韓国政府機関と東京農業大学の共同研究により解明されたマッコリのすごさ
韓流ブームで一気に日本に定着したマッコリは昨今、流通の簡便さから人気を保っている火入れマッコリに加え、加熱処理しない生マッコリのカテゴリも人気です。製造技術の向上で国内輸入が可能となった2007年頃は2銘柄でしたが、2017年現在は7銘柄※1まで増えていて、注目を集めています。
韓国ではそもそも加熱処理しないので、生マッコリは韓国で一般的に飲まれているマッコリ。乳酸によるほんのりした甘みと酸味と発泡が、本場の味と人気です。
※1:aT東京支社調べ
そのマッコリについて、韓国政府機関の韓国農水産食品流通公社(aT)は、発酵の研究で優れた実績のある東京農業大学(醸造科学科)と共同で、日本初の取り組みとなる、マッコリの成分分析の研究を実施。
その結果、日本でも人気上昇中の韓国発のお酒生マッコリには、生きた「酵母」と「乳酸菌」の両方が含まれる珍しいお酒であることが判明しました。また、日本酒のまろやかな酸味を生む「乳酸」と、ワインのするどい酸味を生む「クエン酸」を、ほかのお酒より多く含む結果も!
生マッコリは、生きた「酵母」と「乳酸菌」を含む珍しい酒
分析結果から、マッコリは生きた「酵母」と「乳酸菌」の両方を含む珍しいお酒であることがわかりました。そもそも酵母※2を含む食品は意外と少なく、加熱殺菌処理しないタイプの生醤油や生味噌より多く含みます。乳酸菌※2もヨーグルトなど乳製品と同程度か若干少ないぐらい含みます。
※2:種類は異なる
日本酒の一部(無濾過の生原酒等)は酵母を含むものもありますが、ろ過するため乳酸菌は含みません。日本で人気のワインも長期熟成の過程で微生物がいなくなるため、「酵母」と「乳酸菌」の双方を含まないお酒です。
ワインの特徴の一つ「クエン酸」はマッコリが1.2倍以上豊富、また日本酒の特徴の一つとなる「乳酸」はマッコリが1.2~1.9倍豊富
ワインの酸味の特長である「クエン酸」と「リンゴ酸」の量をマッコリと比較すると、「クエン酸」の量はマッコリ(生マッコリを含む平均値)の方が少なくとも1.2倍多く含みました。一方、「リンゴ酸」はワインの方が高い結果を得ました。日本酒との比較では、「クエン酸」はマッコリの方が4倍以上多く、「リンゴ酸」は日本酒の方が2.1倍以上多く含むことがわかりました。分析ではこのように、各お酒の酸味の違いが明らかになっています。
また日本酒に多く含まれる乳酸はマッコリ(生マッコリを含む平均値)の方が1.2~1.9倍多く含むことがわかりました。マッコリの美味しさの一つである、まろやかな酸味は、乳酸由来によると考えられます。
マッコリは、食物繊維のほか、たんぱく質や必須アミノ酸(2種)が豊富!
マッコリはろ過をせず、すりつぶしたコメなどがそのまま入っているため、通常の酒類にはほとんど含まれない食物繊維を多く有します。「翌日の便通が良い」といった声を聞くのは、食物繊維(0.2%~0.5%、平均値0.35%)が豊富な点も一つの理由と考えられます。
また身体を構成する三大栄養素の一つであるタンパク質が、マッコリ(生マッコリを含む平均値)の方が日本酒より2.8倍、ワインより5.5~11倍多く含むことがわかりました。DNAの生合成や赤血球の形成等に必要な要素である葉酸は、マッコリ(生マッコリを含む平均値)が日本酒の11倍、ワインの5.5倍多く含むこともわかりました。
また、他のお酒と同様に、マッコリにも必須アミノ酸が含まれており、なかでもヒスチジンとフェニルアラニンは日本酒やワインより多い傾向にあることも明らかになりました。マッコリの特徴である甘味の要因は、フェニルアラニンの豊富さも一つ。
<分析対象のマッコリについて>
今回、aTと東農大が分析したマッコリは、日本で一般的に流通している韓国酒造会社の銘柄11社11種類です。そのうち、“生”マッコリは4種類です。
分析内容は4つのカテゴリ(①成分・菌数、②遊離有機酸組成、③遊離アミノ酸組成、④香気成分)で実施。
①は食物繊維や葉酸など15種、②は乳酸やクエン酸など7種、③はヒスチジンやフェニルアラニンなど17種、④は酢酸エチルなど5種を分析しています。
分析は東農大の醸造科学科が中心となり外部分析機関の協力なども得て、2017年8月から10月にかけて、行っています。
この研究結果を読むだけで、今すぐマッコリが飲みたくなりますね!成分がより豊富に含まれる「生マッコリ」を選べば、この冬をよりヘルシーに元気に過ごせるかも!
初出:しごとなでしこ