【目次】
・【痔の治療】温めて血行を良くすることで改善することも
・【痔の治療】自然に治らない場合は治療薬を
・【痔の治療】病院での治療は、基本的に保存療法
・【痔の治療】種類や状態によっては手術が必要なことも
・【痔の治療】いぼ痔、切れ痔は日帰りで手術で治療できることも
【痔の治療】温めて血行を良くすることで改善することも
突然お尻が腫れて痛くなる「血栓性外痔核」の場合は、自宅でお風呂に浸かるなどしてお尻を温めたり、横になって安静にしたりすると、血行が良くなって自然に治ることもあります。患部が腫れていても、冷やすとより血行が悪くなってしまうので、必ず温めましょう。
【痔の治療】自然に治らない場合は治療薬を
患部を温め、安静にしていても治らない場合は、薬を使って治療します。忙しくて病院へ行けないときは、市販の痔の治療薬を使ってもいいでしょう。その場合、必ず薬局で薬剤師さんに相談して薬を選びましょう。
市販薬は色々な症状に対応できるように作られているので、特定の症状に特別に効くことはあまり期待できません。薬で治療するときは、薬を正しく使うことが大切です。
例えば、肛門内部に痔があるのに、注入せずに表面だけに薬を塗っていては効果はありません。薬の添付文書(説明書)をよく読んで用法用量などを守って使用し、一定期間使用しても症状が改善しない場合は、病院で診察を受けましょう。
痔の治療は肛門科・肛門外科で行います。近くに肛門科がない場合は、消化器外科または外科を受診しましょう。診察では、通常、問診・視診・触診・肛門鏡診を行います。
問診では、どんなときにどのように痛むか、出血や脱出(痔核が肛門の外へ出ること)はあるか、ある場合はどのような状態か、不快感・かゆみの有無、便通の状態などを質問しますので、自分の症状をきちんと伝えられるように整理しておきましょう。
【痔の治療】病院での治療は、基本的に保存療法
痔の程度にもよりますが、薬による治療と生活習慣の改善が基本です。出血や腫れに対処する座薬や注入軟膏、塗り薬などの外用薬と同時に、便通を改善する薬も処方されます。また、体質改善を目的に漢方薬が処方されることもあります。
薬を使って一時的に痔が良くなっても、便通が改善されなかったり、肛門に負担をかける生活を続けていると、痔は再発してしまいます。不規則な食事や偏食、過度なダイエット、暴飲暴食、運動不足、心身のストレスなどは痔を招きます。生活習慣を見直して痔の再発を防ぎましょう。
【痔の治療】種類や状態によっては手術が必要なことも
いぼ痔は脱出がひどくなり、指で押し込まないと元に戻らなくなったり、脱出していなくても出血がひどく貧血が心配な場合などは外来処置や手術が必要になります。
切れ痔もほとんど場合は上記の保存療法で治りますが、慢性化して肛門狭窄(こうもんきょうさく)になってしまった場合は手術が必要に。痔瘻は皮膚が破れて膿が出てくる状態になってしまった場合、膿の管(ろう管)ができているので、それを治すには手術をする必要があります。
【痔の治療】いぼ痔、切れ痔は日帰りで手術で治療できることも
薬を使って治療をして生活習慣を改善しても、症状が抑えられない場合は、外科治療が必要になりますが、外科治療といっても切らずにできる治療もあります。いぼ痔と切れ痔の代表的な治療法をご説明します。
いぼ痔の場合
●ゴム輪結紮(けっさく)療法
脱出するようになった内痔核の根元にゴム輪をかけて強く縛るというもの。専用の結紮器を使い、痛みを感じない直腸部の痔核にゴムをかける。ゴム輪で縛られ血行が遮断された痔核は1~2週間で壊死。ゴム輪は排便時に排泄される。痛みや出血が少なく、繰り返し行えるが、大きな内痔核や外痔核には適用できない。
●ALTA注
内痔核に薬液を直接注射する療法。局所麻酔をし、「硫酸アルミニウムカリウム水和物・タンニン酸」という薬剤を4カ所に分けて注射する。痔核への血流が減少し、出血が止まり、その後痔核が徐々に小さくなる。術後の痛みや出血はほどんとなく、再発した場合も繰り返し行えるが、外痔核には行えない。
切れ痔の場合
●用手肛門拡張術(ストレッチ法)
軽度の肛門狭窄に適用される。局所麻酔をした上で肛門に指を入れ、緊張して硬くなった内肛門括約筋を広げる。痛みを和らげるのに有効。切開しないので、創傷ができない。
●内括約筋側方皮下切開術
過度に緊張した内括約筋の一部を切除することで、筋肉の緊張を取り、肛門を広げる。これにより、肛門の皮膚が切れにくくなり、痛みも和らぐ。局所麻酔で手術可能。
上で紹介した4つの方法はどれも日帰りで手術が可能です。健康保険が適用されますので、治療費用は3万円台程度が目安です。病院によっては、入院が必要になる場合や、自費診療となることもありますので、受診の際に確認しましょう。
痔瘻の手術
重症度やろう管の長さや位置によって手術の方法が異なります。「切開開放術」「括約筋温存術」「シートン法」などが代表的。シートン法は日帰りで手術が可能な病院もある。
初出:しごとなでしこ
教えてくださったのは…山口トキコ先生
東京女子医科大学卒業、同大大学院修了後、研修医、勤務医を経て、2000年にマリーゴールドクリニックを開業し、院長を務める。日本大腸肛門病学会専門医・指導医。日本臨床肛門病学会技能認定医。著書に『女医が教えるおしりの本』(TBSサービス)などがある。