嫌いだけど、関係性が切れない相手との接し方
「悪口はできる限り、言わない、聞かない、関わらない」
これが理想ですが、いつも素晴らしい仲間に恵まれた環境に身を置けるわけではありません。
高圧的に部下を支配しようとする上司、敵愾心むき出しのライバル、生意気な部下、町内会やPTA、コミュニティやママ友など、顔を合わすのも嫌な人たち。
どんなに嫌いでも、そこに居なければならないといけないケースは少なからずあります。
そんな時は、「逃げる」というのは立派な選択肢です。
例えば、異動願いを出したり転職活動を始めたり、町内会やPTAと距離を置くことが必要でしょう。
嫌いな上司は、あだ名をつけて笑い話に変える
しかし、その選択肢を取る前にできることがあります。
1つめは、「その状況を笑い話に変えてしまうこと」です。
嫌いな相手に「あだ名」をつけるなどして、仲のいい人とだけで通じる「隠語」を考えておく、というイメージでしょうか。
例えば、いつもガミガミ言う上司を「滝」と名づけます。
そして昼休みなどに、同僚と一緒になって「いや~、今日も滝は午前中からすごかった。おかげでいい滝行になったよ(笑)」などと笑ってしまえば、少しは気持ちが軽くなるのではないでしょうか。
苦手な人に「ドラえもん」のジャイアン、「スーパーマリオ」のクッパなど、ゲームやマンガのボスキャラを、あだ名としてつけるというのもアリです。
「今日のジャイアンは相変わらずわがままだったね(笑)」
「昨日のクッパは、少し戦闘能力が落ちてて早めに帰っちゃったよ(笑)」
もちろん、これをしたからといって、状況が好転するわけではありません。
しかし、暗い気持ちを抱えたまま人と接すると、あなた自身も愚痴っぽくなってしまいます。愚痴っぽい人のところに、集まってくる人なんていません。
嫌いな人のためにあなたが愚痴っぽくなり、結果的にあなたから人が遠ざかってしまったら本末転倒なのではないでしょうか。
このように考えると、嫌な人のことを笑い話に変え、その人から受けるダメージを最小限に抑えるというのは、小手先の技のようでも、有意義だといえます。
ただ、あくまで自分の心を軽くすることが目的なので、言いすぎて悪口大会につながらないよう注意してください。
高圧的な物言いをする人には「反応しない練習」
また、必要以上に高圧的に支配しようとする人も結構います。そういう人から身を守るには、その人の言葉を、まともに受けないことが大切です。
そこで必要なのが、「どう話すか」よりも、「いかに話さないか」です。
つまり「反応しないこと」が、最大の防御になります。
特に高圧的なタイプの人は、支配したい相手の反応を見たくて、過剰に高圧的に接してくるところがあります。
そういう人に対して、何か言い返そうとするとまさに相手の思うツボ。それ見たことかとばかりに、かさにかかって攻めかかってきます。
そこで相手にひどいことを言われた時はあえて「反応しない」という選択をするわけですが、これがなかなか難しい。そこでコツをお教えしましょう。
それは心の中で、
「はあ、あなたはそう思うんですね」
「へー、そんな考え方もあるんですね」
と唱えることです。
つまり、「私は、そうは思わないんです」と、相手と自分との間に、ガッチリと強固なラインを引いてしまうのです。こうして「反応しない練習」を重ねると、やがて相手は、あなたの反応の薄さにあきらめるかもしれません。
悪口を言う人を絶対に変えようとしてはいけない
どんなにいい空間に身を置こうと心がけたとしても、年に数回は飲み会などで不平不満、悪口で盛り上がる人たちが目の前に現れます。
その時は、どう時間を過ごすのがベストでしょうか?
「具合が悪い」と言って、中座してしまうことです。
ただこうした場に少しでも居合わせた際に、注意してほしいことがあります。それは、
「絶対にその人たちをその場で変えようとしない」
こと。
「ねえ、せっかくだから楽しい話をしようよ」
「いい言葉がいい人生をつくるんだよ」
などと言わないこと。1000本の矢があなたに向かって飛んできます。
また、「そうなんだ、ひどいね」という同調もやめましょう。あなたも巻き込まれてしまいます。
悪口を言う人、特にそれが頻繁な人は心がどこか渇いているのです。
自分の中の心の穴を埋めていくために、誰かの悪口を題材にして自分を満足させようとしてしまうのです。
残念ながら、今の世の中はまだまだそんな場所が大多数です。
殴る蹴るといった暴力は罪になりますが、人の心を傷つける言葉の暴力はよほどのことでない限り罪にはなりません。
大切なのは、「周りが言ってもあなたは言わない」こと。
せっかく大切な時間を使ってその場にいる以上、気づきを増やして自分のブレない軸を作ってくださいね。
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永松 茂久(ながまつ・しげひさ)
株式会社人財育成JAPAN代表取締役。大分県中津市生まれ。「一流の人材を集めるのではなく、今いる人間を一流にする」というコンセプトのユニークな人材育成法には定評があり、全国で数多くの講演、セミナーを実施。「人のあり方」を伝えるニューリーダーとして、多くの若者から圧倒的な支持を得ており、講演の累積動員数は延べ40万人にのぼる。2020年1番売れた会話の本『人は話し方が9割』(すばる舎)をはじめ、著書多数。