【目次】
・「先んじて」の意味・読み方・語源とは?
・「先んじて」と「先だって」との違い
・「先んじて」の使い方を例文でチェック
・「先んじて」の類語にはどのようなものがある?
・「先んじて」を英語で表現するには?
・最後に
日常生活やビジネスシーンにおいて、「先んじて」という言葉を耳にしたことがあると思います。なんとなく意味はわかるけれど、「正しい意味は?」「敬語なのか?」と聞かれると、たちどころに不安になりますよね。そこで、本記事では「先んじて」の正しい意味や語源、使い方や類語を解説いたします。
「先んじて」の意味・読み方・語源とは?
「先んじて」を正しく使うために、まずは意味や読み方、語源をみていきましょう。
「先んじて」の意味と読み方
「先んじて」は、「さきんじて」と読み、「前もって」や「あらかじめ」、「先立って」という意味。さらに詳しく漢字をみてみると、「先」という字には、「ある基準の時間から、それより未来の時間」「順番が早いこと」という意味があります。
「先んじて」の語源
「先んじて」は、動詞「先んじる」を変形させたもの。「先んじる」+「て(接続詞)」で成り立ちます。「先んじる」とは「先にする」が転じた言葉。「先んずる」と表すこともあります。
故事ことわざ、「先んずれば人を制す」
ことわざに、「先んずれば人を制す」という言葉があります。この言葉は、中国の歴史書『史記』に出てくる「先んずれば人を制す、後るれば則ち人の制する所と為る」という言葉に基づいています。
意味は、「先手を打てば、相手を制することができる。よって、何かをする時は人より先に行動するのがいい」ということ。主に、「先手必勝」や「機先を制する」、「早い者勝ち」といったニュアンスで使われることわざ。「何か行動をする時は、人より先に行動した方がいい」と教えたものです。
「先んじて」と「先だって」との違い
「先んじて」と似た言葉で、「先だって」という言い回しがあります。「先だって(さきだって)」には、「先んじて」と同じく、「前もって」や「あらかじめ」など、「物事の前」という意味があります。
「先だって」は、「せんだって」とも読み、「先だって(せんだって)は、ありがとうございました」などのように、過去も表すことができる言葉。「この前」や「先日」というニュアンスでも使われます。
「先んじて」には、「過去」を表す意味がないのに対して、「先だって」には、「過去」を表す意味合いを含んでいることが、2つの言葉の違いとして挙げらますよ。
「先んじて」の使い方を例文でチェック
「先んじて」自体は敬語ではありません。しかし、主にビジネスシーンや改まった場面で使われる言葉。実際に、ビジネスシーンなどでは、どのように「先んじて」を使うのか、例文でチェックしていきましょう。
1:「来月の出張に先んじて、飛行機や宿泊先の手配をいたします」
「来月の出張に先だって、飛行機や宿泊先の手配をいたします」という意味。「先んじて、手配いたします」のように、「先んじて」のあとに続く言葉を敬語にすることで、ビジネスシーンでも使うことができますよ。
2:「講演会を開催するにあたり、先んじてご挨拶させていただきます」
この言い回しは、講演会で講師をお願いしている人や、関係者に、「講演会を開催しますので、前もってご挨拶させていただきます」ということを伝えていますよ。
3:「他社に先んじて、我が社では以前からこの商品の開発をしている」
「他社に先んじて」とは、「他社より先に」という意味。このフレーズは、「我が社は他社より先に、この商品の開発をしている」ということを言いたい時に使えます。
4:「転勤が決まりましたので、先んじてご報告いたします」
「先んじてご報告」は、「前もって報告します」ということを表しています。こちらの文章は、「転勤が決まったことをあらかじめご報告します」ということを、上司や取引先の相手などに報告する際に使えるフレーズです。
「先んじて」の類語にはどのようなものがある?
「先んじて」の他に、「前もって何かをする」時に使うことができる言葉をご紹介いたします。
1:「先駆けて(さきがけて)」
「他のものより先になること。また、そのもの」(小学館『デジタル大辞泉』より)という意味の、「先駆け」に接続詞の「て」をつけたもの。「他国に先駆けて新薬の開発をする」などのように、物事が新たに始まる段階で使われます。
2:「早々と」
「早々(はやばや)」は、「通常よりもずっと早い時期におこなうさま」。「早々と立ち去る」などのように、急いで何かをする時に使われる言葉です。また、「早々(そうそう)」と読む場合もありますが、意味は同じ。「すぐに」や「直ちに」という意味で使われます。
3:「先行して」
「先行」とは、「他より先にいくこと。先を進むこと。さきだつこと」。「先行して発売される」などのように、主に、他に先立って何かを行う時に使われる表現です。
4:「予め(あらかじめ)」
「予め」は、「物事の始まる前に、ある事をしておくさま」ということ。「予め、ご了承くださいませ」や「予めご用意ください」などのように、「起こりうる物事を想定して前もって行う」というニュアンスで使われる言葉です。
「先んじて」を英語で表現するには?
「先んじて」は、「前もって」や「あらかじめ」ということを表す「in advance」または、「〜より先に」、「〜より前に」という意味の「ahead of 〜」を使って表現することができますよ。
・「I am going to prepare those conference documents in advance.」(会議に先んじて、資料を準備します)
・「We will start the service ahead of other companies.」(我々は、他社に先んじてサービスを開始する)
最後に
いかがでしたか? ここまで、「先んじて」という言葉の解説をして参りました。日常生活では、あまり使われない言葉かもしれません。しかし、ビジネスシーンでは意外とよく使われる言葉。「前もって」や「あらかじめ」を「先だって」と表すことで、ぐっと丁寧な印象を与えることができますよ。ビジネスシーンはもちろん、日常生活においても、相手やその時々の状況に応じて、言葉を使い分ける際にお役立てください。
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