〝ソロ活動〟を上手く人生に取り入れて、AIにはない感性を磨こう!
僕の心理学講座には各世代の方がいらっしゃいますが、中でも、毎回参加してくださる方たちがいます。僕の講座なんて明確な単位やカリキュラムもないし、資格がもらえるわけでもない。どうしていつも来てくれるんだろう…。ありがたいことですが、ふとそう思ったのです。
すると講義が終わった後、彼らは僕そっちのけで(笑)、講義内容についてのディスカッションをしているではないですか。「◯◯さんの性格が理解できた」「上司とはこう向き合えばいいかも」など、実生活に照らし合わせて、侃々諤々(けんけんがくがく)と、時折笑いを交えながら白熱しています!
参加当初は講座内容が難しいと感じても、次第に興味が広がってもっと知りたくなり、理解できると俄然楽しくなる。 僕の個人的な見解ですが、今は「すぐにわかりたい人」が多くなっていると思います。わからないことがあれば、ネットでそれなりの答えが見つかる時代。便利にはなってきたけれど、自分で考える、答えを探すことが少なくなってきているような気がしています。
小さな気づき、個々の感性に響くものについて、深く追求せずにネットやほかの情報でなんとなく知的好奇心を満たしてしまう。本当なら、僕の講座に来てくれる参加者のように、「どうしてだろう」と理解を掘り下げることで「わかる喜び」を知ることができるのに。
実は生きるって、それ自体が学びです。たとえば、乳児は何回も尻餅ついて、つかまり立ちして… を繰り返して次第に歩けるようになりますよね。人生の始まりから、私たちは学びの連続なのです。人間は日々、自然に学んでいくようにプログラミングされている生き物なんですね。
大人になってからも同じことで、好きなことを見つけると試行錯誤を繰り返して、学びを重ねていける。そして、その達成感で僕たちは次へと進めるのです。僕たち大人は、なんでも便利になった一方で、他人のことを気にしすぎて、自ら何かに取り組んだり考えること、つまり「学びたい」という本来の欲求を抑え込んでしまっていると思うのです。
〝学ぶ楽しさ〟はひとりで育む感性から!
ネットやAIが台頭している今、僕たちは学ぶ楽しさを忘れないためにも、人間にしかできない部分をもっと見つめ直さないといけない! そのためには「ひとりの時間」の中で感性を磨くことが肝心で、他人と群れていてはその集中力は決して出ないのです。今は「情報ではなく感覚」「モノではなく体験」が求められる時代。
雑誌を読むにしても、「流行っているお店」「今トレンドの服」と、情報だけをすくうのではなく、実際にひとりで足を運んで自分の感覚と合うか試してみたり、手持ちの服と何を合わせるのが今どきか考えてみる。
そうするとトレンドが自分なりに消化できたり、おしゃれの幅も広がるはずです。わかる喜びを知って、楽しみながら学ぶ。そんな〝ソロ活動〟を上手に人生に取り入れることができたら最高です!
2018年Oggi6月号「名越康文の奥の『ソロ』道」より
イラスト/浅妻健司 構成/宮田典子(HATSU)
再構成/Oggi.jp編集部
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名越康文(なこし・やすふみ)
1960年、奈良県生まれ。精神科医。臨床に携わる一方で、テレビ・ラジオでコメンテーター、映画評論、漫画分析など幅広く活躍中。著書に『SOLO TIME 「ひとりぼっち」こそが最強の生存戦略である』(夜間飛行)ほか多数。