ブルーライトの正体って何?「光の発する色」と「人の体」のつながり〈前編〉
ブルーライトがヒトに及ぼす影響を書こうと思います。「光の発する色」と「人の体」のつながりの話です。意外で面白い、と思いますので少し詳しく解説していきます。ブルーライト(青色の光)が、生き物としてのリズムや睡眠に深く関わることがわかってきています。また、がんや肥満との関係も!? さらには、自殺防止の効果も期待?
まず、色の三原色ってご存じですか? 三原色とは、赤色、青色、黄色のことで、この三色さえあれば混ぜ方の比率を工夫すれば、全ての色が作れるんだ、ということは、絵の具を使って小学校の図工の時間か理科の時間に習ったと思います。
人類は、随分昔から、絵の具の三原色で、画用紙に全ての色で絵が描ける状態を持っていました。有名な画家さんは、絵の具で名画を描いてきています。
今の人類にとって、画用紙というキャンバスに相当する場所と言えば、コンピューターのモニターやスマホの画面。そして、「絵の具」に相当するものが、「光」。人類は、この「新しいキャンバス」に「新しい絵の具」で、自由自在の色を表現したいという「夢」を持ってきました。しかも、省エネで!
この、「夢」の実現の立役者が、LEDという「新しい絵の具」だったのです。LEDは聞いたことがありますか?
光源です。蛍光灯、白熱灯なども光源の一種ですが、LEDは人類史上、最も新しい、そして、省エネの光です。光にも色と同じように三原色があります。赤色、青色、緑色。赤色LEDと緑色LEDは早くから作ることに成功していたのですが、「青色LEDの発明」に長年かかったのです。
LEDで三原色が出せなければ、コンピューターやスマホの画面に、望みの色を表現できません。しかし、1993年、1人の日本人中村修二氏の大発明により、人類はついに、「青色のLED」を手にしたのです。
少し余談になりますが、人類史上、絵の具も「鮮やかな青色」を作るのがすごく難しくて、結局は最後にできた、という話を有名画家が教えてくれました。「青色」は絵の具でも光でも人類が作り出すのに苦労した色なんですね。
LEDで人類が「光の三原色」を手にしたことで、スマホやコンピューターの画面上に全ての色で絵が描けるようになりました。光の三原色を利用すれば、スマホやコンピューターの画面上でありとあらゆる色を表現できるようになったのです。しかも、LEDは他の光源と異なり、極めて省エネ!
人類は、ありとあらゆる、「色」の表現もできるLEDをどんどん取り入れて、「自在の色と省エネ」を手に入れることに成功。こうして、全ての色の表現に、「青色LED」が使われることになったのです。この「青色LED」の放つ「青色の光」が、いま話題のブルーライトの正体です。
スマホ、液晶テレビ、コンピューター画面、ゲーム、さらには、部屋の明かり、信号機、街のイルミネーションなどの多くの光源にLEDが世界中で利用されています。LEDの大普及に伴って、昼夜問わずに、ブルーライトを浴びている現代社会。良くも悪くも、このブルーライトが、ヒトに様々な影響を与えていることがわかってきました。ブルーライトと上手くつきあうことが、現代人の我々の健康を左右するかもしれません。
次回、ブルーライトの功罪を具体的にお話しします。
TOP画像/(c)Shutterstock.com
国立がん研究センター研究所 がん幹細胞研究分野分野長 増富健吉
1995年 金沢大学医学部卒業、2000年 医学博士。
2001年-2007年 ハーバード大学医学部Dana-Farber癌研究所。2007年より現職。
専門は、分子腫瘍学、RNA生物学および内科学。がん細胞の増殖と、コロナウイルスを含むRNAウイルスの増殖に共通の仕組みがあることを突き止めており、双方に効く治療薬の開発が可能かもしれないと考えている。
専門分野:分子腫瘍学、RNAウイルス学、RNAの生化学、内科学。
趣味:筋トレ