不調を和らげてくれる漢方薬はセルフケアの強い味方
ちょっとした身体の不調へのセルフケアとして知っておきたいな漢方薬。副作用が少なく、身体の内側から体質を改善して、不調を和らげてくれる漢方薬はセルフケアの強い味方です。しかし、漢方薬も薬の一種。副作用やNGな飲み合わせなど気になることも多いハズ。
そこで今回は、漢方薬とうまく付き合っていく方法を解説します。
【目次】
・【漢方 初心者】漢方ってそもそもどういうもの?
・【漢方】薬、サプリメント、漢方同士の飲み合わせって?
・【漢方】病院で処方してくれる漢方は何が違うの?
・【漢方】2大ブランドは「ツムラ」と「クラシエ」
・【漢方】始めどき、止めどき
【漢方 初心者】買える場所、値段、副作用。漢方ってそもそもどういうもの?
漢方薬とは、古代中国の漢方医学の考え方に基づいて使用される薬のことです。
西洋医学で使用される一般的な医薬品とは異なり、天然成分の生薬が主な原料となります。漢方医学の世界では、様々な症状を改善する効果があるとされる生薬が多く存在し、それらを組み合わせることでよい高い効果を得ることができると考えられているのです。
漢方医学は、それぞれの体質を見極めて、身体の不調の元となる体質を改善していくことに重きを置きます。このため、例えば風邪であれば、のどの痛みを和らげる鎮痛剤や熱を下げる解熱剤を使用する、といった特定の症状にスポットを当てて、治療を行う西洋医学とは根本的な考え方が異なります。
漢方薬はこのような漢方医学に考え方に基づいて生まれた薬であるため、体質そのものを改善しながら諸症状の予防・回復を目指すために用いられます。即効性は高くなく、効果には個人差もありますが、副作用が少なく妊娠中などでも安心して使用することができるため、漢方薬を愛用している方も少なくありません。
しかしながら、漢方薬も「薬」の一種。当然ながら副作用が生じることがあります。一般的な医薬品よりもリスクは低いですが、代表的な副作用としては発疹やかゆみなどのアレルギー症状、吐き気や下痢などの消化器症状などが挙げられます。
一方で、一部の漢方薬は長く服用を続けると高血圧やむくみ、電解質バランスの異常などを引き起こすものもあるため、やはり服用する際には一般的な医薬品と同様に注意が必要です。
また、漢方薬は薬局やドラッグストア、インターネットなどで自由に購入することが可能です。手軽に入手することができるためセルフケアのために愛用する方もいますが、価格は一週間分で2,000~3,000円が相場。決して安くはありません。
医療機関で漢方薬を処方してもらうこともでき、保険適応となる場合には費用は3割負担と安く購入することができます。
【漢方】薬、サプリメント、漢方同士の飲み合わせって?
市販薬・漢方薬・サプリメントは基本的に飲み合わせを行っても問題となることはありません。しかし、次のような点にだけは注意しましょう。
血をサラサラにする薬(ワーファリン)とビタミンK
不整脈などがあり、身体の中で血液が固まりやすく脳梗塞や血栓症を起こしやすい状態の方は血液をサラサラにする薬の服用を続けていかなければならなくなります。
血液をサラサラにするタイプの薬には様々なタイプのものがありますが、「ワーファリン」と呼ばれるものはビタミンKを取り過ぎると効果が増大する性質があります。それにより、出血しやすくなって脳出血などの重大な副作用を引き起こすことも…。
サプリメントにもビタミンKが含まれているものは多くありますので、ワーファリンを服用中の方がサプリメントを使用する際には医師や薬剤師に相談すると安心です。
複数の漢方薬と肝臓の薬
漢方薬の代表的な成分の一つである「甘草」(かんぞう)には体内に水分をとどめて高血圧やむくみを引き起こす作用があります。
甘草は思いの他多くの漢方薬に含まれているため、いくつかの漢方薬を組み合わせて服用していると知らず知らずの内に甘草を摂り過ぎていた… ということも少なくありません。漢方薬を飲み合わせるときは成分に十分注意しましょう。
また、甘草は漢方薬だけでなく、肝臓や胃腸の薬、サプリメントなどにも含まれることがあります。これらの薬を服用中はできるだけ甘草が含まれた漢方薬は飲まないようにしましょう。仕方なく組み合わせて飲む場合であっても、血圧はこまめにチェックし、体調の変化を感じた場合はすぐに使用を中止して医師の診察を受けることも忘れずに!
