「自分の仕事を細分化」して得意分野を磨くほうが、唯一無二の仕事を生み出せる!
仕事で「しんどい」と感じると、ふと「今の職業って自分に向いているのだろうか」と思わされること、ありませんか? 同期のあの子は頭角を現しているのに自分ときたら… とか、はつらつと仕事に取り組む気持ちになれない… など、二進も三進もいかない状況を打破する考えとは。
江戸時代に遡ってみると、実は今よりも職種が多かったといわれているのをご存じですか? たとえば、日本刀ひとつとっても「刀工」「鞘(さや)師」「鐔(つば)師」「金工(きんこう)師」といった具合に、部品ごとに職人がいました。
現代はというと、大量生産で工程を簡略化する傾向にありますし、これからもAIに仕事がまわるなどして、職種はますます少なくなってゆくのではないでしょうか。そう考えると、仕事を選ぶ幅というのも当然、狭まってきます。
昔に比べて、現代のほうが実は職業選択の幅は狭まっている、というのが僕の実感です。その狭いバリエーションの中に自分を無理に当てはめなければならないのですから、その息苦しさは万人がどこかで感じていてもおかしくはないのです。
そこで、みなさんの携わっている仕事を、もうワンランク細分化してみることをおすすめしています。伝票処理、スケジュール管理、営業、企画立案、交渉… など、ひとつの仕事にもいろいろな業務がありますね。それをジャンル分けしてみてください。きっと5つくらいには区別できるはずです。
そうしたら、自分で自分の通知表をつくる気持ちで採点しましょう。すると、自分の得意なものとまでいかなくても、好きな分野が見えてきます。そうしたら、意識してそこを伸ばしてみるのです。日本人は苦手だったり、嫌いな部分に目が行きがちですが、「ここは得意・好き」という部分を意識して広げてゆくと、意外に仕事の見え方、自分の見え方が変わってきます。
僕の場合、勤務医時代に苦手だったのは書類。特に精神科では人権も深く関わってくるので複雑な書類があり、仕上げるのに時間がかかって。一方、好きだったのはさまざまな危機介入、トラブル処理でした。現場での事件にどう対応するかは大変でしたが、その分「よっしゃ!」と血も騒いだのです。そういう好きな部分を伸ばしたことで仕事が楽しくなり、結果、周囲からも少しは重宝してもらえたかもしれません。
はっきり言うと、仕事に向き不向きはあります。しかし、それで自分は向いていないから、「転職だ!」となってしまうのは少しもったいない。自分の欠けているところを補うことも大事ですが、完璧を目ざすのではなく、好きなものに磨きをかけてみるのも有効な一手です。そうしてゆくうちにまず自信が蘇ります。
自分自身を自分が認められること、これが仕事のリズムを取り戻す上で重要なポイントなのです。もちろん無理は禁物ですが、向いてないと思った仕事も、こうして整理して考えると、意外に捨てたもんじゃないと思えるかもしれません。
2019年Oggi2月号「名越康文の奥の『ソロ』道」より
イラスト/浅妻健司 構成/宮田典子(HATSU)
再構成/Oggi.jp編集部
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名越康文(なこし・やすふみ)
1960年、奈良県生まれ。精神科医。臨床に携わる一方で、テレビ・ラジオでコメンテーター、映画評論、漫画分析など幅広く活躍中。著書に『SOLO TIME 「ひとりぼっち」こそが最強の生存戦略である』(夜間飛行)ほか多数。