「月経前症候群」とも呼ばれるPMS
女性は月経前の数日間、精神的・身体的に様々な不調が生じます。その不調を総じて「PMS」と呼びますが、症状には程度があり不調が強く出てしまい、中には日常生活すらままならなくなる… という女性もいます。
ホルモンバランスの乱れが原因だから仕方ないと思っている人も多いでしょう。しかし、そんな辛いPMS症状は漢方で改善することがあります。
【目次】
・PMSに効く漢方って?
「PMS」に効く漢方って?
そもそも「PMS」とは
PMSとは、生理に伴うホルモンバランスの変化によって、生理前に3~10日ほど続く様々な不快症状を引き起こす病気です。
女性ホルモンにはエストロゲンとプロゲステロンと呼ばれる2種類があります。このうち、エストロゲンは生理が始まると徐々に分泌量が増え、卵子と子宮内膜を成熟させ、排卵を促す作用も持ちます。
一方、プロゲステロンは排卵が起こった頃から分泌量が増え、子宮内膜を着床しやすい環境に整える働きがあります。しかし、排卵後二週間ほどしても着床が起こらない場合は、エストロゲンとプロゲステロンの分泌量が急激に低下し、成熟した子宮内膜が剥がれ落ちる「生理」が引き起こされるのです。
このようなエストロゲンとプロゲステロンのバランスが変化するのは健康な性周期の証拠であり、女性であれば避けて通れないものです。
しかし、生理前にこのようなエストロゲンとプロゲステロンの急激な分泌バランスの変化は脳内のホルモンや神経伝達物質などに異常を引き起こすと考えられており、それがPMSの原因とされています。
PMSの代表的な症状
PMSの症状は多岐に渡り、抑うつ・イライラ・不安・情緒不安定などの精神的な症状、めまい・食欲不振・のぼせ・倦怠感・乳房の張りなどの身体的な症状が生じます。
PMSに対する一般的な治療法
PMSを改善するには、女性ホルモンの変化を少なくする経口避妊薬(ピル)の内服や、それぞれの不快症状に対する対処療法がメインです。しかし、妊娠を希望している女性や通院の時間がない女性にとって、これらの治療はやや敷居が高いと言わざる負えません。
そこで、便利なのがドラッグストアや薬局、インターネット通販などで手軽に購入できる漢方です。漢方の効き目には個人差があるとされていますが、症状に適したものを服用すれば大きく改善することも少なくありません。
PMSにおすすめの漢方は症状によって選択を
漢方でのPMS治療は、「子宮や卵巣などの骨盤内臓器の血流変化」「女性ホルモン量の変化によるむくみ」を改善することに焦点を当てています。
PMS症状の現れ方は人によって異なり、それぞれに適した漢方を選択する必要があります。
桂枝茯苓丸(けいぶくりょうがん)
PMSに用いられる漢方として非常にポピュラーなものです。
生理不順や生理痛、更年期障害、肩こり、めまい。頭重感などの症状を改善するとされています。
桃核承気湯(とうかくじょうきとう)
生理不順、生理痛などを改善し、女性ホルモンの変動による精神的な症状、頭痛・めまい・肩こり・便秘などの身体的な症状を改善する効果もあるとされています。
当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)
冷え性や貧血気味の人に対して生理不順、生理痛、更年期障害などを改善し、めまい・頭重感・肩こり・手足の冷えなどを改善するとされています。
五苓散(ごれいさん)
むくみを改善する作用を持ちます。生理前のむくみにも効果的です。
加味逍遙散(かみしょうようさん)
イライラ感が強い人に対して、生理不順、生理痛、更年期障害、冷え性などを改善するとされています。
半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう)
抑うつ状態や過度な不安を改善する作用を持ちます。PMSの精神的な症状にも効果があるとされており、特に動悸やめまい、吐き気などを伴う女性に良いとされています。
ここでご紹介した漢方はごく一部にすぎません。他にもそれぞれの症状に適したものは多数あります。
PMSに悩んだ時に漢方を使う上で最も大切なポイント
桂枝茯苓丸や桃核承気湯、当帰芍薬散などのようにそれ自体の効能として生理に関係する症状を改善するものだけでなく、むくみやイライラなどそれぞれの症状に合わせたものを選ぶことです。
漢方薬は病院で処方してもらうこともできますが、ドラッグストアや薬局、インターネット通販などで医師の診察なく購入することができます。
金額は漢方の種類によって異なりますが、自分で購入する場合は一日当たり300~1000円ほどです。病院では保険診療となるケースが多いため、3割負担で安く手に入れることができます。
このため、PMSに悩んだときは早めに婦人科に相談して、漢方薬を試してみましょう。
成田亜希子先生
一般内科医。プライベートでは二児の母。
保健所勤務経験もあり、医療行政や母子保健、感染症に詳しい。
国立医療科学院などでの研修も積む。
日本内科学会、日本感染症学会、日本公衆衛生学会所属。