【目次】
・「いざ知らず」はどんな意味?
・「いざ知らず」の正しい使い方は?
・「いざ知らず」の類義語について
・「いざ知らず」の対義語について
・最後に
「いざ知らず」はどんな意味?
「そんな事情があるとはいざ知らず、…」などというように、会話の中にもよく出てくる「いざ知らず」。「いざ知らず」という言葉の正しい意味はご存知ですか? このページでは正しい意味と使い方、類義語までご紹介していきます。意味や用法を覚えて、日常生活の中で活用してくださいね。
◆「いざ知らず」の意味
「いざ知らず」は、「…についてはどうだかわからないが」、「…はともかくとして」という意味を持っています。この言葉を単独で使うことはなく、「子どもならいざ知らず」というように、必ず「いざ知らず」の前に言葉が入ります。ちなみにこの例文は、「子どもならともかくとして」という意味になりますね。
◆「いざ知らず」の由来
続いて、「いざ知らず」の言葉の成り立ちについてご説明していきましょう。「いざ知らず」の意味を考えると、腑に落ちないところはありませんか? そう感じた方は国語力の高い方と言えるでしょう。
「いざ」という言葉は、物事を始めるときなどに使う「さあ」という意味を持つ感動詞です。例文を挙げるとするなら、「鬼退治へいざ参ろう」というように。そう考えると、「いざ」+「知らず」が「…についてはどうだかわからないが」という意味になることに疑問が生じますよね。
実は、「いざ知らず」は、元々「いさ知らず」という言葉であったとされています。しかし、副詞の「いさ」と感動詞の「いざ」が混同されてしまい、「いざ知らず」となったのです。
「いさ知らず」が使われている、紀貫之の有名な和歌をご紹介しましょう。「人はいさ 心も知らず ふるさとは 花ぞ昔の 香ににほひける」(『古今和歌集』より)。
現代語訳すると、「人の心はさあどうだかわかりません。しかし慣れ親しんだこの土地では、梅の花が昔と変わらずにいい香りを漂わせていますよ」。「いさ… 知らず」で「さあ、どうだろうか」というニュアンスがあります。主に否定的な意味を伝えるときに、使われていたそうです。
「いざ知らず」の正しい使い方は?
それでは、「いざ知らず」という言葉を使うには具体的にどのように表現したらいいでしょうか? 具体的な例文とともに、解説をしていきましょう。
1:「新入社員ならいざ知らず、こんな初歩的なミスをするなんて言語道断だ」
こちらの例文は「新入社員ならともかくとして、長く働いている人がこんな初歩的なミスをするなんてもってのほかだ」という意味になります。「いざ知らず」は、後に続くセンテンスを強調したいときに使われます。
つまり、この例文の場合は「こんな初歩的なミスをするなんて言語道断だ」を強調しているのですね。他にも「幼い子どもならいざ知らず、いい大人が噂に踊らされているなんてみっともない」などというように使います。
2:「一昔前ならいざ知らず、スマホがあるのになんの連絡もしてこないなんて信じられない」
こちらの例文の意味は「一昔前ならどうだかわからないけど、スマホがあるのに連絡をしてこないのはなんで?」。[1]と同じく、「いざ知らず」の後に続く文章を強調しています。この例文からは、“怒り”が通常以上に伝わってきますね。他にも「赤の他人ならいざ知らず、彼の行動は許せなかった」などというように使います。
「いざ知らず」の類義語について
次に、「いざ知らず」と同じ意味を持つ言葉をご紹介していきましょう。
1:「…はさておき」
「…はさておき」は、「別にして」という意味を持つことから、「いざ知らず」の類語です。1つの事柄をひとまず関心外に置くときに使われます。「細かい事情はさておき、結果の報告からしてくれる?」などというように使います。
2:「…は別として」
「…は別として」も、「別にして」ということなので、「いざ知らず」の類語です。「コストのことは別として、人員の確保はできるの?」などというように使います。
3:つゆ知らず
「つゆ知らず」は、「全然知らずに」という意味を持ちます。よってこちらも、「いざ知らず」の類語。「彼が病気だとはつゆ知らず、私はいつも通り能天気に接していたことを後悔している」などというように使います。
「いざ知らず」の対義語について
「いざ知らず」の反対の意味を表す言葉はなんでしょうか? 「いざ知らず」に続くセンテンスは強調されると先述しました。つまり、「いざ知らず」に続く言葉は本題となります。
ですから対義語としては、話が本筋から脱線する際に使われる「余談ですが」や「ついでに」が挙げられるでしょう。
最後に
「いざ知らず」の正しい意味や使い方、類義語をご紹介してきました。日常の会話でもよく出てくる言葉なので、「ニュアンスはわかっているけれど、正確な意味までは把握していなかった」という方も多かったのでは? 今後は正しい意味を掴み、自信を持って会話の中に落とし込んでみてくださいね。
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