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2020.02.05

あなたの脳は正義に溺れた「正義中毒」という依存症に陥っているかも?

「他人の言動が許せない」と「自分は絶対に正しい」と思い、他人を許せなくなる状態は「正義中毒」。これを乗り越えるには? 脳科学者 中野信子さんに伺います。

有名人の不倫スキャンダル、飲食店のアルバイト店員の悪ふざけ動画、大手企業の差別的な表現のCMなどに強い怒りや憎しみの感情が湧くのは…

知りもしない相手に非常に攻撃的な言葉を浴びせ、完膚なきまでに叩きのめさずにはいられなくなるのは、なぜ?

「間違ったことが許せない」「間違った人を徹底的に罰しなければならない」「私は正しく、相手が間違っているのだから、どんなひどい言葉をぶつけても構わない」そんな風に思うことは誰にもあるかもしれません。

しかし、それは「正義中毒」であると脳科学者の中野信子さんは言います。ではなぜ人のことを許せなくなるのか? それが起こる脳の仕組みや「正義中毒」から自分を解放する方法についても中野さんに伺います。

(c)shutterstock.com

人は誰しも「許せない」が暴走する状態に、簡単に陥ってしまう性質を持っている

人の脳は、裏切り者や社会のルールから外れた人など、わかりやすい攻撃対象を見つけ、罰することに快感を覚えるようにできています。

他人に「正義の制裁」を加えると、脳の快楽中枢が刺激され、快楽物質であるドーパミンが放出されます。この快楽にはまってしまうと簡単には抜け出せなくなってしまい、罰する対象を常に探し求め、決して人を許せないようになるのです。

見方を変えると、誰かを許さないことで自己を肯定したい、自分の正しさを認めてもらいたい、という欲求の裏返しにも見えます。

–−その一方で、「人を許せない自分」を許せない苦しみがある

自らの正義を主張する快楽を知りながらも、同時に相手を罵ってしまう自分、相手を許せない自分を許せないと感じるところがあります。

人を許せないという感情の発露には、脳の仕組みが大きく関わっています。許せない自分を理解し、人をより許せるようになるためには、脳の仕組みを知っておくことが有用であり、これは、自分とは考えの異なる他者をどうすれば理解できるのかを考えることと同じです。この「なぜ私は、許せないと思ってしまうのか」を知ることが穏やかに生きるヒントになります。

正義中毒の犠牲者となる人の基準は、国や地域によって大きく異なる。日本の場合は?

日本人は、摩擦を恐れるあまり自分の主張を控え、集団の和を乱すことを極力回避する傾向の強い人たち。災害の多さという地理的要因と閉鎖的環境により、日本では個人主義的な性質が強い集団よりも集団主義的要素が強い集団が生き延びやすかった背景があります。

江戸時代、国土をギリギリまで食料生産のために使っても、最大限維持できる人口は3000万人超のレベルで、ひとたび自然災害が起きてそのバランスが崩れると、あっという間に100万人単位の命が失われるような限界寸前の状況でした。こうした状況では、良し悪しにかかわらず協働して困難を乗り切る集団主義的戦略が最適であり、集団の考え方に背くことが社会全体の深刻なピンチを招きかねないという思考を誰もが無意識に採用していました。

その負の側面として、異質なものを冷遇し、集団内に置いておけなくなった人間を排除する現象、あるいは他の集団に対する攻撃性が出てしまいやすい傾向にあります。

–−議論ができない日本人

集団の意思に従いがちな日本では、基本的に議論が行われるケースが少なく、多くの人が議論下手か、議論を避けるようになっています。日本人が議論だと思ってしていることは、対立する二つの意見を吟味・検討してより良い結果を導くというものなどではなく、なぜかたいがい人格攻撃になっています。特に「正義中毒」の人々は、相手の主張のいいところを取り入れるということができません。結局、正義が一つしかないという前提があるために、彼らの言説は、議論に昇華する余地を持たないのです。

