一瞬のやり取りでも見える機微
みなさんは「気遣い」といえばどのようなことが思い浮かびますか? 一般的には仕事や恋愛などさまざまな場面で必要とされることがありますよね。気遣いは一瞬のやり取りでもその人の気持ちを表すことができるもの。
私がCA時代に、お客様への思いが伝わる素敵な気遣いをしていた先輩のお話をします。
心情に寄り添った咄嗟の気遣いを
CAは普段出発時、搭乗口のドアの外に出て、お客様にお出迎えの挨拶をします。いつもなら明るく笑顔を交えながら「いらっしゃいませ! おはようございます!」と言うチーフパーサー(その便のCAの最高責任者)が急に声を落とし、笑顔を消して静かに挨拶をしていました。
私は「あれ、どうしたのかな?」と不思議に思いましたが、お客様をよく見たところ、喪服を着た方々が搭乗されるところだったのです。その方々が目の前を通りすぎるとき、チーフパーサーは悼む表情で静かに頭を下げて挨拶をしていました。
まだ新人だった私は右も左もわからず、ただ元気に挨拶をすることだけが取り柄だったのですが、この光景を見て「私に、チーフパーサーのような咄嗟の気遣いができたのだろうか?」とハッとしたことを鮮明に覚えています。
相手の気持ちを想像してみること
気遣いとは「相手の気持ちを想像し、思いを伝えること」だと思います。挨拶をすることが目的なのではなく、一人一人のお客様の気持ちに応えるために挨拶という手段をとっていたのです。
お客様は楽しい旅行だけでなく、さまざまな理由で飛行機をご利用されています。「どんなご事情なのかな?」と深入りせずとも、様子を見て状況を察する力はとても大切です。
チーフパーサーのように相手の心情に寄り添うことで、たとえ一瞬のやり取りであっても、自分の気持ちは相手に伝わるものです。
「遣」という字に込められた意味
それでも気遣いは難しいと思っている方には、気遣いの「遣」に込められた意味を考えてみてください。気遣いや言葉遣いの「遣い」の感じは「使い」ではありません。
「遣」という漢字は、「思いを伝える」「心をはたらかせる」という意味があるそうです。一方で「使」という漢字は、「ペンを使う」「ティッシュペーパーを使う」など、消費するものに対してよく使われます。この漢字の意味の違いからもわかるように、気遣いは「思い」がもとになっているものと考えていただければ、相手との関係性もつくりやすいですね。
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今回紹介した、気遣いの秘訣はほんの一部。発売中の著書『仕事も人間関係もうまくいく「気遣い」のキホン』では、気遣い上手になれる秘訣がたくさん詰まっています。
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人材教育講師 三上ナナエ
新卒でOA機器販売会社に入社し、販売戦略の仕事に携わる。その後ANA(全日本空輸株式会社)に客室乗務員(CA)として入社。チーフパーサー、グループリーダー、OJTインストラクター、部門方針策定メンバーなどを経験。
ANA退社後は、研修講師として活躍中。独自の切り口で行う接客・接遇・コミュニケーション力向上セミナー、プレゼン能力アップ研修などは、官公庁や民間企業、大学など多数で採用され、受講者総数は20,000人以上。年間100回以上の企業研修を任されている。
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