なぜ、女性はチキンカレーばかりオーダーするのか?
毎日様々なカレー屋に行っていると、しばしば気になる事態に遭遇することがあります。最近は数年前に比べてカレーを食べる女性も増えていて、女性客が増えてきたのはとても喜ばしいことなのですが、女性客の特徴として、グループで来て、何故か全員チキンカレーやバターチキンカレーを頼むという光景を見かけることが少なくないんです。
なんでそんなにチキンなの?
しかもセットだとタンドリーチキンもついてたりするのに、それでもチキンを選ぶ。
女性ってそんなにチキン好きなんですか?
気になって、周りの友人に聞いてみたところ、返ってきた答えは「チキンが一番無難だから冒険したくない」とか「バターチキンしか食べたことない」という理由が多くて、もったいないなぁと思った次第。
チキンカレーはたしかにスタンダードなメニューですが、逆を言えばどのお店にもあるメニューでもあります。チキンカレーは好きじゃないという人はそうそういませんから、まさに万人受けするカレーと言っても過言ではないのですが…
しかし!
音楽チャート1位の音楽ばかり聴いていても、一番売れている服のブランドばかり着ていても…つまらなくないですか?
カレーも同じで、それぞれが「これだ!」と思うカレーがあるはずなのです。
そんなわけで今回は、チキンカレーやバターチキン以外にも美味しいカレーはいっぱいあるんだぞ!
ということを、ここで知って欲しいと思って筆を執りました。カレーというのもはある意味無難の対極にある料理です。是非、冒険してみてください!
初級編「ほうれん草カレー」
チキンカレーではないカレーで何を食べれば良いのか。
まず初級編としては既に女性にも人気があるほうれん草カレーが良いのではないでしょうか。
ほうれん草カレーとわかりやすくメニューに書いてあるところもありますが、インド料理店だと「サグ」とか「パラック」と表記されていることも多く、それらは全てほうれん草のカレーだと思っていればほぼ間違いありません。
サグチキンというカレーもよくあるメニューですが、これならチキンと一緒にほうれん草も取れてよりヘルシーです。
パラックパニールというカレーもよくあるのですが、こちらのパニールというのはインドのチーズのこと。チーズといってもカッテージチーズのように脂肪分が少ないチーズなので、やはりヘルシーで美味しいんです。
サグとパラックの差は何かというと、諸説ありすぎて結局どれが本当なのかわかりません。インド人に聞いても人によって答えがまちまちで、結局わからないということになるのはインド料理あるあるでして(^^;) インド人は名前について特に気にしないんですね。
いずれにせよ、ヘルシーで辛さも控えめなことが多いほうれん草カレー、女性におすすめです。特におすすめな2店舗をご紹介しましょう!
■:表参道「シターラ」
日本におけるインド料理店で最も高級なお店のひとつシターラ。
こちらはサグではなくサーグと表記。ほうれん草のエグ味が完全に消され、上品な美味しさは高級店だからこそ。ランチタイムはリーズナブルですし、シターラの系列店も各所にあり、値段の割には十分以上に美味しいほうれん草カレーをいただけるので、入門編として良いですよ。
■:赤羽「バーワルチー」
こちらはパラックではなくパラクと表記。赤羽のテイクアウトメインの小さなインド料理店なのですが、インド料理通の間では本物の北インド料理が食べられる隠れた名店として知られています。
こちらのほうれん草カレーは、ほうれん草のエグ味をあえて残しています。そしてそれがスパイスマジックによって逆に美味しさにつながっているすごいカレー。僕が個人的にほうれん草カレーの中で一番好きなのがこちらです。ほうれん草カレーをある程度食べ比べてから行くと、その本当のすごさがわかるかと思います。
中級編「ポークビンダルー」
ポークビンダルーとはインドのゴア地方の名物料理で、マリネした豚肉を使った酸っぱ辛いカレーのことです。
最近はインド料理店というよりは、インドカレーをベースに日本人が作ったスパイシーなカレーライスを出すお店にこのメニューが増えてきたように思います。マリネしてあるのでビネガーを使っているわけですが、ビネガーや酢の健康効果については既にいたるところで語られていますね。酸っぱさと辛さのバランスが良いのはトムヤムクンなどのタイ料理で顕著に見られます。
トムヤムクンが好きな女性はきっとポークビンダルーも大好きだと思うんですよ。そんなわけでポークビンダルーのおすすめはあえてインド料理店ではなく、日本人の作っているスパイシーなカレーライスを出すお店からご紹介します。
■:茅場町「ワカフェエイム」
シックなカフェレストランなのですが、ポークビンダルーというメニューはありません。伝説のポークカレーという名前のカレーが、ポークビンダルーなのです。
何が伝説なのかというと、こちらの料理長が以前別の場所でカレー専門店を営んでいた頃、マニアがこぞって通った食べたカレーがこれだからということ。カレーの美味しさもさることながら、一緒についてくる豚汁とサラダも絶品で、健康のバランスもバッチリ。お店の雰囲気も含めて女性に超おすすめです!
