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WORK

2021.01.25

働き方にも影響!?【脱はんこ】は業務改善のチャンスなのか?

ニューノーマル時代に加速した「脱はんこ」の流れ。業務にどのように影響が出るか、おさらいしましょう。

「脱はんこ」で業務はどう変わる?

政府が推進する〝ニューノーマル時代〟に合った「脱ハンコ」の意義とは? コンサルティング会社「ビズサプリ」CEO 三木孝則さんにポイントを教えてもらいました!

コンサルティング会社「ビズサプリ」CEO 三木孝則さん
みき・たかのり/1975年生まれ。公認会計士。東京大学経済学部在学中の’97年より青山監査法人、’03年より監査法人トーマツで経験を積み、’10年より現職。会計管理業務や、業務改善などのコンサルティングを行う。

「紙の書類とはんこを、ただ電子上で再現するのではなく、業務改善につなげるチャンスにしてみては」

Oggi 三木さんはコンサルタントとして、多くの民間企業の業務改善などをてがけていらっしゃるんですよね? 実際、ビジネスの現場では、はんこは減っているんでしょうか?

三木 この数年、徐々に「はんこじゃなきゃ」という場面は減ってきたと感じます。そもそもは、アベノミクスによる好景気で採用活動に積極的になった企業が、時短や在宅でも働けることをアピールし始めたことが背景にあります。

社員が会社にいないときにはんこが押せずに業務が滞ると困るので、必要に迫られて、はんこ以外の決裁方法を認めたというわけ。最近の動きでいうと、これまで取締役会の議事録には出席者が署名または記名押印するルールでしたが、5月末に法務省が「電子署名を容認する」という見解を出して、リモートでも承認できるようになりました。

Oggi なるほど、単純にはんこを省略するだけではなくて、電子化とセットなんですね。そういえば「婚姻届の押印が廃止されたら、電子証明書の手続きが必要」とニュースで見ました。「電子印鑑」や「電子署名」という言葉を聞きますが、具体的にはどのようなことなんでしょう? たとえば最近、はんこ付きの請求書のPDFを原本なしで処理することが増えたんですが、そういうこと…?

三木 それはレベル1とも呼べる、初歩的な方法ですね。コロナ禍で「押印のためだけに出社しなくてもいいように」と、とりあえず押印した紙の書類をPDF化したり、文書ファイル内にはんこの画像を貼り付けたりして送るケースも多いようです。手持ちのはんこの印影をデータ化するサービスや、〝はんこっぽい〟画像を作成できる無料のサービスもあります。

Oggi えー、手軽ですね。

三木 認印の代用としては便利ですが、だれでもつくることができるので「私が承認した」という、はんこ本来の意味はほぼなし。私も請求書などに押していますが、「押してあるとなんとなく安心」程度の意味合いですね。

Oggi なるほど(笑)。

三木 本人による認証がきちんと機能しているのは、電子決裁。ひとりひとりにIDとパスワードがあり、「その人が確かに承認した」という記録を残すサービスです。導入している企業も増えていて、社外との契約に使えるサービスもあります。

Oggi 信頼度が上がりますね。さらにレベルの高い方法も…?

三木 大企業を中心に以前より導入されている「ワークフローシステム」があります。稟議や報告、申請書などをシステム上で回すイメージ。たとえば「Aさんの承認を受けたらBさんのところに回って、法務でリーガルチェックのOKが出たら、提出者のところに戻ってくる」といった承認ルートを設定できます。

すべてのはんこは電子化されない…!?

Oggi そのようなシステムを導入している企業では、実際、はんこが一掃されるんでしょうか?

三木 もともとのはんこの量がとても多いので、完全にはなくならないことが多いです。重要性があまり高くない承認は電子、役員の承認が必要な金額の大きいものは紙で回している、といった会社も。

Oggi 役員がご年配だから?

三木 それもあるかもしれないですが(笑)、承認が必要な人数が多いと、「この案件はこの順だけど、あの案件は別の人にも回さないと」など承認ルートが複雑になり、都度システムで設定するより紙で回してしまったほうが早い、ということもあるようです。

それに、なんでもかんでもはんこを電子化すればよいということではなくて。たとえば郵便物の受け取りに、はんこを押すほうが双方スムーズならそれでいいと思うんですよ。

Oggi 臨機応変に使い分けられるといいですね。

三木 とはいえ、世代の入れ替わりとともに、脱はんこや電子化は確実に進むでしょう。その際大切なのは、そのはんこがただの画像なのか、本人の認証がされているのか、きちんと理解しておくこと。また、電子化が進む過程では、「紙の書類・押印をそのまま電子に置き換えるだけでいいの?」という視点も忘れないでほしいです。

Oggi どういうことですか?

三木 現状では、電子決裁サービスを使っていても「稟議書はA4で1枚におさめる」といった発想で作成されている場合が多いです。でもせっかく電子化するのなら、詳細な情報を参照できるようリンクを張るなど、これまでとは違う電子化のメリットを生かせるかもしれない。今回の脱はんこの動きを、はんこだけではなく、今後の業務の進め方や効率化を考えるチャンスとしてとらえてみてください。

はんこに代わる!? 電子決裁にもレベルがある

lEVEL1|画像の「はんこ」を押して紙の文書を再現

▲「エクセルに250以上もの機能を追加できる『RelaxTools Addin』というツールには〝電子職印〟というはんこ画像作成機能が(写真)。〝社畜度〟という機能で、上司のほうにはんこを傾ける謎ルール〝おじぎはんこ〟もできます(笑)。ネット上では、文字と重ねられる透かし印の画像がつくれるサービスも」(三木さん)

LEVEL2|ID・パスワードが求められる「電子決裁・契約サービス」を利用する

▲「現在、多くの企業が検討しているのはこのレベル。ネーム印でおなじみのシヤチハタは『パソコン決裁Cloud』というサービスを展開。クラウド上で捺印するので、時間場所を選びません」(三木さん)

▲「日本の法律に特化した電子契約サービス『クラウドサイン』は弁護士が監修しています」(三木さん)

LEVEL3|企業ごとにカスタマイズされた「ワークフローシステム」で承認する

「もともと、脱はんこのためではなく、業務効率化を目的として設計されるシステム。認証にかかった時間や件数を分析して業務改善に役立てたりすることもできます。ただしシステム開発には最低でも数百万円以上のコストがかかりますし、自社の承認フローをシステムで再現できないなど、うまく導入できないリスクもあります」(三木さん)

2021年Oggi1月号「Oggi大学」より
イラスト/八重樫王明 構成/酒井亜希子(スタッフ・オン)
再構成/Oggi.jp編集部

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