【目次】
・日本の「ひとりっ子」の割合と近年増えた理由とは?
・「ひとりっ子」はわがまま?
・「ひとりっ子は可哀想」と思うのは失礼なこと?
・「ひとりっ子」の子育てで気をつけたいこと
・最後に
日本の「ひとりっ子」の割合と近年増えた理由とは?
「ひとりっ子」とは、言うまでもありませんが、子どもにきょうだいがいないことを言います。2015(平成27)年度の総務省による国勢調査によると、「ひとりっ子」は年々増加中。専業主婦世帯では、「ひとりっ子」世帯が最も多く49%を占めています。
1980〜90年代には子どもが2人以上いる家庭が多かったのですが、近年では子どものいる家庭のほぼ半数が、「ひとりっ子」だということになります。
「ひとりっ子」が増えている理由を考えてみましょう
理由1:女性の社会進出
女性の社会進出が進み、産休や育休が何度も取れないというのが理由のひとつとして考えられます。女性の社会進出が進む一方、子育てをしながらキャリアを積むことは実際にはかなり難しく、結果的に2人目以上を望んでいたとしても行動には移せないといったケースも多いようです。
理由2:経済的な問題
子どもを育てるにはそれなりにお金がかかります。雇用が不安定だったりすると、なかなか子育てに踏み切れない場合も。「ひとりならなんとか…」というカップルも多く、「ひとりっ子」が増える背景には、経済の不安定があるともいわれます。
理由3:高齢出産の増加
医療の進歩により、昔よりも高齢での出産が可能となりました。不妊治療の選択肢も増え、できることが増える一方で「ひとりでもできれば、それで十分」という考えのカップルも多くあります。
理由4:両立の難しさ
「子どもを育てながら、仕事もしたい」。そんなふうに思う女性が増えているにもかかわらず、保育園に入りにくかったり、残業が恒常化していたり、実際には「両立は無理」と思っている女性が多いようです。近年では男性の育休取得も増えてきてはいますが、まだまだ特別といった感じです。子育てと仕事の両立や、女性への負担などが、子どもを多く産めない原因のひとつかもしれません。
理由5:女性の生き方に対する考え方の変化
かつては、女性は一定の年齢になると結婚して家庭に入り、子育てに専念するものという考えがありました。しかし、今は多様化の時代。家庭に入る人もあれば、結婚後もキャリアを積むことを最優先にする人もあります。そんななかで、子育てに費やす時間をどこまで取るかについても、その考えは千差万別。結果として、「ひとりっ子」を選択する人も多いようです。
実際には2人以上を望んでいる
2021年に「夫婦(カップル)に望ましい子どもの数」についての調査が行われました。その結果、6割近くの人が「2人」と答えています。つまり、理想としては2人以上の子どもを持ちたいと考えている人が多いということ。一方で、「ひとりっ子」が増えているのは、「そうしたくてもできない」という現実があるからだと考えられます。
「ひとりっ子」はわがまま?
さて、「ひとりっ子」について考えてみましょう。昔から「ひとりっ子」はわがままになるとか、協調性に欠けるなどと言われることがあります。本当にそうなのでしょうか。
「ひとりっ子」は、きょうだいがいる子どもに比べて、ほかの子どもに接する機会が少なく、マイペースに物事に取り組むことができます。また、両親や祖父母の愛を一心に受けるので、良くも悪くも「自分中心」の暮らしになりがちです。
ですが、「ひとりっ子」はわがままで協調性に欠けるのか、というとそうではありません。早い時期からひとり遊びに集中して取り組むことで、何が好きで何が嫌いかという自分の意思が明確になるといわれており、自分の意思がはっきりすることで、他人への配慮もできるようになるそうです。他人への配慮や関心を持つにはまず、自分のことを知らねばなりません。「ひとりっ子」の環境はそれがしやすいということもできますね。
そもそも性格は環境だけで形成されるものではありません。たくさんのきょうだいがいても、マイペースな子やわがままな子はいます。きょうだいの有無で、その子を判断するのはナンセンスかもしれません。
「ひとりっ子は可哀想」と思うのは失礼なこと?
「ひとりっ子」を持つ親御さんの悩みに、「きょうだいがいなくて可哀想」と言われることが挙げられます。子どもは子ども同士の関わり合いのなかで育つのがいい、という考え方から出る言葉だと考えられますが、例えば2人目が欲しくても授からなかった夫婦(カップル)にとっては辛い言葉です。
実際に、「ひとりっ子」は可哀想なのでしょうか。この答えはひとつではありません。というか、何を以て「可哀想」なのか、という点が抜けていることから、明確な答えはないと思います。
家の中で子ども同士の関わりがない、親しか遊び相手がいない…。そんなふうにとらえれば、「ひとりっ子」は「可哀想」かもしれません。一方で、親の愛情を存分に受け取れる、いつでも親と一緒に遊ぶことができる、などと考えれば、まったく「可哀想」ではありません。つまり、同じ状況でも考え方次第で、いいようにも悪いようにも取れるということです。
「ひとりっ子」の子育てで気をつけたいこと
子育てと一言でいっても、それは千差万別です。どんな子にも、いい子育て方法はありません。同様に、「ひとりっ子」だから、きょうだいがいるから、といった理由で子育てを分けることは難しいのですが、「ひとりっ子」の場合に少し気をつけておきたいことを3つあげておきます。
1:自分でやらせるようにする
子どもがひとりだと親に余裕が生まれる分、過干渉になりがちです。困っている様子を見かけると、ついつい、「手伝おうか」と手を出してしまったり、「そうすると、〜になるよ」など、前もって注意をうながしたり…。
でも、なんでも周囲がやってあげてしまうと、子ども自身の「できた!」という喜びを奪ってしまうことにもなります。「ひとりっ子」の場合には、「一歩引いて静観する」ということを心がけておくといいでしょう。
2:他の子どもと触れ合う機会を作る
「ひとりっ子」だと、他の子どもと触れ合う機会が少なくなります。その分、自分の世界を集中して作れるので、それ自体はデメリットではないのですが、一方で他者との関わりの面で少し不安もありますね。
決まった公園に決まった時間に行くとか、児童館などの施設を利用するなどして、同じお友達に定期的に会う時間を意識的に作ってみましょう。そのうち、仲のいいお友達もできますよ。また、年齢の違うお友達とも積極的に関われるようにするといいですね。
3:なんでも受け入れない
子どもが小さいうちは、否定することはできる限り避けたいものですが、大きくなってくると、なんでも受け入れないようにすることは大切です。親もひとりの人であることを、徐々に理解させるようにしましょう。
最後に
「ひとりっ子」がかわいそう、「ひとりっ子」は性格的に難がある、などと言われたのはかつてのこと。「ひとりっ子」かそうでないかは性格にそう影響しませんし、可哀想だと思うのは考え方の問題です。
ただ、2人以上を理想としているのに、「ひとりっ子」が増えている現状は少し悲しいですね。産みたいと思う夫婦(カップル)がそれを実現できる社会になるとうれしいです。
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