メイク落としや洗顔は毎日のルーティン。気持ちよく行いたいものですよね。でも、水が鼻に入ったり、クレンジング剤が目に入ってしまったりすることも…。それが染みて、痛みを感じたことのある女子も多いのでは? 鼻や目に水やクレンジング剤が入って痛みを感じるのには理由があります。
今回は人間がもっている「感覚のメカニズム」について、マンダム 基盤研究所 藤田郁尚先生に伺いました。
そもそも、なぜ鼻や目に水が入ると痛くなるの?
私たちのカラダは60%の水分からできています。カラダのなかの水分には塩分が含まれており、濃度は「約0.9%」。ちなみに、医療現場などで活用されている生理食塩水も同じ濃度です。しかし、洗顔などで使う水道水の塩分濃度は「ほぼ0%」。この塩分濃度の違いが目や鼻の痛みにつながっているのです。
◆痛みが生まれるのは、細胞が膨張するから
鼻の奥や目には痛みを脳に伝える神経細胞があります。この細胞を包む膜は、濃度の低い方から高い方へ移動させてしまう働きをもっています。
そのため、水道水など塩分濃度の低い水が細胞にふれると、細胞を包む膜が内側に水分を通してしまい細胞が膨張。この膨張により、神経細胞にある細胞の感覚センサーがそれに反応して、脳へ「痛い」という情報を送ります。それが、“ツーン”とした独特の痛みなのです。
◆皮膚に水がついても痛くならないのはなぜ?
神経細胞をもつ皮膚に水をかけても痛くありません。それは、皮膚の表面が死んだ細胞である角層で覆われ、表皮内部に埋まっている神経細胞に水分が届かないから。
とはいえ、角層が傷ついたりすると神経細胞まで水分が達することがあります。なので、すりキズを水で洗ったときに染みるような痛さを感じるのは、鼻や目のケースのように細胞に水分が流れ込んでふくらんだ結果、「痛い」というセンサーが反応するのだとか。
ツーンやピリピリの原因は「TRPチャネル」だった!
私たち人間は外部からの刺激を感知する感覚センサーをもっています。これは温度と化学物質を同時に検知できる「TRP(トリップ)チャネル」という細胞の感覚センサーなのです。
人は役割が異なる10種類の「TRPチャネル」をもっているといわれ、そのなかの「TRPV1」と「TRPA1」は痛みに関係するセンサーであることがわかっています。
この「TRPA1」というセンサーこそが、鼻や目に水が入った時に「ツーン」や「ピリピリ」という痛みを起こす原因なのです。
◆ヒリヒリとした感覚を誘発する「TRPV1」
「TRPチャネル」のひとつである「TRPV1」は、熱い温度を感知するセンサーなのですが、同時にトウガラシの主成分であるカプサイシンにも反応するため、トウガラシを食べると、温度が上がっていなくてもヒリヒリと熱い感覚が起きるのです。
◆ツーンとした鼻の痛みは「TRPA1」が反応するから
塩分濃度の低い水道水にふれることで細胞がふくらむと前述しましたが、この細胞の変化を察知するセンサーが「TRPA1」です。鼻に水が入って細胞が膨張すると「TRPA1」が感知し、脳に痛み情報を伝達します。
また、「TRPA1」はワサビの主成分であるイソチオシアン酸アリルやアンモニアにも反応。ワサビやアンモニアなどからの刺激で鼻の奥が“ツーン”となるのは、「TRPA1」が関係しているといわれています。
「TRPチャネル」を活用すれば、プチストレスを軽減できる!?
化粧品を使って、トラブルがあるわけではないけど、ピリピリしたり、チクチクしたり、いやな刺激を感じたことがある人も多いのではないでしょうか。その原因も「TRPチャネル」であると考えられます。化粧品に含まれる成分が、このセンサーを刺激して、「痛み」や「不快な刺激」に繋がるのです。つまり、このセンサーを刺激しなければ、「ピリピリ」「チクチク」しないのです。
マンダムは、この細胞の感覚センサーである「TRPチャネル」の研究を重ね、“刺激を減らして快適に使える”化粧品の開発を進めています。
ヘアカラー製品では、「TRPV1」と「TRPA1」の反応から感覚刺激の度合いをはかれる評価方法を活用。ヘアカラーが頭皮についてしまったときのピリピリとした感覚には「TRPA1」が関係していることを突き止め、感覚刺激を軽減した製品の誕生へとつなげています。
また、鼻に入った水によって細胞がふくらみ、「TRPA1」が反応して痛みを感じる現象は目でも同様に起きます。そのことを応用し、目に染みにくい「クレンジングローション」の開発に成功。プチストレスを感じず、気持ちよくメイクが落とせるようサポートしています。
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公式サイトでは、さらに詳しく感覚のメカニズム説明していますので、気になった方はこちらからどうぞ。
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マンダム 基盤研究所 藤田郁尚(ふじた・ふみたか)
大阪大学大学院 薬学研究科先端化粧品化学(マンダム)共同研究講座 招へい准教授