の元だと伝えたことがあったろう? これは、節約が心の潤いを奪っていくからだ。通帳の数字が増えていくのは確かに楽しいかもしれない。でも、それによって自分の生活が、心が、周りが豊かになっていくわけではない。お金は、ある『だけ』では意味がないんだよ」
えびすさまは続ける。
「好きなほう、ではなく、金銭的に得なほうを選ぶ。これが、貯金好き、節約好きの人の基本的な思考回路だ。コストパフォーマンスという言葉をことさら好む人が多いがね、コストパフォーマンスが指し示す意味というのは、費用対『効果』。この『効果』を、金銭的にどれだけ浮かすことができたか、のみに限定するのは、貧しい人の典型と言わざるを得ない」
「好き」を叶えていくことが豊かになる鍵
「目に入る以外の効果もあるの?」
もちろんだよ、と彼は答えた。
「お金を使って得られる効果は何も、目に入るものだけに留まらない。あすかちゃんも実感してきたでしょう? モノはもちろん、サービス、雰囲気、心地良さ、満足感、そして感情。限定しないほうが健全だし、何より豊かになる。
巡り巡るものだから、使ったお金がすぐ次の機会に、ダイレクトに金銭として返ってくることはそう多くはないかもしれない。それでも、再びお金という形で自分の目の前に現れたとき、それは節約や貯金をするために『浮かせた』お金とは比べものにならないくらいに大きくなっているんだ」
コストパフォーマンスというと、つい、わかりやすい対価を求めてしまいそうになるけれど、考えてみたらえびすさまの言う通り、得られる効果はたくさんあった。お金は浮かせるよりも気持ちよく使うこと。色々経験してきたからか、以前に節約は貧乏の元、と習ったときよりも、もっと附に落ちる感じがした。
「お金は切り詰めるほどに貧乏になる。それは、目先のことしか考えていないからだ。視野が狭すぎる。目先のこと、自分のことしか考えていない人に、誰が集まると思う? 決して、日々贅沢三昧しろと言っているわけじゃない。貯金だって多少あれば便利だし、節約も才能のひとつではある。
ただ、何かを選ぶときには『金銭的にどうか?』という判断基準を一度封印し、自分の『好き』を叶えていくことを大事にしてほしい。そういったお金の使い方を試し続けていれば、どんどん豊かになっていけるからね」
自分の「好き」を叶えることで、自分も周りも豊かになる。それは三方どころか全方位良しという、理想的な形だった。
「金持ちになる、というのは、がむしゃらにお金を追い求めることとは大きく異なる。もっと意義のある、高尚なことなんだ。あすかちゃんが金持ちになることで、自分自身も、そしてあすかちゃんの家族や周りの大切な人も、幸せを感じられる機会がどんどん増えていくんだからね。
お金を得た『先』に得られる人生を、ただひたすらに、真剣に生きる。自分を満たし、他者を満たし、その範囲をどんどん拡大していく。ひと度自らきっかけを放てば、それはまるで波紋のようにどこまでも大きくなっていく。
その最初の一歩が、自分自身が『お金持ち』になること。世界がどこまでも愛と幸せに満ちていく様は、とてもあたたかく、心地の良いものだよ」
今回の学び
・お金ありきの人生は寂しい
・自分の「好き」を叶えることで、自分も周りも豊かになる
・豊かさ、幸せは波紋状に広がっていくもの
TOP画像/(c)Shutterstock.com
職業お金持ち 冨塚あすか
個人投資家。1988年生まれ、仙台出身。慶應義塾大学卒。「お金を理由に何かを諦める、という事態とは生涯無縁でいよう」と決め、20歳のときに10万円から資産運用を始める。紆余曲折ありながらも持ち前の分析力と嗅覚、人当たりや運の良さで資産を順調に拡大。会社員を辞めてからは2年ほど、専業投資家として資産運用のみで生活をする。現在は、オンラインサロンを通じて、投資の仕方や生き方、女性がお金持ちになるために必要な「お金の帝王学」について指南している。趣味は旅行と食べ歩き、お金持ちの話を聞くこと。
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