いくらお金を稼いでも、時間がなければ意味がない
前回、時間とお金を同時に手に入れるために「ロールモデルとなるであろう人」を探すことにした私は、大学近くで駄菓子屋を営むおばあちゃんに出会い、そのおばあちゃんが街一帯を仕切る大地主だったということを知った。
「そーんなにびっくりすることかいねぇ?」
目をまん丸にして、口をポカンと開け。そのときの私はあまりにも間抜けな表情をしていたのだろう。おばあちゃんは身体を揺すり、可笑しそうにケラケラと笑いながら、
「あすかちゃん? 世の中っていうのはねぇ、二種類の人間に分類されるのね。持つ者と持たざる者。働かなきゃいけないのは持たざる者、の人たちね。資産さえ持っていれば働く必要なんてなーんにもないのよ。
だってその資産が、勝手にお金を連れてきてくれるんだから。人生はひたすら、好きなことだけしてたらいいの。働かないとお金が得られない、だなんて、お国がつくった幻想よ~」
幻想。…… そんな幻想を、今まで私は信じていたの? 鬱になったり過労死をしたりしてしまう人たちは、本当はそんな辛い思いをしなくてもいいってこと?
「なんで多くの人はそういう稼ぎ方ができないの?」
「知らないから、だろうねぇ。あすかちゃんみたいな感じよ。例えば地主、不動産業が儲かるという知識が頭の隅っこにあっても、自分がそれでお金を得るのは不可能だって端から決めつけてしまってる。できないと思っているから、そこからわざわざやる方法なんて、考えることもないよねぇ」
少し落胆したような、なんとも言えない表情で「もったいないことだけど」と付け足すおばあちゃま。
「んー、でも私も自分がそうできる! っては正直思えないかなぁ。おばあちゃんはタイミングが良かったからそう言えるんじゃない? しばらく戦争はなさそうだし、そんな千載一遇のチャンスなんて、私が生きてる間にあるかなぁ?」
そりゃあね、その適切なタイミングできちんとベットできたのは、おばあちゃんの手腕だと思うけど。
「稼ぎ方は時代によって変わるからねぇ。これから人口が減る日本だったらあえて不動産を選ばなくてもいいだろうし、私も今からだったら別のことをするかもしれないねぇ。ただ、ひとつ言えるのは、モノが変わったとしても『働かずにお金を得る方法』自体はいつの時代も存在するってことかしらね~」
不動産じゃなくてもいい。働かずにお金を得る方法はいつの時代も存在する。これは良いヒントになる気がした。
「お金よりも大切なのは『時間』よ。ただでさえ人生は短いのに、大して好きでもないことや嫌いなことまで手を出しちゃったら、好きなこと、大切なことに全然時間を割けないでしょう?
だから私、なるべく自分以外でもできることは全部お任せするようにしているの。管理や集金業務も他の人にお願いしてね。欲しいだけのお金が自動で入ってくるような仕組みがあればいいだけで、お金を得るまでの細かな過程や作業には、そんなに興味がないのよね~」
今は、月に数回遊びに来る息子さんとお孫さんの相手をするのがとびっきり楽しいのだと言う。息子にもし不動産収入がなかったらこんなに頻繁に会いには来られなかっただろうねぇ、もし「商売のために」この駄菓子屋さんをしていたなら、お店があるから、売上をあげないといけないから、って満足には相手ができなかっただろうねぇ、と、おばあちゃんは愛おしそうに口にする。
「お金を得る方法はたくさんあるわ。でも満足いくだけのお金を得たとして、それを使う時間がなかったら? 何のために稼いでいるのか、ってなるわよね。時間は命そのもの。あんまり粗末に扱わないようにね~」
気づいたことは「働かなくてもお金が入る仕組みづくり」
帰り道。夕陽に照らされたアスファルトの道をぼんやりと見つめながら、私はおばあちゃんと話した内容を思い返していた。
・稼ぎ方は無限にある
・働かなくてもお金は稼げる
これらを今、この時点で知ることができたのは、私にとって大きな収穫だった。時間持ちのおばあちゃんと、暫定時間持ちの私。違いはお金持ちかどうか。たったそれだけ、でも、ものすごく大きな差。
私は時間の自由を手にしていたわけではなく、単に時間を無駄にしていただけなのかもしれない。今まではお金さえ稼いだらいいと思っていたけれど、どうやら私の求めている理想のライフスタイルは、その「先」にあったみたい。
まさか、何もせずにお金を得ている人がこんなに近くにいるなんて。おばあちゃんの楽しみはそこまでお金がなくても叶うことのように思えたけれど、きっと「お金がある」という抜群の安心感が、彼女をより穏やかに、幸せにしているのだろうと感じた。
やりたいことを叶えるためには、お金以外に時間をきちんと確保する必要がある。鍵となるのは、恐らく仕組みづくり。単にお金を手に入れることだけを目標にすれば、世の中にはそれなりに多くの稼ぎ方があるのだろうけれど、お金と時間を同時に手に入れる稼ぎ方という視点で考えると、だいぶ狭まってくるのではないかと感じた。
満足いくお金に加えて自由に使える時間をも手にするには、自分が第一線で稼働し続ける状態ではいけない。働かなくてもお金が自動、あるいはほぼ自動で入ってくるような導線が必要なのだと気づいた私は、ここから「いかに自分の時間を使わず、いかに大きく稼ぐか」という方向で、稼ぎ方を模索していくようになる。
今回の学び
・稼ぎ方は無限にある
・働かなくてもお金は稼げる
・時間を粗末にしてはいけない
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職業お金持ち 冨塚あすか
個人投資家。1988年生まれ、仙台出身。慶應義塾大学卒。「お金を理由に何かを諦める、という事態とは生涯無縁でいよう」と決め、20歳のときに10万円から資産運用を始める。紆余曲折ありながらも持ち前の分析力と嗅覚、人当たりや運の良さで資産を順調に拡大。会社員を辞めてからは2年ほど、専業投資家として資産運用のみで生活をする。現在は、オンラインサロンを通じて、投資の仕方や生き方、女性がお金持ちになるために必要な「お金の帝王学」について指南している。趣味は旅行と食べ歩き、お金持ちの話を聞くこと。
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