ウイルスマニアの“ウイルスコラム”シリーズ vol.2
vol.1:『「ウイルスを除菌してね」この日本語の間違いはどこ!? 実は使ってると赤っ恥… かも』
さて、いきなりですが… ウイルスは生物? 非生物? あなたは即答できますか?
新型コロナウイルスの影響で、自然とウイルスの話をするようになった昨今。ウイルスマニアの自分的には、ある意味苦しい毎日が続いています。
周囲の人々が間違ったウイルスの知識を喋っていると、気になってしまってしょうがないのです。皆さんが恥ずかしい目にあわないよう、今回はありがちなウイルスの誤解をご紹介します。
◆ウイルスは「生き物」ではない
ウイルスは生き物の体に侵入し、そこで体内の色々なものを勝手に利用して増殖します。これだけ聞くと生き物のように思われますが、実はウイルスは「非生物」ということになっています。
これを聞いて、「えッ? そうなん?」と違和感を覚えた方! その感覚は間違ってません。
そう、専門家の間でも生物派と非生物派に意見が割れています。なぜウイルスが生物なのか非生物なのか、ハッキリ言えないのかと言うと、そもそも「生命(生物)」の定義がきっちり定まっていないからです。
◆誰も「生命とは」を説明できていない!?
生命とは何かと聞かれたら、みなさんはどう答えますか?「心臓が動いているもの」とか「成長するもの」とか色々な答えがありそうですね。
その昔、ラドゥ・ポーパ博士という生物学者が、本や雑誌等に掲載された生命の定義を調べたところ、それらしき答えは300以上になったそうです。それくらい生命を定義するのは大変なんですね。
ちなみにある生物学事典には、「生物は生命活動を営むもの。生命は生物の属性」と書かれているのみでした。エクセルの循環参照みたいなことになってます。※PCソフトのエクセルで計算をする時に、自らが自らを参照して起こるエラー。
また、NASA(アメリカ航空宇宙局)では、生命を次のように定義しています。「ダーウィン進化が可能な自己保存的な化学系」… 私にはかなり意味不明で、既に哲学の領域のように響いたのですが、腹に落ちる方いらっしゃいますか?
このような状況下で、取り敢えずの定義として広く浸透している生命の定義は、次の3つです。
【生命の定義(敢えて言うと)】
1. 外界と自分を隔てる膜がある。
2. 自己を複製する。
3. 代謝する。(物質を出入りさせてエネルギーを作る)
◆ウイルスが非生物とされる理由
ウイルスが生物なのか非生物なのか定まらないのは、この生命の定義にバッチリ当てはまらないからなのです。また、これ以外にもウイルスが宿主の細胞の外にいる時に、雪や塩のように結晶化できてしまうことなども、非生物とみなされる理由のひとつとなっています。
がしかし、ちょっと結晶からは話がズレますが、植物の種のことを考えてみてください。種は乾燥した状態だと、まるで「モノ(非生物)」のようですが、水や日光などを与えて芽を出し始めたら、間違いなく「生き物」です。
なんだかそれと似ている気がするんですよね。ソロの状態のときのウイルスは、命の宿っていない「モノ」のようですが、宿主の細胞内にいる時のウイルスは、どう考えても「生物」のように思えてしまう自分です。皆さんはいかがでしょうか。
次回はちょっと怖い「抗生物質(抗菌薬)とウイルス」についてお話します。
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いけのり
最先端のアストロバイオロジーを世界一緩く解説する『YouもMeも宇宙人』(地湧社)著者。一橋大学商学部卒業後、金融会社・楽天市場を経て独立し、オールジャンルでの執筆・編集業などで活動中。独り言サイト「いけのり通信」の更新がライフワーク。