- 1 2020年映画でも話題のコン・ユ主演『トッケビ』は観ておきたい!
- 2 身体を刺し貫いた剣を抜けるのは、トッケビの花嫁だけ
- 3 設定はおどろおどろしいが、大人のユーモアいっぱい
- 4 鬼と死神、男同士のブロマンス
- 5 長身のイケメンふたりが、けだるそうなツーショットで
- 6 ヒットが見込まれることで、お金をかけられた美しい映像
- 7 御曹司のカフェオーナーを演じた『コーヒープリンス1号店』
- 8 「男装する女子もの」の先駆け
- 9 トレンディードラマから、進化し続けて話題映画『82年生まれ、キム・ジヨン』も
- 10 ファンミの後には「のどが疲れたんじゃないですか」と気遣いも
- 11 社会派映画で事件が再検証され「単なる人気俳優ではない」というポジションに
2020年映画でも話題のコン・ユ主演『トッケビ』は観ておきたい!
おうち時間がたっぷりなお正月、韓ドラを語る上で欠かせない作品を観ておこうというなら、2020年に話題となった映画『82年生まれ、キム・ジヨン』で主演を務めたコン・ユの大人気ドラマ『トッケビ~君がくれた愛しい日々~』(2016)がおすすめです。韓流エンタメナビゲーターの田代親世さんが、「冬のソナタのあと、2007年ごろに起こった第2次韓流ブームから、常に第一線にいるコン・ユさんの、進化するスターぶりを味わってみてください」と、紹介してくれました。
身体を刺し貫いた剣を抜けるのは、トッケビの花嫁だけ
『トッケビ』は、900年以上も生きている不死身のトッケビ(鬼)と、トッケビの花嫁を名乗る現代の女子高生チ・ウンタク(キム・ゴウン)のファンタジックなラブストーリーです。
この前年に大ヒットした『太陽の末裔』の脚本家と監督がタッグを組み、そして再び社会現象を巻き起こしました。
高麗時代、君主に裏切られて非業の死をとげたコン・ユ演じる将軍キム・シンが、身体を刺し貫いた剣のせいで、鬼、トッケビとなってしまう。現代まで老いることなく死を迎えることができずに生き続けている。そしてその剣を抜けるのは、トッケビの花嫁だけ。剣が抜ければ命を終えることができるから、トッケビは自分の命を終えるために花嫁を探し続けているという、おとぎ話のような設定です。
設定はおどろおどろしいが、大人のユーモアいっぱい
キム・シンがようやく、花嫁だという女子高生に出会い、そこに死神(イ・ドンウク)も加わって、3人の同居生活が始まるわけです。
このドラマは、死神とか鬼とか、設定を聞くとおどろおどろしいんだけど、そんな人たちが、くすっと笑ってしまうような言葉をぶつけあいながら、大人のユーモアいっぱいに展開していくというのがミソなんです。
『愛の不時着』と同じで、タイトルやあらすじを聞いた視聴者の予測を、軽やかに裏切ってくれます。韓国ドラマのクリエーターたちの手腕はすごいと、感心させられます。
鬼と死神、男同士のブロマンス
ひょうひょうとした鬼と死神の醸し出すケミストリーがいいんです。男同士のブロマンス。
コン・ユさんが演じているだけで、適度な脱力感がかもし出されてるんですね。私は「カッコいい、たれパンダ」と言っているんですが。なんか、見てるだけで、ふにゃっとなります。
声もしゃべりかたもすごくソフトで。声フェチとしてはたまりません。すごくやさしくて、ぬくもりを感じさせる声の持ち主で。だから、彼がどんなに冷たく突き放してもあたたかい感じがする。
長身のイケメンふたりが、けだるそうなツーショットで
そして、ちっちゃな頭と、しっかりした筋肉の逆三角形の身体。立ってるだけでセクシー。偉そうに見えてナイーブさや、子犬のような可愛さもあって。女性が好きな要素を、あまねく兼ね備えた人なんですね。
しかも、もうひとりの死神役イ・ドンウクさんが、また長身。モデルかっていうふたりが、けだるそうなツーショットでぼやいたり、ロングコートをなびかせたり。ずっこける場面とかっこいい場面を行き来するんです。
ヒットが見込まれることで、お金をかけられた美しい映像
『太陽の末裔』で大成功した脚本家と監督の組み合わせで作られただけに、1話から映画のような美しい映像が続いて、お金かけてるなあと感じます。
ヒットが見込まれる制作陣と俳優だから、回収できるだろうということで、予算も豊富で、クオリティも上がっていく。だから世界市場でもヒットするというスパイラルです。その後の韓国ドラマでも、時空を越えたりする映像のクオリティが、どんどん上がっていきました。
御曹司のカフェオーナーを演じた『コーヒープリンス1号店』
コン・ユさんが最初にブレイクした『コーヒープリンス1号店』(2007)は、第2次韓流ブームを代表するドラマです。