(c)shutterstock.com

そもそも人間の脳は誰かと対立することが自然であり、対立するようにできている

–−人が人を許せなくなるのは、脳の仕組みにある

いったん愛し合って結婚したはずの夫婦が、「性格の不一致」を理由に離婚していきます。実は惹かれるのも「互いが不一致だから」こそ。つまり、合わないことこそが楽しかったはずなのです。そもそも人間は、自分自身のことですら理解できず、自分を100%好きになることも難しいものです。それが他人となればなおさらです。たとえ夫婦であろうと、適切な距離や愛着のレベルが存在していて、そこに過不足があると、途端に不一致が粗として感じられるようになってしまいます。これは異なる国、異なる文化でも同じかもしれません。

人は本来、自分の所属している集団以外を受け入れられず、攻撃するようにできている

自分の属する集団を守るために、他の集団を叩く行為は正義であり、社会性を保つために必要な行為と認知されます。攻撃すればするほど、ドーパミンによる快楽が得られるのでやめられなくなります。自分たちの正義の基準にそぐわない人を正義を壊す「悪人」として叩く行為に、快感が生まれるようになっているのです。

バイアス(偏見)は脳の手抜き

人間は誰でも、どんなに気をつけていても、集団を形成すれば仲間をその他の人より良いと感じる内集団バイアスをもつものです。するとグループ外の集団に対しては、バカなどというレッテルを簡単に貼り付けてしまうのです。

グループ外の人々をあれこれ細かいことを考えず、一元的に処理できるのは、脳がかける労力をという観点からは、コストパフォーマンスが高い行為です。個々に歴史や独自の考え方など様々な違いがあり、本来はその一人ひとりに対して丁寧に判断をしていく必要がありますが、このバイアスが働くと、手間をかけずに一刀両断できるのです。

ネット社会は確証バイアスを増長させる

SNSでは似た者同士で繋がることが多く、自分と同じような思考をするグループから、自分が欲している情報だけを取り入れ、受け取るようになります。日々、それを繰り返しているといつの間にか自分は正しい、自分の主義こそが正義だ、これが世の中の真実だと考えるように仕向けられてしまいます

インターネットの世界でのビジネスでは、ネットユーザーたちに「クリックしてもらう」ためにユーザー全体の好みを分析した情報をベースに、個々の検索の傾向を収集し、それに合わせて関心のありそうな情報や広告を提供します。

ユーザー本人としては毎日ネットの世界と接し、新しい情報を補給しているつもりが、自分の嗜好をもとに構成された、自分好みの偏った情報が示されているだけなのです。ネットで新しい知識を得た、新しいニュースを知った、と思っていても、実はそれはフィルターにかけられた情報ばかりで、自分の世界は非常に限定的であるかもしれないということを、意識する必要があるでしょう。

加齢が脳を保守化させる

どのような相手に対しても共感的に振る舞い、人間として尊重し、認めていくという機能はとても高度なもので、前頭葉の眼窩前頭皮質という領域で行われています。ここは25〜30歳くらいにならないと成熟せず、さらに、しっかり発達させるためには相応の刺激(教育)も必要になります。また、重要な部分なのに、アルコール摂取や寝不足といった理由で簡単に機能が低下してしまいます。しかも得られるまでには人生の1/3近い時間がかかるのに、その機能が衰えてしまうのは早いのです。

老人が相手に有無を言わせず、自分の理論だけを信じて、直情径行的に行動してしまうのは、前頭葉の背外側前頭前野が衰え、脳が老化したから保守化したことが疑われるのです。ここでいう保守化は、自分が元々もっていた思想の傾向が、より純化され、それ以外の意見は自動的に棄却される確証バイアスが働いて、さらに思考が硬直化していくイメージです。

(c)shutterstock.com

正義中毒の快感と苦悩

正義中毒にかかり他人を糾弾して快感を覚えている人も、ふと自分のほうが本当は間違っているのではないか、自分の正義に反する相手にバカという言葉をぶつける自分自身は「正しくない」のではないかなどと、自ら省みて傷つくような、矛盾した感情を抱くことがあります。

