【目次】
・【モラハラ】とは?
・【モラハラ】パワハラの違いは?
・【モラハラ】裁判実例
・【モラハラ】正しい対応・対策とは?
・【モラハラ】訴える! まず何をしたらいい?
【モラハラ】とは?
日本では現在、職場におけるモラル・ハラスメント(以下「モラハラ」)について直接規定した法律はなく、また、これまでに出された裁判所の判決等を見ても、法律上確立した概念とまではいえないのが現状なんです。
しかし、一般的には非常によく聞かれる言葉となってきていますよね。
モラハラという言葉を世に広めた人物は、フランスの精神科医、マリー=フランス・イルゴイエンヌさん。
彼女は著書の中で、職場のモラハラについて、
「職場におけるモラル・ハラスメントとは、不当な行為(身振り、言葉、態度、行動)を繰り返し、あるいは計画的に行うことによって、ある人の尊厳を傷つけ、心身に損傷を与え、その人の雇用を危険にさらすこと」、「そういったことを通じて職場全体の雰囲気を悪化させること」
と定義しています※1。
ちなみにフランスでは、労働法と刑法の中でモラハラについて規定されています。
【モラハラ】パワハラとの違いは?
厚労省によるパワーハラスメントの定義は
「同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係などの職場内の優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与える又は職場環境を悪化させる行為」
です。
つまり、上司と部下等、上下の関係を利用した攻撃であると考えられているのに対し、モラルハラスメントは、同僚間のように、上下関係がない場面での嫌がらせ等をいうと考えられています。
【モラハラ】裁判実例
1.残業や休日出勤を強要する、個人的な用事について使い走りをさせたケース
【事例1】※2
ある病院に勤務する男性看護師が先輩の男性看護師らから、残業や休日出勤を強要する、個人的な用事について使い走りをさせる、被害者に好意を持っている女性と2人きりにして、性行為をさせてそれを撮影しようとする、「死ね」「殺す」などと言うといったイジメを受けていました。
結果、被害者はイジメを苦に自殺。
裁判所は加害者に、不法行為に基づく損害賠償を命じました。また、病院には、イジメ行為を防止し、被害者の生命、身体を危険から保護する安全配慮義務があったところ、それに違反したとして、債務不履行に基づく損害賠償を命じました。
2.存在を否定されるかのような発言が続いたケース
【事例2】
新しい職場に配転された被害者(公務員)が、本人に聞こえるように「とんでもないのが来た」などの存在を否定されるかのような発言をされる、容姿や女性経験がないことを嘲笑の対象とされる、ナイフで脅かされる等のいじめを受けていました。
結果、被害者はいじめを苦に自殺。
裁判所は市に対し、損害賠償を命じました。
【モラハラ】正しい対応・対策とは?
もし自分や周囲の人がモラハラを受けてしまった場合、主な相談先としては、上司、職場の相談窓口、各地の労働局の相談窓口、弁護士等が考えられます。
【モラハラ】訴える! まず何をしたらいい?
モラハラの被害に遭った場合、モラハラを行った人間への損害賠償請求とともに、会社に対して損害賠償請求を行うこともできます。
会社であれば、モラハラを行った従業員の使用者として責任を負うとともに、労働契約上、従業員が心身の安全を確保できる状態で働けるよう配慮する義務を負っていると考えられているのです。
モラハラは、どんなものが証拠になる?
モラハラにより精神科や心療内科等への通院を余儀なくされた場合の治療費の領収書等、診断書、同僚の証言、モラハラに該当する発言がされた際の録音データ、メール等が考えられます。
弁護士に相談するとどのくらいのお金がかかるの?
法律事務所によって料金は異なりますが、初回の法律相談の場合は、30分5,000円~1万円程度の料金のことが多いです。
残念なことに、イジメは大人になってもなくならないんです…。
みんなが気持ちよく働けるように、少しでも不安を感じたら相談してみましょうね。
※1 マリー=フランス・イルゴイエンヌ『モラル・ハラスメントが人も会社もダメにする』27頁(2003年、紀伊国屋書店)
※2 さいたま地判H16.9.24
※3 東京高判H15.3.25
初出:しごとなでしこ
弁護士 松葉優子
2012年早稲田大学法学部卒業、2014年早稲田大学大学院法務研究科修了。2015年弁護士登録。2017年に、現在所属しているプロアクト法律事務所に入所。企業のリスクマネジメント等が専門。