弁護士堀井亜生さんの恋と仕事のスッキリ法律相談 PART11
テレビで人気の弁護士・堀井亜生さん。人間関係トラブルに詳しい堀井さんが、ダメ男、ダメ上司など、Oggi世代の女性たちがハマってしまったトラブルをスッキリ解決する連載です。
第11回目は、大手メーカーで総合職として働く飯塚裕子さん(仮名・32歳・年収480万円)。
前回記事▶︎離婚した夫との慰謝料… 3000万の念書は有効?
◆交際相手がまさかの既婚者… 奥さんから脅迫されています
交際半年になる、3歳年上の私の彼は、エリート銀行員です。去年の11月にニューヨークに一人旅に行ったのですが、そこで出会った彼と交際を始めました。東京に帰ってきてからも、食事に行ったりデートをしたりして、オーソドックスな恋愛をしていました。
彼は海外出張が多く、デートの時間も満足に取れず、会うのは月1~2回程度でしたが、メールで頻繁に連絡を取り合っていたし、仕事の話もできるし、紳士的で、私は運命の人だと思っていました。
付き合いたての頃に、「多忙によるすれ違いが原因で離婚したことがある」と、彼がバツイチであると言われていました。私との結婚については、「またすれ違ってしまうのが怖いのですぐには考えられない」と濁されていましたが、そのうち前向きになってくれるといいなと思っていました。
しかし最近になって、彼と連絡が取れなくなりました。メールも返信がなく、電話をしても折り返しがありません。彼に何かあったのだろうか、勤め先の前で待ってみようかと思っていたら、見知らぬ女性から連絡が来たのです。「彼は私の夫です。不倫はやめてください」という内容でした。
驚きましたが、さらに奥さんは私の勤める会社を調べて、不倫をされたと言い散らしたのです。奥さんに話し合いをしたいと言われたので、都内のカフェで3人で会いました。
奥さんは妊娠中のようでお腹が大きく、怒り心頭といった様子で、いくら私が「彼が既婚者だとは知らなかった」と言っても聞く耳を持ってくれず、さらに「私の夫を盗んだ」とか、「あんたの親兄弟や知り合い全員にばらしてやる、人生を終わらせてやる」とも言われたのです。
私が彼に、「バツイチだって言ってたじゃない」と言っても、下を向くだけで何も言ってくれません。私は完全に騙されていたんだと気付きました。奥さんの怒り方からすると、この先何をされるかわからないので不安です。私はどうしたらいいでしょうか。
◆堀井先生のアンサー!
裕子さんは今、客観的に見て「既婚男性にだまされた上に、その妻から脅迫されている」という状況です。奥さんは、あなたと彼を憎むあまり、復讐のようにあなたの会社に不倫関係をばらしました。
これは名誉棄損にあたる行為で、奥さんには刑事的・民事的な責任が発生します。しかし、警察が動いたり、奥さんから慰謝料を取ったりするというのは現実的にはなかなか難しいでしょう。
一方、会社の方には裕子さんから早めに事情を説明した方がいいでしょう。バツイチであると告げられて交際をしていたことを、メールなどの証拠を示して説明して、当事者間できちんと解決すると言えば、処分はされないと思います。
この件について一番責任があるのは、もちろんあなたの彼であった男性です。あなたは彼に騙されていたので、慰謝料を請求することはできます。ただ、今回のトラブルで最優先なのは、奥さんの気持ちをなだめて、これ以上の報復行為をされないようにすることです。
彼が奥さんに「自分が騙していた、もう裕子とは会わない」ときっぱり言ってくれれば一番早いのですが、彼のこれまでの言動からしておそらくそれは見込めないでしょう。
彼に解決を任せていては事態が悪化するばかりなので、納得いかない部分があるとは思いますが、裕子さんの方から「彼とはもう会わない」とはっきり奥さんに約束しましょう。
裕子さんから彼や奥さんに慰謝料の請求はしない、代わりに奥さんは裕子さんの会社や知人などに交際を言いふらさないというような合意をしましょう。詳しい内容は、弁護士に依頼して奥さんと交渉してもらうとよいと思います。
* * *
このケースのように未婚やバツイチを装って女性に近づく男性は意外と多いものです。多くの場合は奥さんとの生活に不満があるのに離婚できる状況でもないので、外で遊ぶために既婚者であることを隠すのでしょう。この男性もまさにそのタイプ。
こういうタイプの男性は、裕子さん以外の女性ともバツイチを装って交際している可能性が高いです。それが発覚すれば、奥さんも裕子さんへの攻撃をやめてその女性の方に行きますので、裕子さんはできるだけ早くこの夫婦と縁を切ることをお勧めします。
取材/前川亜紀 イラスト/チカツネナオ
弁護士 堀井亜生
北海道出身、中央大学法学部卒。『ホンマでっか!?TV』(フジテレビ系)ほか、各メディア、講演等で活躍。夫婦・男女問題に関するリアルな事例の紹介と解説が好評。著書に『ブラック彼氏 ~恋愛と結婚で失敗しない50のポイント~』(毎日新聞出版)がある。趣味は料理、ピアノ。一児の母。公式サイトはこちら