オンナは稼ぐほど愛される
前回、大富豪のえびすさまの姪っ子、不二子さんから「女性が稼ぐこと」についての話をしてもらった。
……ふと、不二子さんは何かを思いついたように、ぷっくらとした口元に指を当てて私に聞いてきた。
「ねぇ、玉の輿に乗りたい?」
どストレートな問いに軽く怯んだものの、
「はい…… まぁ、できれば……」
と一応答える。
「いいじゃない!」
彼女は予想に反してウキウキと、今までで一番の笑顔を見せた。
「お金持ちの男性って素敵よね〜、この資本主義社会において『お金を稼げる』ってそれだけで、社会のルールに上手に適応できる有能な人だっていう証明に他ならないもの。私もお金持ちってだーいすき! た、だ、し……」
キラキラした少女のような目で楽しげに捲し立てていたかと思うと、急にトーンを落とす。不二子さんはテーブルから身を乗り出し、私を隅々まで観察したのち、ひと言告げた。
「ま、今のあなたでは、玉の輿に乗るのは無理ね」
面と向かって言われると、まぁまぁへこむ。それもとびっきりの美人に。そんなの言われなくたってわかってるけど、わざわざそんなにキッパリと言わなくてもいいじゃない。
「なんでだと思う?」
「いや、なんでっていうか、そりゃ不二子さんみたいに綺麗じゃないし、頭も良くないし、自信もないし……」
「私みたいにはなれないわよ。だってこの私は、唯一無二の女性だもの。そんなの最初からわかってることじゃない。まぁ、憧れちゃうのは仕方ないけどね」
彼女は軽く鼻で笑い、言葉を続ける。
「あなたには何があるの? って話。あなたの武器は? 若い? 可愛い? スタイルがいい? 残念ながらそういった要因は、いずれも劣化していくものばかり。
綺麗に歳を重ねることはもちろんできるけど、そうは言っても時間を止めたり戻したりすることは不可能。基本原則として、男性は歳と経済力が比例し、女性は歳と見た目レベルが反比例するものなのね」
不二子さんは真剣な目をして私を見つめた。
「外見のアドバンテージがなくなったときに勝負しやすいのは『知性』『教養』『可愛げ』『経験』、そしてそれらがもたらす『自信』といった中身の部分。
これらは色褪せることはないし、どんどん魅力を増していく。しかも、早くから身につけるほど恋愛や婚活市場で圧倒的に優位になれる優れものよ。中身が空っぽのまま、単に歳を取るだけの女にはなりたくないでしょう?」
あまりに直接的な物言いにたじろぎつつも、私は「はい」と頷く。
お金持ちの世界でも「類は友を呼ぶ」は本当の話
「じゃあ、そういった知性や教養を、どのようにして身につければいいのか。日本の男性や日本との橋渡しをするようなビジネスをしている人をターゲットにするのであれば、昔のようにお茶やお華、着付けなんかを嗜むのもアピール材料としてはいいわね。
でもそのあたりって、まぁ私もひと通り知っているけど、付け焼き刃のきかない世界なの。手っ取り早く効率良く、っていうのを重視するのであれば『投資』や『ビジネス』といったジャンルが断然おすすめね。
お金や経済の話って多くの女性が敬遠するジャンルだから、ほんの少しかじるだけでも他の女性陣とはだいぶ差をつけることができるわよ」
確かに、えびすさまたちと最初に仲良くなったのも、私がお金や投資に興味がある、というところからだった。そんな二十歳は珍しかったようで、思いがけず会話が弾んだのだ。
「お金持ちで投資をしていない人はいないわ。それが金融投資であれ、事業投資であれ、不動産投資であれ。お金持ちは必ず、何かしらの投資をしている。そもそもお金に働いてもらわないとお金持ちにはなれないんだから、当然よね」
お金持ちで投資をしていない人はいない。じゃあ、投資をしていればお金持ちと出会える可能性も高い?
