周囲からの脅しや怖い話は忘れてしまおう。大事なことだけを守れば、あとは「なんとかなる」
――国内外の社員と一緒に、プロダクトを開発されている矢野さん。どういう選択をしてきたことが今につながっていると思いますか?
矢野:先を考えないで、でもひとつひとつ丁寧にやってきたことでしょうか。
日々、「今日はここまででいいや」とか、少しだけ妥協してしまうことがありますよね。でも、私は「今日ここまでしっかりやる」っていう、「その日の完成図」を毎日描いていました。
それだけずっと考えてきたっていう感じですね。今日のことしか考えていませんでした。
――私はよく妥協してしまうので、胸が痛くてしょうがないです…。
矢野:それから、ユーザーの手元に届くものや、見られるものに一番時間を使って、丁寧に作るようにしています。
バナーをひとつ作るのにも「どんな表現をしたら、みんなが喜んでくれるんだろう」とじっくり考えていますね。そのおかげで社内への報告資料がすごく適当だったりしますが(笑)。
――ブレがないってすごいことだと思います。
矢野:料理や子育ても同じだと思うんですよ。
子どもの将来のことを考えて貯金の計算するのも大事だと思います。でも、毎日の中で「今日はコンビニ弁当で夕食を済ませてしまおうか…」と妥協したくなるときもありますよね。その中で「いや、一品でもいいから作ろう!」と頑張る。
そんな「毎日の一品の頑張り」があったからこそ、今うちの子が大きく成長しているっていう自信があるんですよね。
――話は変わりますが、女性は仕事と恋愛・結婚のバランスが難しいと思うんです。
矢野:難しいですよね。いろんなタイミングや状況があるから、結婚も出産も人それぞれだし。
――たぶん、深く考えないほうがうまくいくんだろうと思います。
矢野:本当は簡単なことだと思うんですよ。
目の前に好きな人がいて、この人の子どもがほしいって思うなら産めばいい。でも「子どもがいるのが普通だから」とか「この歳になって子どももいないのはおかしい」とか、人にいろいろ言われるのがイヤだという理由でなにかを決めようとすると、しんどくなるんです。
――そうやって自分の意志ではなく、他人の意見に流されて物事を決めると、他人に文句を言いたくなるんだと思うんです。ご自身は結婚や出産を、どういう判断でされましたか?
矢野:20代のころに「子どもほしいなあ」と思ってはいたんですけど、先のことは考えていなかったですね。今は、一緒に働いていたSimejiの開発者と結婚しています。長い付き合いということもあり、お互い尊敬しあっています。
――50歳、60歳になったときにどういう女性になっていたいですか?
矢野:「おもしろばばぁ」になりたいなって思います。よく友達とも話すんですけど、「大丈夫、大丈夫」しか言わない60歳になりたい。
――酸いも甘いも全部噛み分けて知ってるからこそ言える「大丈夫だよ」ですか?
矢野:「もう大丈夫」っていう感じですかね。
世の中には、昇進や老後の資金の心配をして、きちんと計画を立てる人がいますよね。計画を立てているうちに、ありもしないことで悩んでしまうこともあるのではないでしょうか?
でも、「みんなで仲良く楽しく、きれいな物を見て、おいしい物を食べて、ニコニコするために生まれてきたんでしょ?」みたいな感覚でいきたいですね。
――考えても仕方がないですもんね。いくつまで生きるかわからないのに、いくら残しておけばいいかなんてわかるわけがない。
矢野:ザックリ計算するのはいいことかもしれないですけど。でも、生まれたからには楽しいのが一番いいはずなので「いやなことはしない」くらいでいいんじゃないかと思っています。
皆さんの職場や家庭にも、何か失敗をして落ち込んでいる人がいるかもしれません。でもそんなときこそ、「大丈夫、大丈夫」って言ってあげられるようにしたいですよね。
初出:しごとなでしこ
今回話を伺ったのは…矢野りんさん
バイドゥ株式会社 モバイルプロダクト事業部 部長/Android女子部部長
北海道足寄町出身。女子美術大学芸術学部卒。
フリーランスのデザイナーとして、メーカのWebコンテンツなどデザイン経験多数。2011年12月 よりバイドゥ株式会社入社。自社プロダクトのSimejiやBaidu IMEのUX/UIのデザインやプロモーション企画・デザインを担当。