自分から世界を広げた先に待っていたのは、衝撃の出会い
大学生は「人生最後のモラトリアム」。
大学入学当初、というかもっと前から(たぶん合格が決まったぐらいから)、周りの「大人たち」が口々に言ってきたこと。社会に出る前のご褒美? 「せいぜい楽しみなさい」と小馬鹿にしたようなニュアンスは、そんなに好きではなかった。
確かに一番身近な仕事人である父は昼夜を問わず働いていたし、知っている大人の中で、労働をせずに収入を得ている人は誰もいない。でも、人生最後だなんて、そんなの勝手に決められたくない。
大人になるのが「自由を奪われること」だとは思いたくなかった。いつだって今が一番楽しい、そんな人生を送りたい。あの頃は楽しかったなぁ、なんて過去に浸りながら愚痴をこぼすようなダサい大人になるなんて到底願い下げ。
時間があってもお金がないのが学生、お金があっても時間がないのが社会人。
よく言われるし、周りの大人たちを見てもそういった生き方をしている人ばかりだったけれど、私はどうにかしてこの常識を覆したかった。
収入=労働時間×労働時給
以外の世界に行きたい。きっと別の生き方がある。気づいていないだけで、絶対に抜け道があるはず。
猶予は四年間。大学在学中に見つからなければ、私はこのまま約束された人生を送ることになるのだろう。それでも「そこそこ幸せな人生」にはなる。思考停止した状態で、ただレールに乗っていさえすればいい。
そうしたら、ベルトコンベアーのように、自動で「そこそこの未来」へと運ばれていく。私の意思なんて介在させなくても、それなりの結果は手に入る。…… でも、本当に、それでいいの?
もし、時間とお金を同時に手に入れる方法を見つけることが本当にできるのなら、人生がもっと面白くなるだろうということは容易に想像がついた。
「外に出よう」
知り合いの中に該当者がいないのであれば、他に探しに行けばいい。
私は「ロールモデルとなるであろう人」を探すことにした。七十億人もいるんだから、世界中のどこかには存在するでしょう、たぶん。刺激もなく、退屈で飽き飽きとした日常。幸い、時間はたっぷりある。
モラトリアム中に「モラトリアムを継続させる方法」を見つけること。これが私の大学生活の裏テーマ。何を夢みたいなこと言ってるの、って呆れられそうだったから、誰にも言わなかったけどね。
そうして私は、行ったことのないところや会ったことのない人の元へ、積極的に出かけるようになった。
大学近くにある駄菓子屋のおばあちゃんが実は…
自分から世界を広げに行ったら、待っていたのは予想だにしないたくさんの出会い。
その中でもひときわ衝撃的だったのは、大学近くにある駄菓子屋さんのおばあちゃんだった。
そこは授業をサボってお散歩していたとき、たまたま見つけたお店。なんとなくおばあちゃんのあったかい雰囲気が好きで定期的に通うようになったものの、古びた店構えに、商品棚はいつもパンパン。
人だって明らかに入っていないのに(店内で私以外のお客さんを見たことがない)、駅前すぐの良い立地にあり、なぜかもう何十年もずっと続いている。いつも軒先の丸椅子にちょこんと座り、他に仕事をしている様子もない。
一体どうやって生活しているんだろう? 過去に莫大な遺産を手にしたとか? 昔から疑問をそのままにできないタイプの私は、直接おばあちゃんに聞いてみることにした。
「ねぇねぇおばあちゃん、この駄菓子屋さんって儲かってるの?」
おばあちゃんはいつものようににこにこ目を細めながら、
「どうかねぇ~。儲かってると良いけどねぇ~。でも、ここで誰かお客さんを見たことあるかい?」
と笑顔のまま聞き返してきた。いや、ない。ただの一度も。会社や学校の受注等、こっそり何かの売上があるのかと一瞬思ってみての質問だったけれど、どうやらそんなことはなさそうだった。
「じゃあ…… おばあちゃんってどうやって生きてるの?」
私にだってかろうじて、年金の知識ぐらいはある。おばあちゃんはきちんと納めた額以上を給付されるプラス世代であるとはいえ、それだけでこのお店を開け続けるのに足りる額ではないはずだもの。
おばあちゃんは歌うように軽やかな声で私にこう言った。
「おうちがね~、毎月毎月、私にお金を運んできてくれるんだよ~。ありがたい話だねぇ」
予想外の答えにびっくり。そう、何を隠そうおばあちゃんは、この一帯を仕切る大地主だったのだ。戦後に買った土地にアパートやマンションを建て、それを元に着実に運用して数十年。月の収入は何もしなくても一千万円をくだらないそう。
こんなに何もせずに稼いでいる人がこの世に存在するんだ……! しかも、全然お金持ちそうにも見えないのに!
それは私にとって、天変地異とも言える衝撃だった。
* * *
次回は、大地主のおばあちゃんが語る「時間の大切さ」について細かくお話していきます。
TOP画像/(c)Shutterstock.com
職業お金持ち 冨塚あすか
個人投資家。1988年生まれ、仙台出身。慶應義塾大学卒。「お金を理由に何かを諦める、という事態とは生涯無縁でいよう」と決め、20歳のときに10万円から資産運用を始める。紆余曲折ありながらも持ち前の分析力と嗅覚、人当たりや運の良さで資産を順調に拡大。会社員を辞めてからは2年ほど、専業投資家として資産運用のみで生活をする。現在は、オンラインサロンを通じて、投資の仕方や生き方、女性がお金持ちになるために必要な「お金の帝王学」について指南している。趣味は旅行と食べ歩き、お金持ちの話を聞くこと。
『職業、お金持ち。』発売中!
『職業、お金持ち。』著/冨塚あすか(すばる舎)
「お金を稼ぐのは簡単なこと。お金持ちになることを決めるだけ」。
場所、時間、お金に縛られることなく悠々自適な理想のライフスタイルを実現している個人投資家が、お金持ちから学んだ【お金持ちになる秘訣】をストーリー形式で紹介。読むだけでみるみる、幸せなお金持ちのマインドに近づくことができるかもしれません。
価格:1,540円(税込)