不二子さんはそんな私の心を見透かすように、世界のリアルを解説してくれた。
「この世界はね、いくつかのレイヤーに分かれているの。これは人間としての優劣とは一切関係なくて、単純に、資産別のいくつかの層に分類されているってことね。
そして人は、同じような資産状況同士で活動圏を形成する傾向にある。『類は友を呼ぶ』っていう現象そのままよ。お金を含む自分自身のステージが上がると、周りにいる人もガラリと変わってくるものなの」
「自分の身近な人、五人の平均年収が自分の年収になる」というフレーズを思い出す。人間関係は都度変化していくし、事実、公立の中学校にいたときと今とでは、社会に出てからの周りの年収は結構変わってきそうな気がした。
玉の輿に乗るには「自立した女性」になること
「ねぇ、都内に住む男性で結婚対象の人って何パーセントぐらいいると思う?」
「えっと…… 二十パーセントぐらいですか?」
「ハズレ。どこからを結婚対象とするかによるけど、まぁひとつ興味深い統計としては、独身、三十五歳以下、年収六百万円以上、都内在住の男性の割合は全体の三・五パーセントと言われているってことは覚えておくと便利よね。私の周りの独身男性は全員がこの収入面を満たしているけど、まぁ良いわ。
いるところにはいる、いないところにはいない。それだけの話。世の中の女性が条件に見合った人となかなか出会えないのはね、ただメインとするフィールドが違うだけなの。一人も該当する人がいない場所でいつまで根気強く探したところで、お相手が見つかるはずもないわよね。
二十歳なら、もしかしたら結婚相手を探すのは少し先になるかもしれないけど、あなたがもし本気でお金持ちと出会いたいのなら、まずは自分のレベルを上げるところからスタートしたら良いわ。
当然、このレベル上げは決してキャピッとした勘違い満載の『女磨き♡』なんかじゃなく、しっかりと地に足のついたものであること。言うなれば『人間力』の底上げね」
口調は辛辣だけど、不思議と不二子さんの言葉はすっと入ってきた。それは彼女の人生に丸ごと裏打ちされた自信から来るものなのかもしれない。
「いい? 良く聞いて。女が稼ぐってことは、自分自身が豊かになるのはもちろん、玉の輿に乗れる確率も飛躍的に上がるの。だって自然と、周り中の男性がお金持ちになるんだからね。
自分が豊かになることで精神的にも自由になり、余裕が生まれるからさらに素敵な男性ばかりが集まってくるようになる。どう? 良いことだらけだと思わない?」
経済的に自立したら、男性に頼らずに生きられて、さらに頼り甲斐のある男性にもたくさん恵まれる。頼ってもいいし頼らなくてもいい、ってそれは、すごく居心地が良さそう。
「男性に一方的に『選んでもらう』時代は終わったの。これからは女性も『選ぶ』時代。そのために今あなたがすべきことは、ちゃんとひとりで生きていけるだけの経済力を、自ら身につけること。それが最適解なのよ」
そう言ってのける不二子さんはとても力強く、清々しかった。きっと彼女が経済的自立を最前線で体現してきたからこそ、言葉の端々に抗えない説得力が宿っていたのだと思う。「自立した女性」、それはこの日に増えた、私の新しいキーワード。
今回の学び
・稼げて愛されて美しい、そんな女性はたくさんいる
・世の中は資産状況別に、いくつかのレイヤーに分かれている
・玉の輿に乗りたかったら、まずは自らが経済的に自立すること
TOP画像/(c)Shutterstock.com
職業お金持ち 冨塚あすか
個人投資家。1988年生まれ、仙台出身。慶應義塾大学卒。「お金を理由に何かを諦める、という事態とは生涯無縁でいよう」と決め、20歳のときに10万円から資産運用を始める。紆余曲折ありながらも持ち前の分析力と嗅覚、人当たりや運の良さで資産を順調に拡大。会社員を辞めてからは2年ほど、専業投資家として資産運用のみで生活をする。現在は、オンラインサロンを通じて、投資の仕方や生き方、女性がお金持ちになるために必要な「お金の帝王学」について指南している。趣味は旅行と食べ歩き、お金持ちの話を聞くこと。
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