■:北千住「カリーライス山」
普段はバー。
カレーは金土日の昼のみというハードルの高いお店なのですが、こちらのカレーは何とポークビンダルーのみの一本勝負! このことからも自信がうかがえますね。
実際にとても美味しいポークビンダルーです。ご飯も長粒種と日本米のブレンドの硬め炊きでカレーに良く合いますし、付け合わせのキャベツのサブジがまた豚肉とバッチリ合うんです。休みの日にわざわざ食べに行っても損のないお店ですよ。
上級編「マトンカレー」
マトンとは羊。
子羊の肉はラムと言いますが、ここではどちらもまとめてマトンということにしておきます。マトンというとどうしても臭味があるというイメージが強く、食べず嫌いの方も多いように感じています。
羊肉を食べることが少なかった昭和の時代のマトンは、確かに臭味が強いものもありました。しかし最近ではマトンを食べることが増えてきていて、臭味の無い良質の肉が出回るようになってきています。
マトンのおすすめポイントは、カルニチンが豊富に含まれているということ。
カルニチンとは、脂肪を燃焼する際に必要な栄養素なのですが、日本でよく食べられる牛、豚、鶏の肉と比べても羊は圧倒的にカルニチン含有量が高いんです。
つまり、マトンを食べれば脂肪を燃焼するんです! 最近では肉を食べた方が痩せるという学説も増えてきましたが、その肉の中でもマトンが一番脂肪を燃焼します。そもそもカレーのスパイスによってマトンの臭味はかなり消えます。昨今流行のパクチーも、マトンが一番相性良いと思いますし、パクチーの美味しさがわかる方ならマトンの美味しさもわかると思います。食わず嫌いな方はこれを機に是非一度マトンカレーを食べてみてください!
■:水道橋「桃の実」
本郷三丁目にある予約のなかなか取れない人気スパイスバル桃の実の姉妹店です。水道橋店はカレーライスを中心としていて、より気軽に使えるスタイル。中でもマトンカレーセットは絶品! スパイスによって臭味は消され、美味しさを凝縮された骨付きのマトンは、スプーンで骨が簡単に取れるくらいにしっかりと火が通っています。
単品注文も可能ですが、セットにするとピクルスや豆のカレーも一緒についてきて健康的にも味的にもレベルが上がるので、こちらで間違いなしです。
■:東池袋「エーラージ」
ここ数年で南インド料理の専門店も増えてきましたが、その中でもこちらはかなりの老舗。最近元々の場所のすぐ近くに移転したのですが、移転後は広くなって味のレベルも上がりました。
こちらのマトンカレーはシナモンとクローブがしっかりときいている香り高い絶品カレー。ワイルドなのに上品さも兼ね備えている逸品です。ランチだとノンベジミールスでもマトンは入っているのですが、量が多いので女性にはマトンドーサがおすすめ。
南インドはナンをほとんど食べません。ドーサという南インドクレープに、絶品マトンカレーとサンバルという野菜カレーが混ざると最高ですよ!
このように、チキンカレー以外にも様々な美味しいカレーが存在します。もちろんチキンカレーが美味しいお店もあるのですが、チキンが一番美味しいというお店は少ないように思います。
もしチキンを頼むとしても、ただチキンカレーだったりバターチキンを選ぶより、チキンチェティナードだったり、カラヒチキンなど、チキン〇〇とか、〇〇チキンという名前のものを選んだ方が、お店こだわりの料理が出てくる可能性が高いです。
ちょっとの冒険で大きな感動を得られることも少なくないのがカレー道。もちろん時には失敗もありますが、カレーなでしこでご紹介したお店を攻めていけば失敗はありませんので、是非色々と試してみて、カレー道を追求してくださいませ\(^o^)/
初出:しごとなでしこ
AKINO LEE カレーおじさん\(^o^)/
ヴォーカリスト、パフォーマーとして自身の活動の他、様々なアイドルの作詞作曲振付プロデュースを担当。ヴォイストレーナーとして後進の育成にも力を注いでいる。音楽ライターとしても各種雑誌、ムック本などで執筆を担当。また、カレーおじさん\(^o^)/としても知られ、年間平均900食以上のカレーを食べてきた経験と知識を活かしてTVや雑誌など各種メディアにおいてカレーについて語っている。
http://www.akinolee.tokyo/