妊活を始めたら歯科検診! 妊娠前に予防しておきたい歯周病と妊娠の関係
一般的に、妊活を始めたら検査を勧められる項目として、「性感染症」や「子宮頸がん検診」などがあげられますよね、しかし、これらの検査のほかに妊娠とあまりなじみのない「歯科検診」も、妊活前の検診として推奨されていることをご存知でしたか?
今回は少しイメージがわきにくい「歯」と「妊娠」の関係についてみていきましょう。
◆妊娠中は歯のトラブルが起きやすい?
妊娠すると、ホルモンバランスの変化やつわりの影響などによって、虫歯になりやすかったり、歯周病になりやすかったりすることがわかっています。そのなかでも特に胎児に影響があるとされているのが歯周病。
歯周病は、細菌感染によって炎症が起こることにより、歯肉や歯槽骨などの歯周組織が破壊されてしまう病気です。歯周病は、炎症が歯肉にとどまっている歯肉炎と、炎症が歯槽骨・歯根膜まで広がってしまう歯周炎に分類されますが、その中でも妊婦さんに起こりやすい歯肉炎を妊娠性歯肉炎といいます。
妊娠性歯肉炎にかかってしまう理由としては以下のようなものがあげられます。
・ホルモンバランスが不安定になる
・つわりなどによって歯ブラシを口の奥に入れることに抵抗ができ、磨きが不十分になる
・食生活が不規則になる
虫歯や歯周病ができやすい妊娠中はより一層オーラルケアに気を付けなければならない時期なのです。
◆歯のトラブルが胎児に影響する?
歯周病になると胎児にどのような影響をあたえるのでしょうか。
実は、妊婦さんの歯周病には、早産や低体重児出産といったリスクが潜んでいます。
通常、出産が近くなるとプロスタグランジンという物質が子宮で分泌されることによって分娩が始まります。しかし、歯周病にかかっていた場合には、歯周病の炎症を抑えるためにそのプロスタグランジンが作られてしまい、分娩時と同じように子宮が収縮されることによって、結果として早産になってしまう場合があるのです。
また、母体が歯周病を患っている場合、通常の出産よりも低体重児の割合が多くなるともされています。そのため、現在妊活中の方やこれから妊活を始めるという方は、ご自身の歯が健康な状態であるかを知っておくことが大切なのです。
◆妊娠してからの治療はOK?
ではもし、妊娠中に虫歯や歯周病にかかってしまった場合には、治療を受けても大丈夫なのでしょうか?
結論から言うと、基本的に妊娠中の歯科治療は問題ありません。しかし、以下のようなことには気を付けましょう。
X線撮影の際の注意
歯科治療で用いられているX線の放射線量はわずかで、口と子宮の距離も離れているため、おなかの赤ちゃんへの影響はほとんどないとされています。しかし、念のため妊娠していることを伝えて、防護用のエプロンを着用されることをおすすめします。
麻酔の際の注意
歯科治療で用いられる麻酔は使用量もわずかで、局所で分解されるため、胎児への影響はあまりないとされています。しかし、以前に歯科麻酔薬でのトラブルがあった方や、麻酔の危機が悪く多量に麻酔を使った経験がある方は歯医者さんとよく相談してから治療を進められることをおすすめします。
薬の服用に関する注意
一般的に妊娠初期は薬物の服用は避けたほうがよいとされています。妊娠中でも安全に服用できる薬であるかどうか不安な場合には、歯医者さん・薬剤師さん・産婦人科の先生に相談されることをおすすめします。
普段は虫歯ができてから、口の中に痛みを感じてから行かれることの多い歯医者さんですが、将来の為に定期的な検診をされてみてはいかがでしょうか。
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医師 杉山力一
杉山産婦人科院長。不妊治療の名医。日本における生み分け法の権威・杉山四郎医師の孫。
東京医科大学産科婦人科医局では不妊治療・体外受精を専門に研究。その後、1999年より杉山産婦人科勤務。
監修する女性向けアプリ「eggs LAB」では、独自ロジックにより、アプリでの問診で自身の情報を入力することで、これまでにない高い精度での生理日・排卵日予測を実現。不安定な生理周期にも対応した適切なアドバイスや、妊活に関する情報まで、個々の身体の状態にフィットした「あなただけの/あなたのための/今欲しい情報」を発信中。