【目次】
・「億劫」の読み方や意味とは?
・「億劫」と「面倒」との違い
・「億劫」の使い方を例文でチェック
・「億劫」のその他の類語は?
・「億劫」の対義語は?
・「億劫」の英語表現も知ろう
・最後に
「億劫」の読み方や意味とは?
日常生活でもよく耳にする言葉「億劫」。その意味や使い方を解説します。この言葉のおもしろいところは語源。実は、仏教用語にそのルーツがあるのです。
理解の基本となる読み方と意味を、まずはじめにご説明します。
◆億劫の読み方と意味
「億劫」とは、「おっくう」と読みます。面倒で気分が乗らないことを意味する言葉です。「億」の読みは「おく」、「劫」は「コウ」などの読みがありますが、「おくこう」だと読みづらいので、「おっくう」になったと考えられています。
「おっくう」は日常でもよく使う言葉ですね。しかし、もう一つの読み方があるのをご存知でしょうか。実は「億劫」は、「おっこう」とも読むのです。
◆億劫の語源
この「おっこう」が「億劫」の語源と関連しています。「億劫」を「おっこう」と読む場合、それは仏教用語のひとつ。仏教の世界で「億劫」とは、「とてつもなく長い時間」を指します。「億」は、1億円などと使うように大きな数の単位ですね。では「劫」とはなんでしょう。
「劫」は、サンスクリット語の「kalpa(カルパ)」を漢字にしたもので、古代インドで最長の時間の単位です。「一劫」は100年に一度、天女が大きな岩山に舞い降りてきて、羽衣で頂上をなでた摩擦でその岩山が消滅するまでの時間。とにかく、とてつもなく長い時間を指しています。
さらに「億劫」はその1億倍ですから、想像も絶する長い時間を表しています。長い時間がかかることは面倒だ、気乗りしない… ということから、「億劫」という言葉は「面倒で気乗りしないこと」という意味になったといわれています。
ちなみに、現代でも「億劫」を「おっこう」と読んで、「とても長い時間」ということを表しても誤りではありません。ごく稀な例かもしれませんが、覚えておくと安心です。
「億劫」と「面倒」との違い
ここで注意しておきたいことを1つ。「億劫」と「面倒」の違いです。「面倒」とは「手間がかかること」、「わずらわしいこと」を指しますが、「億劫」のように「気乗りしないこと」は含みません。一般的に手間がかかることはあまりやりたくないものですが、「面倒」と言う場合には「手間がかかること」を中心に述べており、「億劫」と言う場合には「気分が乗らないこと」を主に伝えていると考えればいいでしょう。
「億劫」の使い方を例文でチェック
解説が長くなりました。では、具体的な使い方を解説しますね。
1:「周りからうるさく言われて、億劫になる」
「面倒なことに対して、やる気が出ない」ことを表しています。周囲の人からいろいろと言われて、すっかり気乗りしなくなった様子が目に浮かびますね。
2:「こんな夜遅くに出かけるなんて億劫で仕方ない」
夜遅くに呼び出されたことにげんなりし、その気にならない、ということですね。夜遅くに出かけることが面倒(=わずらわしい)で、それに対して気分がのらない、ということです。
3:「気分がなんだか億劫だ」
「億劫」は心情、気持ちを表す言葉ですから、こういった使い方もできます。なんとなく、気力が湧いてこない、というような意味ですね。
「億劫」のその他の類語は?
「億劫」の類語はたくさんあります。いくつかを紹介します。微妙なニュアンスの違いで使い分けができるといいですね。
1:面倒臭い
「億劫」をそのまま言い換えるとすると、「面倒臭い」がいいでしょう。「面倒」なことをするのがいやだ、という気持ちまで一語で表せます。ただし、「億劫」よりも、かなりくだけた印象の言葉なので、職場や目上の人の前などでは言わないほうがいいでしょう。とはいえ、「億劫」もいい印象ではありませんが。
2:物臭
「ものぐさ」とよみます。物ごとを面倒がること、そんな性質の人のことを言います。「彼の態度は本当に物臭だ」と言えば、彼の態度は本当に面倒臭そうだということです。
3:倦怠
「倦怠期」という言葉を聞いたことがあるかと思います。その言葉が指すように「飽き飽きする」「嫌気がさして怠ける」ことです。ほかに、気力がないことを指す「無気力」、面倒がってなまけることを指す「不精」、注意力が散漫なこと「上の空」なども、「億劫」の類語です。
「億劫」の対義語は?
「億劫」の反対の意味を持つ言葉も知っておきましょう。こちらもたくさんありますし、日常でも頻繁に耳にしますよ。
1:ひたむき
1つのことに集中し、一途に取り組むことを言います。「彼女のひたむきな姿勢には心を打たれる」というように使いますね。ほかに、「熱心」「懸命」なども同じように使うことができます。
2:真摯
「しんし」と読みます。真面目で熱心な様子を表します。「真摯な姿勢で取り組みたい」などと言いますね。「精進」「鋭意」なども同様の使い方ができます。
3:刹那
「とてつもなく長い時間」という意味で使う場合の「億劫」の対義語は「刹那」。「せつな」と読みます。極めて短い時間のことを指し、その長さとしては「一瞬」、「その瞬間」くらいにとらえておきましょう。
「億劫」の英語表現も知ろう
では、英語ではどのように表現するのでしょうか。辞書には「troublesome」とありますが、実はあまり使われていません。日常では「drag」「daunting」などがよく使われます。
「It’s a drag to walk my kids on a snowy day.」
「雪の日に子どもと歩くのは億劫だ」と訳すことができます。
「It will be a daunting task.」
「それはきっと億劫な課題になるだろう」というような意味ですね。または、もっとダイレクトに「hate」、~が嫌いと表現してもいいかもしれません。
「I hate asking any favors of my boss.」
「上司に頼みごとをするのは本当に億劫だ」という時に使えますね。
最後に
「億劫」を解説しました。「億劫」と「面倒」の使い分けはできそうでしょうか。また、語源が仏教用語にあったということは意外だったのではないでしょうか。天女が羽衣で岩山をなでるなんて、なんだかメルヘンチックで楽しいですね。言葉には、さまざまな語源があります。正しく使えるようになるとともに、ちょっとした豆知識として語源も知っておくと、話題に困ったときにも役立ちますね。
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