「金持ち界」の常識はコレ
前回、大富豪のえびすさまとの出会いから、お金持ちの世界とそうでない世界があることを知った。
「金持ち界」の常識は何?
えびすさまは言う。
「例えばあすかちゃんをはじめ、大多数の人が今採用しているであろうルールを、金持ち界の常識に書き換えると、こうだ」
「働かざる者食うべからず」→「働かせる側であれば自分が働く必要はない」
「楽して稼ぐなんてずるい」→「楽して稼ぐのは楽しい」
「お金持ちは悪いことをしているに違いない」→「お金持ちは他人を喜ばせられる人」
「お金持ちは特別な人」→「お金持ちには誰でもなれる」
えびすさまはまるでひとつひとつ、オセロをひっくり返すかのように次々と、私が握りしめていた「常識」をめくっていく。
「その他にも、金持ち界の常識はたくさんある。
・お金はなくならない
・人生は好きなことだけをするためにある
・辛いこと、苦しいことは避けていい
・金持ちと一緒にいるほど金持ちになる
・お金は人を優しくする
・自分の『好き』がお金に換わる
・労働で豊かになることはできない
・お金も人も『気』の良いところに巡ってくる
・良いとこ取りの人生が普通
なんてね。どう? こっちのほうが楽しそうな世界だとは思わないかい?」
鮮やかな薔薇色の景色が眼前に浮かぶ。
同じ時代に、同じ地球に生きているはずなのに、随分と違う世界のよう。もしも生きているうちに、そんな世界に本当に行けるなら… そんな幸せなことってない。
「そりゃあ私だって、もしそんな世界で生きられるなら、そっちのほうが良いに決まってますよ。でも…… どうしたら? 地位も名誉も、元手となるお金や特別な才能も、私には何もないのに。さっき『お金持ちには誰でもなれる』って言ってたけど、それって私みたいな、ただの大学生でもお金持ちになれるってこと?」
お金持ちに「誰でもなれる」
「もちろん、なれるさ」
それこそ「当たり前じゃないか」とでも言いたげに、いともあっさりと、しかし満面の笑みで答えてくれるえびすさま。
「金持ちの世界は豊かで、穏やかで、常に愛と笑顔に満ち溢れている。そして、この世界には誰でも足を踏み入れることができるようになっている。ちょっとしたコツを掴めば、誰だってね」
「ちょっとしたコツ?」
「そう。何、簡単だよ。ただ、無意味なこだわりを捨てる覚悟は必要だけども。もし今後本当にあすかちゃんが『お金持ちの世界』で生きたいと望むなら……
今がんじがらめになっているその常識の枠を取り払わないと、永遠にその願いは叶わない。今まで持っていた常識を捨て、これらの金持ちの常識を自分の中にしっかりとインストールする必要がある」
「常識を捨てる? どうやって?」
「まずは一旦、今まで当たり前だと思ってきたことを全て疑ってみることだ。どんなに小さなことでもね。ちょっとしたお金の使い方、お金の捉え方から、働き方や生き方といった大枠まで。
常識っていうのは自分が気づかないぐらいに奥底へ浸透しているものだから、それを炙り出す作業がスタートライン。自分がどんな枠組みで思考して日々を過ごしているかを、正確に把握する必要がある」
彼は少し声のトーンを落とし、憂いを帯びた眼差しでこう続ける。
「特に日本はお金の呪縛がとても強く、幼い頃から知らず識らず、親に、学校に、社会に洗脳されてきている。誰が悪いというわけじゃないよ。あすかちゃんの上の父母世代も、もっと上の祖父母世代も、みんなどちらかというと被害者だ。
呪いのように脈々と受け継がれる『貧乏』の血。それをここらで断ち切ってあげないといけない。下の世代に惨めな思いをさせたくないのであれば、なおさらね」
今まで周りの大人に言われてきた言葉、散々耳にしてきたフレーズが脳裏を駆け巡る。
「そんなにお金、お金、って言うんじゃないの。みっともない」
「うちはお金持ちじゃないんだからね」
「一生懸命働いて偉いねぇ」
「良い大学に入って、良い会社に入って、素敵な旦那さんを見つけたら生涯安泰なのよ」
