弁護士堀井亜生さんの恋と仕事のスッキリ法律相談 PART10
テレビで人気の弁護士・堀井亜生さん。人間関係トラブルに詳しい堀井さんが、ダメ男、ダメ上司など、Oggi世代の女性たちがハマってしまったトラブルをスッキリ解決する連載です。
第10回目は、派遣社員の白川真美さん(仮名・32歳・年収240万円)
前回記事▶︎「これって浮気宣言? 彼氏が恋愛相談をしてくる理由は…」
◆夫の浮気により離婚。慰謝料を払う約束が…
結婚4年になる夫が浮気をしました。同い年の夫は守ってあげたい感じの雰囲気の人で、とにかく女性にモテるんです。交際するときも、たくさんのライバルの中から私を選んでくれました。結婚前にも女性に言い寄られて何度か浮気をしそうになっていたのですが、そのたびに私が厳しく言って結婚までこぎつけました。
2年前に子どももできて落ち着いてくれると思ったのですが、最近外泊が多くなったりと様子がおかしくなったので、問い詰めたところ、職場の女性と浮気したと白状しました。夫はその女性と一緒になりたいから離婚したいと言ってきました。
まだ子どもも小さいし離婚したくなかったのですが、彼が「お金はいくらでも払うし養育費もたくさん払うから離婚したい」と言うので、「じゃあ慰謝料は3000万円ちょうだい」と言って、「慰謝料3000万円と慰謝料月50万円を支払います」という念書を書いてもらい、これならいいかと思い離婚届にもサインました。
慰謝料は一括で何とかして払うと言ってくれました。最初の一回は養育費を払ってくれましたが、その後の支払いはありません。3000万円の慰謝料も振り込まれません。夫の年収は700万円ほどなので、払える金額だと思うのですが、どうしたら払ってもらえるでしょうか?
◆堀井先生のアンサー!
結論から言うと、難しいです。まず慰謝料についてですが、合意で取り決めた金額であっても、あまりに高額すぎる場合は、裁判で合意自体が公序良俗違反として無効になる場合があります。3000万円というのは元夫の年収からしても高額すぎるので、裁判で争われたら難しいでしょう。
次に養育費ですが、任意に支払われていれば別ですが、こちらも支払われていない場合に裁判で争われてしまったら、50万円の支払いを認められるのは難しいです。養育費は双方の収入から適正額を決めるので、元夫の年収と大差ない金額である月50万円は認められません。
さらに、元夫が浮気相手と再婚して子どもができたりすると、さらに減額されてしまいます。真美さんのように、ご自分で念書などを書かせて高額な慰謝料を勝ち取ったと思って弁護士のもとにやってくる人はよくいますが、それが法的に有効とは限りません。
元夫は早く離婚したくてその場を収めるために念書を書いただけで、念書を書かせたからといって3000万円が手に入るわけではありません。彼に念書を書かせたときの気持ちを思い出してほしいのですが、彼が収入ぎりぎりの養育費と、それ以上の慰謝料を、どうやって支払ってくれると思いましたか?
何とかして払うと言っていても、少し落ち着いて考えれば、現実的には無理なことだとすぐにわかったはずです。おそらくそのときは離婚を切り出されたショックのあまりパニックになって、自分と子どものためにせめてお金だけでもと思ったのでしょうが、お金を気にするあまり、結果的に損をしてしまったと言えます。
といっても、もう1円ももらえないというわけではないのでご安心ください。離婚後であっても、財産分与や養育費の話し合いはできますので、せめて適正な金額をもらえるように、弁護士に依頼をして話し合いを始めましょう。
取材/前川亜紀 イラスト/チカツネナオ
弁護士 堀井亜生
北海道出身、中央大学法学部卒。『ホンマでっか!?TV』(フジテレビ系)ほか、各メディア、講演等で活躍。夫婦・男女問題に関するリアルな事例の紹介と解説が好評。著書に『ブラック彼氏 ~恋愛と結婚で失敗しない50のポイント~』(毎日新聞出版)がある。趣味は料理、ピアノ。一児の母。公式サイトはこちら