「偏差値」を使って微妙なニュアンスを伝える
まずは前回の復習。ビジネスでよく使う“言い回し”を、いかに相手に伝わるようなものに変換するかがテーマでした。同じことを伝えるにしても、伝え方が変われば相手の受け取り方も変わります。そして、その伝え方のひとつの手法として、多少強引でも数字を使って伝えることが効果的であることを説明しました。
では今回の本題。たとえばビジネスにしろプライベートにしろ、微妙なニュアンスを伝えたいときはないでしょうか。唐突ですが、たとえば「そこそこのイケメン」という表現。どれくらいイケメンなのか、これだけではその微妙なニュアンスまでは伝わりません。
あるいはビジネスにおいてあなたが後輩のアウトプットを評価するときに、「全然ダメ」という表現をしたとします。やりなおした後輩のアウトプットに再び「全然ダメ」という評価をするとしても、これだけでは前回と比較してどうなのか、ちょっとは良くなったのか、むしろ悪くなっているのか、そのあたりの微妙なニュアンスが伝わりにくくはないでしょうか。
繰り返しですが、数字は「コトバ」です。こういうときこそ、その力を借りてうまい“言い回し”をすることで最適なコミュニケーションを図りたいものです。そこで私からひとつ提案。次のフレーズをぜひ使ってみてはいかがでしょうか。
「偏差値で言うと、◯◯かな」
学生時代は馴染み深かった(?)偏差値という数字。実は統計学の基礎知識がその算出のベースになっています。しかし、ここはそれを理解することが主題ではないので、皆さんがご存知のあの偏差値とその数字をイメージしていただければ結構です。
偏差値70=かなりよい
偏差値60=けっこうよい
偏差値50=ふつう
・・・・・・
たとえばこのようなイメージです。不思議なもので、ビジネスパーソンになっても多くの方は「偏差値50」と表現すれば「ごくごく平均的」といったニュアンスを勝手に連想してくれます。こんな便利な数字を使った表現を使わない手はありません。たとえば先ほどの「そこそこのイケメン」を遊び心も添えて表現してみます。
「◯◯先輩を偏差値50としたときの、55くらいのイメージかな」
「俳優の高橋一生さんを偏差値70としたときの、60くらいのイメージかな」
◯◯先輩には少々失礼かもしれませんが、具体的で伝わりやすくなったのでは。また、後輩にダメ出しをするとしても単に「全然ダメ」と言うのではなく、
「偏差値でいえば45ね」
とでも表現してみます。そして次にダメ出しをする際にも「前回と同じように偏差値でいえば、48ってところかしら」とでも表現してみる。いずれもダメ出しには違いありませんが、一方で頑張っていることや改善されていることも伝えることができるでしょう。
今回のワンメッセージは、コミュニケーションに「偏差値でいえば、◯◯」を使ってみること。数字は極めて具体的かつ大小のあるコトバです。具体的かつ微妙なニュアンスも表現できる便利なものだと考えてみてはいかがでしょうか。
ちなみにわたくし深沢真太郎は、俳優の高橋一生さんを偏差値70としたときの、30くらいのイケメンです…………さすがにこれはちょっと伝わりませんね。使い方にはちょっとだけセンスが必要であることも付け加えておきます。
深沢真太郎 ビジネス数学の専門家/人材教育コンサルタント
BMコンサルティング株式会社代表取締役/多摩大学非常勤講師/理学修士(数学)
ビジネスパーソンの思考力や数字力を鍛える「ビジネス数学」を提唱し人財育成に従事。著作多数。
文化放送「The News Masters TOKYO」ニュースマスター
ラジオ『深沢真太郎のビジネス数学カフェ』パーソナリティ
パールハーバープロダクション所属(文化人タレント)
国内初のビジネス数学検定1級AAA認定者
公式チャンネル「ビジネス数学TV」