ひとりになれるソロ旅こそ、自分を覚醒モードへシフトさせる!
旅、特に〝ひとり旅〟にはみなさんが思っている以上に、リフレッシュ効果があります。なぜ「思っている以上」と言ったかというと、きれいな景色を見たり自然に触れて癒される以上に、旅は日常のなかで眠りこけている感覚を目覚めさせてくれるからです。
私たちの日常は、ある意味、ルーティンで回っていて、その行動はいちいち心で確認せず、いわば自動操縦で行った方が能率的なのです。ですから当然、惰性で生きることになり、自分の意識は半分眠った状態(=半睡眠)に陥ってしまいます。
日常の私たちは、職場や家族、仲間などの群れの中にいますから、どうしても周囲の価値観に流されてしまいがち。実は、日常、人間が自分で決定していることなんて1割もないのかもしれません。
日々、無表情にこなしている流れ作業を止めて見えるもの
ところが、ひとり旅に出ると「何時に起きよう」「何を食べよう」「午後はどこに行こう」と、常に自分自身に問いかけるので、楽しみながら半睡眠モードからパッチリ覚醒モードへとシフトできるのです。
仕事や家庭でやるべきことに追われていると、流れ作業的に物事をやりすごしてしまいがち。無表情にタスクをこなすだけの日々では、しだいに心の能力、つまり発想力や理解力が衰えてしまいます。そうなると、自分はたいしたことない人間だと思ったり、だるくてやる気が出なかったり、他人や物事への関心も薄まりがちに…。鈍感になった心身を覚醒させてくれる旅で、自分の基準点を変えてあげましょう!
すると、本当の自分ってこうだったんだと気づくはずです。初めて訪れる場所、しかもひとり。考えただけでもワクワクしてきます。こういう場所に出向くだけで、心はいろいろなことを繊細に感じ取れるモードになり、いつもは見落としているモノ・コトに敏感になります。
「自分ってこんなに芸術に感動できるんだ」「こんなに動けるんだ」「アイディアが湧きやすい」など、本来自分の中に眠っている潜在能力が復活して、それが本物の自信に繋がっていく。そうすると、何かをしてみようという気持ちになります。
自分は今どこにいたいか? 心の声に耳を澄ます
それは仕事にも言えること。最近では、必ずしも会社で仕事をしなくてもいいという風潮が高まってきています。それは効率面で考えても合点がいきますし、最高のパフォーマンスを発揮できる理想の環境を自分で選べる、ということでもあります。
旅をするときも「何をしたいか」より、「自分が今どこにいたいか」に従うほうがいい。意外に、ここを逆に考える人は多いです。自分がいたい場所にいれば、その場が自分と共振して自然に感性が蘇り、何をしたいかも思い浮かんでくるからパフォーマンスだって上がるのです。
群れとの距離感を上手に保ちながら、自分を移動させる技術を磨く。ちょっと勇気を出して、ソロ旅に出かけてみましょう。
2018年Oggi8月号「名越康文の奥の『ソロ』道」より
イラスト/浅妻健司 構成/宮田典子(HATSU)
再構成/Oggi.jp編集部
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名越康文(なこし・やすふみ)
1960年、奈良県生まれ。精神科医。臨床に携わる一方で、テレビ・ラジオでコメンテーター、映画評論、漫画分析など幅広く活躍中。著書に『SOLO TIME 「ひとりぼっち」こそが最強の生存戦略である』(夜間飛行)ほか多数。