カップルが家事の役割を分担をすることは合理的
夫婦関係はもちろんのこと、同棲中のカップルなど、男女が一緒に暮らすことで起こる問題といえば“家事の役割分担”!
最近では積極的に家事に参加する男性も増え、“私は料理と洗濯、彼は洗い物とアイロンがけ”などときっちり役割分担している方々も多いのではないでしょうか。
お互い得意ジャンルを担当し、時間を有効に使えるこのやり方ってとっても合理的、しかも平等性もある程度担保され、とてもストレスフリーだと思いませんか?
しかしこのやり方、実は男女の関係を不仲にする危険性をはらんでいるのだとか。そう提言しているのが、心理学者・臨床心理士の杉山崇先生!
なぜ家事の役割担当が不仲の原因になってしまうのでしょうか。
やり方次第で、家事の分担が不仲の原因に? 根底にあるのは“裏切者モジュール”
■“裏切者モジュール”とは?
人間はみな、脳の深いところ、本能レベルで“裏切者モジュール”を持っているのだといいます。これは人が他人に対して過大な期待をすることで発動されることが多々あります。
そして勝手に期待をしておきながら、それが叶わないと「裏切者!」と感じてしまうのです。
みなさんも経験ありませんか?
例えば女友達が彼氏にフラれたと知り、一生懸命励ましたり元気づけてあげたにもかかわらず、その女友達が翌日にはころっと元気になって合コンに参加してすぐに新しい彼氏ができたというシチュエーション。
こんなとき、本来なら友達の幸せを喜ぶべきなのに、心のどこかで“あんなに落ち込んでいたから親身になったのに、なんだか損をした! 裏切られた!”なんて感じてしまう……。
これは本能レベルのシステムなので、自由にオン・オフを切り替えることができません。
なぜこんな本能が人間には備わっているのでしょう。それが社会で生きる人間にとって、最大の脅威は仲間に裏切られて寝首をかかれることにあります。だから裏切者をいち早く発見する必要があるため、このような本能が発達したと考えられています。
■家事分担で裏切者モジュールが発動しやすくなる?
そんな“裏切者モジュール”を引き起こしやすくするカップル間の決まり事こそ“家事の分担”なんです。
きっちり役割分担がうまくいっている間は問題ありませんが、長い間一緒にいればそうもいかなくなりますよね。どちらかが忙しく、役割がうまく果たせず、相手の担当分の家事ををフォローしなければならなくなるという事態はよくあることです。
そんなときに“彼がやるべきことを私が変わりやることになった! 期待を裏切られた!”と“裏切者モジュール”が発動してしまうのです。
そして人は裏切者には容赦がなくなるので、相手をとことん攻撃できるようになってしまいます。最悪の場合、“彼は掃除すらできない人間だ”などと相手を軽蔑する感情さえ湧き上がってしまうのです。
家事分担で過度に期待しないことが、うまくいく方法
役割分担は確かに合理的で、日々の仕事や暮らしを考えればとても現実的な解決策です。しかしながらそこに過度の期待や責任を求めるのは間違い!
“時間があるほうがやる”または“ふたりで一緒にやる”など、フレキシブルな役割分担にしたほうが、不仲にならずにすむのだと杉山先生はいいます。
これから同棲や結婚を考えている人は、一度彼と家事の役割分担について話し合いをしてから一緒に暮らし始めるほうがよいかもしれませんね。
初出:しごとなでしこ
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また“子育ては男心を操ることに似ている”というのが杉山先生理論。子供のいない方でも、男性の操縦術方法として勉強になる1冊ですよ。
杉山 崇
神奈川大学教授・心理相談センター所長
臨床心理士・1級キャリアコンサルティング技能士
オフィシャルウェブサイト
日本心理学会、代議員
日本メンタルケア学術学会・日本学生相談学会,理事
日本認知療法・認知行動療法学会,幹事
吉田奈美 writer
女性誌を中心に、タレントインタビュー、恋愛企画、読み物企画、旅企画、料理企画などを担当。著書に『恋愛saiban傍聴記』(主婦の友社)も話題に。