違和感を覚えていた意味がようやくわかった。
こういった言葉を発している人の中に、本当に幸せそうな人も、圧倒的なお金持ちも、ただの一人も思い浮かばないのだ。とすれば、ルールが違うというのは、もしかしたら本当なのかもしれない。
…このまま放っておけばきっと楽。気が付かないふりを続けていたら、少なくとも裏切られることはない。最初から夢を見なければ、がっかりすることもないんだから。
自分の常識を捨てるということは、自分が信じてきたものを覆すということ。それはともすればアイデンティティの崩壊を招きそうで、私は得体の知れない恐怖を感じていた。
薔薇色に見えている世界は、実は混沌とした闇の入り口なのかもしれない。私は目の前の老紳士に、巧妙に騙されているのかもしれない。
でも、私の人生、たとえこのまま百年生きたとしてもお金持ちからは遠ざかる一方な気がして… そっちのほうが、私にはもっと怖かった。
「あすかちゃんがすごいのはね、心の中では既に気が付いていたということなんだよ。僕に聞く前からね。育ってくる中でずっと周囲から言われ続け、当たり前と思ってきたことが、実は間違っているのではないかということに。
だから今、こうしてこの場所にいる。きっとね。…不思議だよね、『お金持ち』と自分の何が違うのか。見た目も頭脳も、中身だって、同じ人間である以上、それほど大きな差はないはず。
代々続く石油王の家系やロイヤルファミリーであればいざ知らず、世の中には一代で財を成す人だってたくさんいる。そうであれば、自分だって『お金持ち』になれるはずだ、と思うのは、至って素直な発想だ」
素直というか、単純なだけかもしれないんだけど。でも、同じ人間なんだから恐らく大差はない。内心思っていたものの、それを大金持ちであるえびすさまから聞くのは後押しになったし、納得感があった。
「あすかちゃんは『お金持ちになるために』ここに来た、と言っていたね」
「うん」
「何度も言うが、お金持ちには誰でもなれる。ただ、そうなるにはいくつか覚えておくべき簡単なルールがあるんだ。
金持ちが金持ちである理由。あすかちゃんが、ここからお金持ちになる方法。…どうだろう。知りたい?」
答えなんてわかりきっているのに、えびすさまはたまにこうして意地悪をしてくる。
「もちろん! 知りたい!」
「じゃあ、こうして仲良くなったのも何かの縁だし、いつまでも世間話だけではつまらないだろうし…。『お金持ち』になる上でのルールの解明でも、一緒にしていこうかね?」
渡りに船とはこのこと。何の気なしにした質問からこんな展開になるなんて。やったぁ。
「ぜひ! ぜひぜひ! よろしくお願いします!」
思わず前のめりに、勢いよくお辞儀をしながら返事をした。ガタッて、人生が大きく動いた音が聞こえた。心の中ではガッツポーズ。神様ありがとう。下を向きながら、どうしても嬉しさが抑えきれず、私はにやにやと笑みを浮かべていた。
こうして私は、大富豪からまさかの直々に、お金持ちのお作法を学んでいくことになったのです。
今回の学び
・お金持ち界と貧しい世界のルールは違う
・お金持ち界のルールを採用するには、今までの常識を全て捨てる(疑う)のが近道
・お金持ちには誰でもなれる
TOP画像/(c)Shutterstock.com
職業お金持ち 冨塚あすか
個人投資家。1988年生まれ、仙台出身。慶應義塾大学卒。「お金を理由に何かを諦める、という事態とは生涯無縁でいよう」と決め、20歳のときに10万円から資産運用を始める。紆余曲折ありながらも持ち前の分析力と嗅覚、人当たりや運の良さで資産を順調に拡大。会社員を辞めてからは2年ほど、専業投資家として資産運用のみで生活をする。現在は、オンラインサロンを通じて、投資の仕方や生き方、女性がお金持ちになるために必要な「お金の帝王学」について指南している。趣味は旅行と食べ歩き、お金持ちの話を聞くこと。
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