【漢方】病院で処方してくれる漢方は何が違うの?
漢方薬は医薬品の一種であるため、病院で医師から処方してもらうこともできます。現に、PMSなどの病気では学会が推奨する治療方法として漢方薬の使用が挙げられるケースも少なくありません。
現在、日本では130種類以上の漢方薬が健康保険を適応して医療機関で処方できることになっています。
医療機関で処方される漢方薬と市販の漢方薬は基本的に含まれる成分や配合は同じであり、メーカーによって剤形やフレーバーなどが異なるものもありますが、同一のものと考えてよいでしょう。
しかし、「治療」に必要な漢方薬であれば保険適応で3割の自己負担のみで購入することができるため、経済的なメリットは大きいと言えるでしょう。長く漢方薬を服用している方は医療機関に相談してみるのも一つの方法です。
【漢方】2大ブランドは顆粒の「ツムラ」と粉薬の「クラシエ」
漢方薬には様々なメーカーのものがありますが、現在日本で主に流通している漢方薬といえば「ツムラ」と「クラシエ」のものです。
特に「ツムラ」は漢方薬市場の8割を占める老舗で、最も多くの種類を製造・販売しています。また、安全性を重視した原材料の使用や製造方法を確実に維持するためそれぞれに厳しい基準が課せられています。
なお、「ツムラ」の漢方薬の剤形は顆粒であり、独特な味や舌触りが苦手という方も少なくありません。そのような方には薬を味合わずに包んで服用できるオブラートを活用するのがおすすめです。
一方、「クラシエ」は「ツムラ」に次ぐ市場規模を誇り、こちらも品質の高さをキープするため製造方法に厳しい基準が定められています。
「クラシエ」の漢方薬の剤形は細かい粒状の粉薬です。このため、「ツムラ」の顆粒よりも苦みなどを感じにくいという方も多くなっています。また、種類によっては錠剤や顆粒タイプのものも販売されています。
【漢方】いつが「始めどき」? いつが「止めどき」?
漢方薬を服用するにあたって、悩むことが多いのは「始めどき」と「止め時」ではないでしょうか?
漢方薬は不快な症状を即座にピンポイントで改善する薬ではなく、身体の内側から体質を改善することで不快症状の予防や回復を目指す薬です。
このため、「今、現在」痛みや発熱があるといった場合は漢方薬よりも一般的な薬を利用した方がよいと考えられます。
一方、何となく体がだるい、疲れが溜まりやすい、生理前になると体調がわるくなる、といった漠然とした不調がある方は漢方薬がおすすめです。本格的に強い症状が現れる前に飲み始めましょう。
また、漢方薬は副作用が少ないとはいえ、薬の一種。服用を続けると思わぬ副作用に襲われる可能性がゼロではありません。しかも漢方薬の効果には個人差があり、服用を続けて体調がよくなったという方もいれば全く効果を感じられなかったという方もいます。明確な期間がきめられているわけではありませんが、一ヶ月服用を続けても症状の改善が見られないときは、一旦服用を中止して、医師や薬剤師に相談するようにしましょう。
反対に、漢方薬の服用を続けて症状が改善した場合は服用をやめることも可能です。風邪のように一時的な体調不良に対して漢方薬を使用していた場合は即座に中止しても問題ありません。が、慢性的な不調のため、長く服用を続けていた場合は、突然服用を中断するのではなく、少しずつ薬の量を減らして様子を見ながら最終的に服用を中止するようにしましょう。
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成田亜希子先生
一般内科医。プライベートでは二児の母。
保健所勤務経験もあり、医療行政や母子保健、感染症に詳しい。
国立医療科学院などでの研修も積む。
日本内科学会、日本感染症学会、日本公衆衛生学会所属。