周りの人が静かに引いていく人
「名刺を出すまでは横柄な態度を取っていたのに、役職がわかった途端、態度が変わった」
「お客である自分には丁寧に接するが、部下や後輩にはぞんざいな話し方をする」
このように相手によって言葉遣いや態度を変える人というのは、いい話し方を身につける以前の問題です。
タクシーの運転手さんやレストランやコンビニの店員さんに対してなど、自分がお客の立場になると急にえらそうになる人がいます。
誰に対しても感謝の念を込めて接していれば、自然と「お願いします」「ありがとうございます」のひと言が出るもの。
あなたはいかがですか?
人は、あなたの話し方を意外と見ている
言葉や態度は、自分の意識によって変わります。
相手の立場や役職によって話し方を変えるような人は、絶対に好かれません。
相手によって言葉や態度を変える人は、とどのつまり「目下の人や自分より立場の低い人には横柄に接していい」という意識で生きているということ。
その意識が言葉や態度から透けて見えてしまうと、周りの人はすごく不快な気分になります。
目上の人や大切な人には、誰しも言葉や態度に気を遣います。
しかし、日常で接する周りの人たちに対して、どういう言葉や態度で接するか。人の真価は、案外そういうところに表れます。そして、周りの人たちはあなたのそういう姿勢を見ています。
先日、東京の地下鉄で出口に迷い、駅員さんに出口を聞いたことがありました。
駅員さんは私には敬語で答えてくれたのですが、次に質問した高齢の女性には、「だから、右に行ってって言ってるでしょう!」と吐き捨てるように言っていました。
それを聞いて私は、複雑な気分になりました。
たしかに、その女性は理解が遅かったので駅員さんはイライラしたかもしれません。
ところが、もし、いかつく恐そうなおじさんがやってきたら、その駅員さんはどう対応するのでしょうか? 同じような態度を取るのでしょうか。
恐らくそうではないと思います。そういう人は、得てして相手によって態度を変えるからです。
もうひとつ、相手によって態度を変えることがどれほど格好悪いかを、深く心に刻むことになった事例がありました。
あるパーティでのお話です。
私の隣で立ち話をしていたちょっと威張り気味な男性が、話し相手と名刺交換をした途端、いきなり態度を変えました。
「すみません。そんな偉い人だとは知らずに…」
急にぺこぺこ頭を下げ始めたのです。
どうやら、最初その人とタメ口で話していたものの、名刺交換をしてみたら自分よりはるかに大きな会社の、はるかに役職の高い人だとわかったから平身低頭したようでした。
話し方に一貫性を持たせることで人に信頼される
生意気に話すにも、人を大切に思って話すにも、私は一貫性が必要だと思います。
生意気に生きるなら誰に対しても生意気に話し、人を大切に生きるなら誰に対しても人当たりよく話をする。
人によって態度や話し方を変えない。これが基本です。
「日本社会は縦社会だから、自分より目上の人には頭を下げざるを得ないんです」
こんな反論をされた方がいますが、私は目上の人に丁寧に話すのは当然のことと思っています。
であれば、目上だけでなく、目下の人にも親切に話すと筋が通ります。
人に丁寧に対応していて、かつ、いつでも格好よく魅力的であるには、相手の立場に関係なく、どんな人も大事にしていればいいのです。
それが上手な話し方であり、人間関係の作り方です。
・目上の人にも、目下の人にも丁寧に話す。
・男性に対しても女性に対しても、相手の気持ちを大切にしながら話す。
・怖そうな人にも丁寧に接するし、引っ込み思案の人にも丁寧に接する。
・誰であれ、相手の感情を大切にしながら話をする。
このスタンスさえしっかりしていれば、その人の魅力が失われることはありません。かえって魅力が増します。
いつもブレずに、すべての人と同じように話をできる人が、誰から見ても素敵な人ではないでしょうか。
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永松 茂久(ながまつ・しげひさ)
株式会社人財育成JAPAN代表取締役。大分県中津市生まれ。「一流の人材を集めるのではなく、今いる人間を一流にする」というコンセプトのユニークな人材育成法には定評があり、全国で数多くの講演、セミナーを実施。「人のあり方」を伝えるニューリーダーとして、多くの若者から圧倒的な支持を得ており、講演の累積動員数は延べ40万人にのぼる。2020年1番売れた会話の本『人は話し方が9割』(すばる舎)をはじめ、著書多数。