【目次】
・「こだまでしょうか、いいえ、誰でも。」はCMでも話題に
・「こだまでしょうか」には様々なパロディネタも?
・最後に
「こだまでしょうか、いいえ、誰でも。」はCMでも話題に
2011年の東北大震災の後、繰り返し流れたACジャパンのCMたち。「ポポポポ~ン」のフレーズや、「こだまでしょうか」を朗読するCMが世を席巻したことを記憶していますか?
中でも「こだまでしょうか」のCMは震災直後の日本人の傷ついた心を癒したものでした。今回は「こだまでしょうか」について深掘りしていきましょう。
震災後に流れたCMで有名に
先述しましたが、「こだまでしょうか」の詩は震災後に流れたテレビCMで注目を浴びました。この「こだまでしょうか」は、大正末期から昭和初期に活躍した童謡詩人の金子みすゞの代表作となる詩です。CMの筋立てをご紹介していきましょう。
さまざまなシーンでケンカをしている子どもたちのストーリーに合わせて、歌手のUAが「こだまでしょうか」を穏やかに朗読します。最後は、「やさしく話しかければ、やさしく相手も答えてくれる。」というテロップで締め。
震災直後ということもあり多くの日本人にとって、人との絆やつながりについて改めて考えさせられるようなCMでした。
このCMで使われた、金子みすゞの詩の全文をご紹介します。
「こだまでしょうか」
「遊ぼう」っていうと「遊ぼう」っていう。
「馬鹿」っていうと「馬鹿」っていう。
「もう遊ばない」っていうと「もう遊ばない」っていう。
そして、あとでさみしくなって、
「ごめんね」っていうと「ごめんね」っていう。
こだまでしょうか、いいえ、誰でも。
ACジャパンのホームページ内で、「こだまでしょうか」のCM制作担当者は以下のように語っています。
「たった一言で、人は傷つく。たった一言で、人は微笑む。自分がやさしく話しかければ、きっと相手も、おだやかに答えを返してくれる。ことばは、人から人へ『こだま』します。この広告が、人と人のやさしい会話のきっかけになることを願いを込めました」
「こだまでしょうか」のCMは、2011年の第64回広告電通賞 テレビ広告公共部門 優秀賞、第28回2011年ユーキャン新語・流行語大賞 トップ10に選ばれました。
女性童謡詩人の金子みすゞについて
ここまで読んでくると、「こだまでしょうか」の詩を作った、金子みすゞがどんな人だったか、気になりますよね。金子みすゞの生涯を早足とはなりますが、紐解いていきましょう。
金子みすゞ(本名:金子テル)は、1903年(明治36年)4月11日、山口県大津郡仙崎村(現・長門市仙崎)で生まれました。父は清(当時の中国)で書店を経営していましたが、みすゞが3歳の時に亡くなっています。稼ぎ頭を失った一家は、地元で書店を始めました。
みすゞは、10代半ばから詩の創作を始め、20歳ごろから雑誌に投稿するようになります。童謡雑誌に作品が掲載されるようになると、詩人・西條八十(さいじょう やそ)に「若き童謡詩人の巨星」と才能を認められ、若き童謡詩人たちの憧れの星となりました。
23歳で親の勧めにより結婚し、一人娘をもうけますが、夫は女性問題を度々起こし、二人の結婚生活は決して幸せとは言えませんでした。女郎遊びをする夫から淋病をうつされたこともあったほどです。挙句の果てに、自分のことは棚に上げ、「子育てに集中しろ!」と命じられ、詩の創作や手紙を書くことすら禁じられました。
みすゞは夫からうつされた淋病が悪化し、入退院を繰り返していましたが、一人娘だけが生きる支えでした。そして辛い日々に耐えられず、ついに離婚。しかし、当時の社会では、離婚後の子どもの親権は父親にありました。
娘を引き離そうとする元夫に抗い、元夫が「娘を迎えに行く」と言った日の前日、母に娘を託すことを懇願する遺書を書き、みすゞは自ら命を絶ちました。1930(昭和5年)3月10日。26年の短い生涯を閉じたのです。
金子みすゞは、26年の短い生涯の中で512篇の詩を遺しました。代表作は「私と小鳥と鈴と」、「大漁」。金子みすゞのご紹介の最後に、「私と小鳥と鈴と」の詩をご紹介しましょう。彼女の優しく包み込むような瑞々しい感性が伝わってくることと思いますよ。
「私と小鳥と鈴と」
私が両手をひろげても、
お空はちっとも飛べないが
飛べる小鳥は私のやうに、
地面を速くは走れない。
私がからだをゆすっても、
きれいな音は出ないけど、
あの鳴る鈴は私のやうに
たくさんな唄は知らないよ。
鈴と、小鳥と、それから私、
みんなちがって、みんないい。
「こだまでしょうか」には様々なパロディネタも?
「こだまでしょうか」のCMが多く流れていた当時、様々なパロディネタが生まれました。3つを厳選し、ご紹介していきましょう。
◆アニメのパロディ
「『遊ぼう』って言うと『ハーイ!』って言う。
『馬鹿』って言うと『チャーン』って言う。
こだまでしょうか。いいえ、イクラです。」
「こだまでしょうか」と「サザエさん」を組み合わせたパロディです。イクラちゃんが応えている様子が伝わってくるようなパロディですね。
◆芸人のパロディ
「『俺が』っていうと『俺が』っていう。
『俺も』っていうと『俺も』っていう。
そうして、後でさみしくなって『じゃあ俺が』っていうと『どうぞどうぞ』っていう。
こだまでしょうか。いいえ、ダチョウ倶楽部です。」
こちらは、「こだまでしょうか」と「ダチョウ倶楽部」を組み合わせたパロディです。他にも、アンタッチャブルの山崎弘也(ザキヤマ)バージョンや松岡修造バージョンなどが生まれました。
◆カップルの会話パロディ
「『好きです』って言うと『好きだよ』って言う。
『愛してる』って言うと『愛してるよ』って言う。
『ばーかっ』って言うと『ばかっ』って言う。
そのうち言い争って『私の方が好きだし』って言うと『僕の方がもっと好きだし』って言う。
こだまでしょうか。いいえ、バカップルです。」
こちらは、「こだまでしょうか」と「バカップルの会話」を組み合わせたパロディです。仲のいいカップルがしていそうな会話ですね。他にも、キャバクラバージョンや、パリピバージョンがありました。
最後に
いかがでしたか? 2011年に東北大震災が起きた際、被災された多くの方々が味わった悲しみや苦しみを、「こだま」するかのように日本中の人々が共に感じていました。金子みすゞの詩に込められた言葉の力が、傷ついた心に絆を届けてくれたのでしょうね。
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