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がんの「ステージ」と新型コロナウイルスの感染状況を示す「ステージ」
これまでは「ステージ」といえば、テレビゲームなどで使われる用語でしたが、新型コロナウイルスの流行以降は、「ステージ」は別の意味で使われているようです。このコラムを書いている本日は、現在「東京はステージ4」。
「がん」にもステージという概念があります。そして、新型コロナウイルスなんぞが始まる随分以前からステージという医学的専門用語を使って患者さんにも説明をしてきていました。そして、がんのステージもIからIVに分類します。
がんで苦しんでいる人のことを考えれば、新型コロナウイルス感染拡大の表現に「ステージ」という言葉を用いることや4段階に分ける事を、「やや心ない表現」だと感じています。私だけかもしれませんが、「東京のステージ4を何とかステージ2まで戻して…」という表現に違和感を感じています。
がんのステージは世界共通で長年使われている分類方法ですから、新型コロナの感染拡大状況の表現方法を変えていただければ、なんとなく個人的にはスッキリします。少し、愚痴っぽくなりました。
がんのステージごとの治療
皆さん、がんに「ステージ」というのがあるのをご存じですか? どこの臓器に「がん」ができたかで、すなわち、乳がんなのか子宮頸がんなのか肺がんなのかなどによって、少しずつその定義は異なるのですが、がんが大きくなり、進行するほど、ステージが高くなります。
そして、この、ステージによって大体の治療方針がきまってきます。そして、どの臓器にできた「がん」であってもステージIVとは転移があることになり、基本的には手術は行われません。
また、ステージIVというと治療がうまくいく可能性は随分と低いということを意味しています。ステージが上がれば上がるほど、治療も困難になってきます。ですので、できるだけ、ステージの低い時期にがんを見つければ、がんを完治してしまうことも可能ですよということで、早期発見の重要性がいわれているわけです。
最近では、がんができた臓器によっては(例えば、大腸など)、ステージ0という概念もあるくらいですので、ステージ0で見つかったがんは完治が大いに期待されるわけです。
乳がん、子宮頸がん、胃がん、大腸がん、などは早期発見で十分に完治が期待できる「がん」ですので、やはり、がんの早期発見をめざしましょう。
TOP画像/(c)Shutterstock.com
国立がん研究センター研究所 がん幹細胞研究分野分野長 増富健吉
1995年 金沢大学医学部卒業、2000年 医学博士。
2001年-2007年 ハーバード大学医学部Dana-Farber癌研究所。2007年より現職。
専門は、分子腫瘍学、RNA生物学および内科学。がん細胞の増殖と、コロナウイルスを含むRNAウイルスの増殖に共通の仕組みがあることを突き止めており、双方に効く治療薬の開発が可能かもしれないと考えている。
専門分野:分子腫瘍学、RNAウイルス学、RNAの生化学、内科学。
趣味:筋トレ
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