20代後半~30代半ばの女性と話していて感じるのは、DVやモラハラ傾向がある男性とそうとは気が付かずに交際している人が多いこと。
森田佳奈美さん(30歳・契約社員・仮名)は、交際するほとんどの男性が、モラハラ傾向があると語ります。
「付き合う人の条件は、顔は普通以上で、大卒、一流企業に勤務していること。できれば子会社勤務の人は避けたいです。今、付き合って1年になる恋人は今行っている会社の正社員で、女性からの人気もそこそこあります。だから、かなり交際の条件が厳しいのです」
その条件とは、付き合っていることを口外しないこと、佳奈美さんが彼に対して意見を言わないこと、人前で酔っぱらわないこと、男友達と2人きりで会わないことなど。交際のきっかけは、会社の英会話勉強会の後に何度か飲むうちに、彼の方から誘われて、体の関係からスタートした。
「酔っぱらった勢いで……というのもありますが、その後で、きちんと“付き合う”という約束をしてもらいました。交際半年目くらいに、私に合鍵をくれたので、信じてくれているのだと思います。でもその頃から私に対して注文というか、いちゃもんをつけるようになったんですよ。それまで美味しいと食べてくれた手料理をけなすようになりました。あとは、テレビを一緒に見ていて、何か感想を言うと“バカだな~オマエは”とか“オマエは全然わかっていない”などと言うんです」
それで、佳奈美さんが何か言い返すと、モノを投げたりドアをバンと閉めて外に出て行ったりする。それでも、彼と結婚したい佳奈美さんは、彼の機嫌を取っていると言います。
「彼がイラっときたな……と感じると、“はい、そうだね”とか“私が間違っていた、ごめんね”とか反射的に謝ってしまうんです。すると彼は“そうじゃねえんだよ!”とさらに逆上。今まではモノを投げる程度だったのに、私の顔を叩いたり、蹴ったりすることも増えました。でも優しいときはすごーく優しい。“愛してるよ”とか普通に言ってくるし……」
最近は、何でも言うことを聞く佳奈美さんに様々な依頼をしてくる。
「会社では、私に関係のない彼の仕事のデータ集めや資料作成を頼まれることがあります。あとは、“出張帰って来たから、俺の家行ってトランク開けて洗濯しておいて”とか“ゴミ捨てと掃除もよろしく”とか。山のような汚れ物を洗って彼の家で終電まで待っていても、帰って来ないこともあります。私は便利なだけの女なのかな……と思うけれど、彼以上の結婚相手というのはなかなかいないんですよね。別れるのは次の彼を決めてからだと思っていますが、なかなかいい人っていないんですよね」
▲このまま彼と一緒にいていいのか悩みながらも、ひとりになるのは不安であまり深く考えないようにしながら日々を過ごしているという彼女。彼女と話していると、結婚や幸せとはなんだろう…と、改めて考えさせられる。
初出:しごとなでしこ
沢木 文 Writer&Editor
1976年東京都足立区生まれ。大学在学中よりファッション雑誌の編集に携わる。恋愛、結婚、出産などをテーマとした記事を担当。著書に『貧困女子のリアル』『不倫女子のリアル』(小学館新書)がある。