そもそも「緊張」って何? どう克服すればいい?
初対面の人と話すことや、職場での電話応対、面接にはじまり、プレゼンや商談など仕事では緊張を強いられる場面が多いですよね。もちろんプライベートな場面でも苦手なことや人に直面するなど緊張を感じる瞬間も。
今回は、その緊張を克服する方法に関する著書を上梓された演技トレーナー伊藤丈恭さんにお話を伺いました。
Q.緊張とは何ですか?
「医学的には、脳内ホルモンの一種であるノルアドレナリンが過剰に分泌されることで、自律神経のバランスが崩れてしまった状態をいいます。
その結果、あらわれる症状や感じ方は人それぞれですが、心拍数が上がり、胸はドキドキし(動悸)、手足や声は震え、冷や汗が出たり、顔が火照ったり(赤面)するといった、さまざまな症状がもたらされます。
私は“あがり”や“テンパり”だけが緊張ではないと捉えています。人前に出るのが怖いといった“不安”や“ビビり”も、緊張から生じる症状でしょう。
共通していえることは“素の自分”に比べて、情緒不安定で、心は萎縮し、判断能力にも著しくかけている状態になることです。
Q.緊張しやすい人の特徴はありますか?
私は、その人の心の奥底に“大事な場面を無事に乗り切りたい”、“何事もなく平穏に終わってほしい”、“きちんと済ませて責任を果たしたい”などという思いがあることから、緊張が起こると考えています。
そんな思いを私は“成功への葛藤”と呼んでいます。“成功への葛藤”などというと、成功したい! という思いが強い上昇志向のかたまりのような人がもつイメージがあるかもしれませんが、そうではありません。
自分に与えられた役割をきっちりと果たしたいと考えている真面目で責任感の強い人こそ、そんな思いにとらわれてしまうのです。
Q.たった5分でできる「伊藤式・緊張撃退メソッド」とは?
「私が提唱する“伊藤式・緊張撃退メソッド”というのは、“素の自分”から“別の自分”に自動的に切り替えてしまう(役に入る)ことで、“緊張しない自分”になることができるというもの。
つまり別人になってしまえば緊張しない、というわけです。そんなこと演技などしたことのない私にはできない、と思うかもしれません。大丈夫です。誰でもできます!
このメソッドのベースは、演劇の役者さんが別人を演じるために行っている方法。
性格そのものは変えられなくても、本番前にこのメソッドを行えば、あなたはその瞬間だけは、別人になれます。人前で話すのも、会議に出るのも怖くないあなたになれるのです。
このメソッドでは、思考をいったん停止し、“緊張している人が絶対しない行動”によって、心を楽しませます。すると心は勝手に“緊張”から“楽しい”に誘導されていくのです。
緊張しているとき、人は楽しくありませんよね。その逆で、楽しいときに人は緊張していないのです。そこを踏まえて私の提唱するメソッドを試してみてください」
緊張を撃退! 当日の朝、でかける前に3つを行い、別人として出発しよう
A.(自宅にて)笑い方7変化=2分<効能:脳が楽しくなる>
人に見られたら恥ずかしいくらいのいろいろな笑い方をできるだけ下品に大げさにやってみよう! 鏡に向かって行い自分の笑い方が派手になっているかもチェック。大げさに笑いながら、手を叩いたり体を動かすのも有効です。これは緊張をとるための基盤となるパフォーマンス。周りには誰もいないのです、思い切りやってみて!