カフェ「コーヒープリンス」のオーナーで、御曹司のチェ・ハンギョルを演じたのがコン・ユさん。イケメンだけを雇うというカフェだったのに、ヒロインは、勝手に勘違いされてお店のスタッフになるんだけど、後から男じゃないと雇ってもらえないということがわかった。でも、生活のために、女だという事実を隠して働き始めます。そして恋が生まれていくんですね。
『冬のソナタ』(2002)を筆頭にした純愛ラブストーリーが、日本の中高年女性を中心に第1次韓流ブームを引き起こしました。清く美しくシリアスなものですね。
その次にやってきたのが、『愛の不時着』でも主演しているヒョンビンさんの『私の名前はキム・サムスン』(2005)を始めとするラブコメでした。第1次ブームのときよりライトなんだけど胸キュンできる。20~30代の女性が入りやすい世界観の作品が、たくさんヒットしました。
「男装する女子もの」の先駆け
『コーヒープリンス1号店』は、男装する女の子というタイプの先駆けにもなりました。
このあと『美男ですね』(2009)『トキメキ☆成均館スキャンダル』(2010)『雲を描いた月明かり』(2016)などのヒット作が次々と出てきます。
第1次ブームのように、純愛ものだけでなく、いろんなドラマが日本に紹介されるようになってきたということでしょう。ヒロイン像のパターンも広がって、清純可憐ではなくても共感を得られるようになっていきました。
コン・ユさんが、「なんでオレって、男のことが気になるんだよ」と、自分の趣向に戸惑いながらも、彼女に対する気持ちが止められなくなっていく過程が笑えて、胸キュンです。
好きな相手をからかったり、怒っちゃったりするという、少女マンガ好きにはたまらないディテールもいいんですよね。
トレンディードラマから、進化し続けて話題映画『82年生まれ、キム・ジヨン』も
かっこよくてトレンディードラマで当たった若手イケメンスターが、進化し続けて、第一線をはって活躍を続けてきているわけです。ヒョンビンさんはもちろん、ソン・スンホンさん、チュ・ジフンさんなどもそうです。みなさん努力家で、どんどん進化しているのが見事ですね。
『トッケビ』のコン・ユさんは、立っているだけでじんわりさせてしまう。そして、ひとたびまなざしに思いをこめると、すごく切ないシーンになります。
ミリオンセラー小説の映画化で話題になり、2020年に日本でも公開された『82年生まれ、キム・ジヨン』でも、主人公の夫役で、いい演技をしています。
ただし、女性が、社会や周りの人々の無理解の中で苦しんでいくというストーリーなのに、コン・ユさんが夫役を演じたのはちょっと微妙だったという声もあるようです。観客が「夫がこんなふうに気づかってくれるなら、幸せなんじゃない?」「夫がコン・ユなら、周りでいやなことがあってもいいわ」と感じて、若干テーマがぼけるという結果になってしまった。コン・ユさんの魅力ならではですね。
ファンミの後には「のどが疲れたんじゃないですか」と気遣いも
2006年、コン・ユさんの初来日ファンミの司会をさせていただきました。すごくまっとうで、サービス精神があるかたでした。
コン・ユさんは、コメントをつけながら映像を流していくビデオDJをやっていたこともあるので、質問に対してふくらませて答えてくれる。クレバーで会話のセンスがあるんです。
終わった後には、「通訳さんも司会のかたも、のどが疲れたんじゃないですか。僕もしゃべる仕事をしていたからわかります」と気遣ってまでくれました。
社会派映画で事件が再検証され「単なる人気俳優ではない」というポジションに
コン・ユさんが除隊した直後、囲みのインタビューに参加する機会がありました。ドラマに出てほしいというファンの皆さんの気持ちはわかっているけど、まず映画から出演したいと答えていました。ファンに配慮しながらも、俳優としてこちらを選びたいと表明していて、きちんと自分の道を進もうとしているなあと感じました。
『トガニ 幼き瞳の告発』(2012)は、ろうあ者福祉施設で行われていた性的虐待事件を題材にした、社会派の作品です。彼が入隊中に原作を読んで映画にしたいと考え、企画を持ち込んで、自ら主演して公開されました。
それが大ヒットし、映画をきっかけに事件の再検証や法律の制定がおこなわれたこともあって、単なる人気俳優ではないというポジションになっていったようです。
美しさも保ちながら、それだけではないものもしっかり身に着けて、韓流エンタメの第一線を走り続けている。スターの王道を示してくれている代表格、コン・ユさんの『トッケビ』をぜひ味わってみていただければと思います。
TOP画像/(c)STUDIO DRAGON CORPORATION
『トッケビ~君がくれた愛しい日々~』U-NEXTにて配信中
取材・文/新田由紀子
田代親世/たしろ ちかよ
韓流ナビゲーター。テレビ・雑誌などで、韓流ドラマを紹介している。会員制韓流コミュニティ「韓流ライフナビ」を主宰。