【目次】
・「諭す(さとす)」の意味と間違いやすい言葉
・「諭す」の使い方を例文でチェック
・「諭す」の類語にはどのようなものがある?
・「諭す」の対義語にはどのようなものがある?
・最後に
「諭す(さとす)」の意味と間違いやすい言葉
あなたは「諭す」という言葉をご存じでしょうか? 「諭す」は日常会話でも使うことのある言葉です。
ただ、「諭す」は、使える相手が限られていたり、他の言葉と意味を間違えられたりすることが多い言葉でもあります。
そこで今回は、「諭す」の正しい意味や使い方、間違えられやすい言葉との違いについてご紹介です。
「諭す」の意味
初めに、「諭す」の意味について。実は、「諭す」には大きく分けてふたつの意味があります。
日常会話でよく使われる意味は、「言い聞かせて納得させること」「教え導くこと」。
物事の通りを理解できるように言い聞かせたり、相手が納得できるように教えたりするときに使われます。
もうひとつの意味は、「神や仏からのお告げ・警告を知らせること」です。元々はこちらの意味として使われていました。
「諭す」と「叱る」の違い
「言い聞かせる」という点で、「叱る」と似た言葉だと感じた方もいるのではないでしょうか?
「諭す」と「叱る」の違いは、「注意するというニュアンスがあるかどうか」です。
「叱る」は、「相手の非を指摘して、注意する」という意味があります。それに対し、「諭す」には「物事をわかりやすく伝える」という意味がありますが、内容は注意に限定されません。
「諭す」と「怒る」の違い
「怒る」は、「腹を立てること」。周りから見ても腹を立てていることがわかる状態のことを「怒る」と表現します。
「怒る」は自分の感情に任せて非難をするため、相手のことを思って教え導く「諭す」とは全く意味が異なる言葉です。
「諭す」と「悟す」の違い
「諭す」と同じ読み方をする「悟す」ですが、根本的な意味は異なります。
「悟す」の意味は、「自分自身が迷いから抜け出して、ふとしたときに自分で答えを見つけること」です。
そのため、「相手に物事を教え、理解しやすいように言い聞かせる」という意味を持つ「諭す」とは意味が異なります。
「諭す」を使える相手とは?
「諭す」という言葉を使えるのは、「目上の人が目下の人に対して言い聞かせるとき」。
目下の人から目上の人に対して「諭す」を使うのは、かなり失礼です。それは、「諭す」の意味でご紹介したように、元々「諭す」という言葉は「高位の存在である神仏が、人に対してお告げを知らせる」という意味があるからです。
目下の人から目上の人に対して忠告や警告をするときは、「諭す」ではなく「諫める(いさめる)」という表現を使うのがオススメです。
「諭す」の使い方を例文でチェック
「諭す」の意味や、使える相手についてのご紹介でした。続けて、実際に「諭す」をどのように使うのか、例を挙げてご紹介したいと思います。
1:「この年になってようやく、母親は自分のために諭してくれていたのが分かった」
「諭す」は相手のことを思って言い聞かせるときに使えます。「諭す」を使うことにより、我が子に対する親の愛情を感じ取れる文章にすることができますよ。
2:「上司に諭されて仕事のやり方を変えたところ、業務効率が大幅に上がった」
この文章では、「諭す」は「将来性のある部下に順調に育ってほしい」という上司の思いを言外に表現するために使われています。
ふさわしくない点を改めさせるために言い聞かせているため、「怒る」や「叱る」より「諭す」という言葉を使うほうがより適切です。
3:「先生はこの機械の使い方について、理解しやすいように諭してくれる」
「諭す」は親から子、上司から部下に対して使われることが多いですが、別環境であっても使うことができます。
「物事の道理について、納得できるよう言い聞かせる」という意味があることから、大学などの教育の場でも使われています。
「諭す」の類語にはどのようなものがある?
続けて、「諭す」の類語についてのご紹介です。類語を理解しておくことで、より適切な表現を使い分けることができますよ。
1:躾ける
「躾ける(しつける)」の意味は、「物事の習慣を身に着けさせること」です。ペットや子供に対し、作法や礼儀などの社会的に身に着けておきたい物事を習得するよう、言い聞かせるときに使われます。
2:戒める
「戒める(いましめる)」の意味は、「過ちや間違いをしないように注意すること」です。悪いことや正義に反する行動を起こさないよう注意をすることを表現するときに使われます。
3:忠告する
「忠告する」は、「真心を持って、相手のちょっとした過ちや欠点を指摘し、改めるように勧めること」を表す言葉です。
「躾ける」や「戒める」は「改めさせること」、「忠告する」は「改めるように勧める」というように、ニュアンスが異なります。
「諭す」の対義語にはどのようなものがある?
最後に「諭す」の対義語についてのご紹介です。
1:諫める
「諭す」を使える相手についてご紹介した通り、「諫める」の意味は「目下の人が目上の人の言動・行動に対して忠告し、改めさせること」です。
意味自体は「諭す」とよく似ていますが、使う場面は「諭す」と反対の言葉となります。
2:直諫する
「直諫する(ちょっかんする)」は、「目上の人に対して、遠慮することなく率直に諫めること」を表します。
地位や権力に屈することなく直言することを表すため、社長など、自分よりかなり立場が上の人に対しても使うことができますよ。
3:忠告する
「諭す」の類語でも出てきた「忠告する」の「忠」という字は、元々「臣下が君主に対して忠実である」という意味があります。
そのため、本来の意味では「目下の人から目上の人への諫め」として使うのが適切だといえますよ。
最後に
「諭す」についてのご紹介でした。いかがだったでしょうか?
「諭す」は、「言い聞かせて納得させること」と「神仏のお告げや忠告を知らせること」という、ふたつの意味がありました。日常会話で使われるのは「言い聞かせて納得させること」という意味です。
ただ、「諭す」という言葉が使えるのは目下の人に対してとなります。誤って目上の人に使うと失礼に当たるため、正しい意味と使える相手を理解しておくことがオススメですよ。
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