B.(自宅にて)ジブリッシュダンス=2分<効能:緊張してしまう自分を壊す>
ジブリッシュとは“めちゃくちゃ言葉”の意。意味も設定も感情も何も考えずに、架空の外国語を踊るような振りとともに話しまくり、踊りまくる! 声の抑揚やスピードや間を変えて、めちゃくちゃな言葉をしゃべりながら、コミカルなダンスを追求♡
C.(自宅にて)悪役レスラー登場=1分<効能:心が萎縮しないようにテンションをあげる(別人になる)>
悪役プロレスラーになり切って毒を吐きまくる。人前では使わないような激しい言葉を吐くことで、緊張を寄せ付けないテンションになれるのです。自分以外の誰かを見下すようなことを、嘘でもいいからはっきりと口に出してみたり、嫌いな上司や知人を思い浮かべて「この無能野郎め!」などど絶叫してみるのもおすすめ。
緊張を撃退! 現場・現場近くでやること2つ。これで緊張とさよなら
D.(現場・現場近くで)その場ダッシュ=20秒<効能:緊張から意識をそらす>
立っている場所で全力でもも上げダッシュをする。近くの公園でも、人通りの少ない階段や廊下でも、どこでもかまいません。その場で自由に駆け回っているふりをしてみましょう。疲れて息があがるくらい行うこと!
E.(現場で)本番直前の4つのお守り
これまでのA-Dのメソッドで、だいぶ緊張がとれているはず。でも本番では何が起こるかわかりません。現場についた途端、頭に血が上ってわけがわからなくなるかも。そんな緊急時の対処法も紹介します。いずれも体に意識をもっていくことで、心に興奮がいかないようにするのが狙いです。
◆1.超低速・手あげさげ
ヒジを曲げて両腕を体の前にだし、両腕に意識をもっていく。ゆっくり呼吸しながら、両腕を上下させます。動かすスピードは、1秒に1センチくらい。
◆2.全身グッ・パー
全身(顔や手足の指も)にグッと思い切り力を入れて、パーっと抜く。5回行いましょう。
◆3.肩ストン
肩を思い切りあげて、ストンと落とす。5回行いましょう。
◆4.地響き呼吸
鼻から強く息を吸って(2秒)、2秒止め、口から一気に吐きます。吐くときは地響きのような音を立てるイメージで。呼吸に集中することで緊張から意識がそれていきます。本番前まで続けて!
いかがですか? いずれも簡単にできることばかりですよね。次回、緊張しそうな出来事がある日は、家を出る前からこのメソッドをぜひ試してみてください。
「このメソッドで、別人のように変われるのは、そのとき、その瞬間だけです。でも継続して行っていくことで、だんだんと性格まで少しずつ変化していきます。
このメソッドをきっかけに、自分の殻を破り、眠っていた才能を開花させた人も数多くいます。そして何より人前で話すことがラクになり、コミュニケーションの幅も広がり、人と接して生きていくことが楽しくなってくるはずですよ」
と伊藤さん。
伊藤さんの最新著書「人前で変に緊張しなくなるすごい方法」では、さらに詳しく緊急事態にもドギマギしない心の持ちようと対処法や、緊張しない体質づくりなど、自分の仕事や人生に役立つTipsがふんだんに盛り込まれています。
気になる人はチェックしてみて♡
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お話を伺ったのは… 演技トレーナー伊藤丈恭さん
演技トレーナー。吉本興業沖縄ラフ&ピース専門学校演技コース講師。メンサ会員。
1967年、大阪生まれ。19歳より俳優・演出家を志し、故吉沢京夫より演劇理論「スタニスラフスキー・システム」を、ゼン・ヒラノ氏よりロバート・デ・ニーロも学んだ「メソッド演技」を習得する。
その後20年以上にわたって、俳優や声優の演技指導を行い、参加者はのべ3万人を超える。
舞台俳優が本番で緊張をとるための方法を紹介した著書『緊張をとる』(芸術新聞社)は、俳優以外の読者からも話題を呼び、異例のヒットを記録した。
現在、アイゼ演技ワークショップを東京渋谷近郊で開講中。俳優以外の一般人を対象にしたスキルUPクラスも開講し、ビジネスパーソンから主婦、学生などが参加。演劇理論に基づいた、仕事や生活の支えになる緊張のとり方をレッスンしている。
最新著書「人前で変に緊張しなくなるすごい方法」(アスコム)が話題に!