これも脳の機能の一部で、他者を攻撃することによって、脳も何らかのネガティブフィードバック(ここでは、怒りや攻撃性を誘発するホルモンの分泌を抑制すること)を受けることがあるのです。もしも同じ状況でもポジティブフィードバック(さらにホルモン分泌を促進すること)を受けるのであれば、互いに制御が利かず、そこら中で乱闘や戦争がおきてしまうことでしょう。

相反する思いが脳に同居する科学的な理由の仮説として、ひとりの個人の中に多様な(時には矛盾する)価値観が共存することが、環境の急激な変化や新しい価値の台頭に一世代で対応できるという可能性を保持する基盤になるのだ、という解釈ができます。こうすることによって、遺伝的な資質に頼らずとも環境の変化に鋭敏に合わせた生存戦略の速やかな変更ができるわけです。

「昔はよかった」は脳の衰えのサイン「正義中毒」から自分を解放する方法とは?

1.「なぜ、許せないのか」を客観的に考える

まずは自分が正義中毒状態になってしまっているのかどうかを、自分自身で把握できるようになることがとても重要です。

「このテレビ番組は馬鹿馬鹿しい」「◯◯党は許せない」「最近の若い連中はなっていない」などの怒りの感情が沸いた時は、その感情を増幅させてしまう前に一呼吸おいて、「自分は今、中毒症状が強くなっているな」と判断するようにします。

2.老けない脳をつくる

・慣れていることをやめて新しい体験をする
いつもと違う道順で歩く。いつものメニューやいつもの店を変えてみる。

・不安定・過酷な環境に身を置く
あえて不安定な、過酷な環境に身を置く。マインドフルネスを実践する。絶対に読まない本、関心のない本を手にとる。ネットではあえて興味も関心もないキーワードを検索したり、普段は見ないようなニュースや記事を積極的に閲覧する。

・安易なカテゴライズ、レッテル貼りに逃げない
・余裕を大切にする
リソースを振り返る余裕がない自分の状況を少しは見直し、自分の頭で考える、前頭前野を働かせる余裕をつくる。通勤時間を短くする。

3.食事や生活習慣で前頭前野を鍛える

・食事
前頭前野の働きをできるだけキープするためには、オメガ3脂肪酸(不飽和脂肪酸)の積極的な摂取が必要。サケ、マス、マグロ、イワシ、ブリ、サバ、サンマなど青魚と言われる魚の油や、カキなどの貝類、クルミなどのナッツ類、えごま油、亜麻仁油など。

・睡眠
睡眠不足は、一時的でも習慣的でも脳にとっては良いものではありません。隙間時間を見つけて少しでも睡眠を稼ぐことがおすすめ。

「正義中毒」を乗り越えるには

人を許せない自分や他者、相手をバカにしてしまう自分や他者の愚かさを人間なのだからしょうがないと諦めること。常に自分を客観的に見る習慣をつけていく(メタ認知)が鍵!

***

さらに詳しい「正義中毒」という依存症については中野信子先生の最新刊「人は、なぜ他人を許せないのか?」(アスコム)で紹介されています。

脳科学者、医学博士、認知科学者 中野信子

1975年、東京都生まれ。脳科学者、医学博士、認知科学者。
東京大学工学部応用化学科卒業。東京大学大学院医学系研究科脳神経医学専攻博士課程修了。フランス国立研究所ニューロスピンに博士研究員として勤務後、帰国。脳や心理学をテーマに研究や執筆の活動を精力的に行う。科学の視点から人間社会で起こりうる現象及び人物を読み解く語り口に定評がある。
現在、東日本国際大学教授。著書に『世界で活躍する脳科学者が教える! 世界で通用する人がいつもやっていること』『脳はなんで気持ちいいことをやめられないの?』(アスコム)、『サイコパス』『不倫』(文藝春秋)、『シャーデンフロイデ』(幻冬舎)、『キレる!』(小学館)など多数。また、テレビコメンテーターとしても活躍中。


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