築地周辺はまさに「コンパクトシティ」!?
コンパクトシティ、という概念をご存じでしょうか。
いきなり引用ですが、日本大百科全書「ニッポニカ」には、以下のような解説があります。
【コンパクトシティ】
都市の郊外への拡張を抑え、中心部に行政、医療、教育、交通などの都市機能を集積し、中心街の活性化と都市住民の利便性を向上しようという概念。この概念を実現した都市もコンパクトシティとよばれる。大型商業施設や公共施設を郊外に建設することを抑制したり、交通手段として自動車より徒歩・自転車や路面電車などの公共交通機関を重視したり、コーポラティブ住宅(組合形式の集合住宅)の整備など「街なか居住」を推進する、などの特徴をもつ。
築地に転居してまもなく2年。東京都中央区、特に築地周辺はまさに「コンパクトシティ」そのものだな、と思うようになりました。区役所、保健所、図書館、集会所、保育園、幼稚園、小学校等の公共施設、銀行、郵便局、病院、歯科医院、美容院、そしてスーパー、コンビニ、あらゆる業種の店舗……。自宅から徒歩1分~8分ほどの圏内に日常生活に必要な施設がすべて揃っているのです。徒歩圏内にないのは、家電量販店、スーパー、ホームセンターといった郊外型の大型店舗。これは日常的に利用するわけではないので問題ありません。
▲聖路加タワーから見た築地の街並み。築地には勝どきや月島、佃島にある30~50階建てのタワーマンションはありません。中層ビルの狭間に昭和の古い家々が点在しています。
築地6丁目、7丁目(=裏築地)は食の小売店舗が点在
それに加えて、この地ならではと思える小売店舗が存在するのが築地のいいところ。場外市場や築地魚河岸に行けば旬の食材が何でも揃うのはもちろんですが、築地本願寺の裏手に位置する築地6丁目、7丁目には飲食店だけでなく、特徴ある食の小売店舗が点在しています。かつてテレビ東京系のTV番組「テレビチャンピオン」で「築地王」に認定された小関敦之氏は、著書「築地で食べる」(光文社新書)の中でこのあたりを「“裏”築地」と命名。昨年10月にテレビ東京系「アド街ック天国」で「築地 明石町」と題して、築地3、6、7丁目と明石町が特集された際も、「裏築地」と紹介され、レギュラー出演者の峰竜太氏は「粋築地」と称していました。昨今は場外市場の喧騒を逃れ買い物をする観光客もちらほら。ではそんな食のコンパクトシティ=裏築地の食品店を紹介しましょう。いずれも筆者の自宅から半径100メートル+αの立地。徒歩2分圏内です。
まずは、昨年4月にオープンした自然野菜専門八百屋「リムクラッソ」(6丁目)。農薬や化学肥料を一切使わない自然野菜を生産者から直接買い付ける店です。店内には数多くの種類の旬の野菜や、調味料、飲料なども並び、店主が野菜の美味しい調理法も伝授してくれます。
そんな調理法が書かれたA5サイズのレシピカードが多数置かれており、持ち帰りは自由。店でレシピ通りに調理した紅あずまを試食させてくれました。レシピによれば「極とろ火」で2時間火にかけ、余熱で1時間放置するそう。見た目はフツーのさつまいもなのに驚きの甘さでした。営業時間は月~土の10:00~19:00。
▲自然野菜専門八百屋「リムクラッソ」。築地本願寺本堂のまさに真裏のロケーションです。
▲メキシコ産の有機栽培バナナ(400円)と沖縄産のプチトマト(250円)を購入。バナナは甘みとコクがしっかりとあり、トマトは昔の野菜っぽい青臭さが特徴。
▲A5サイズ裏表にプリントされたレシピカード。手作り感満載で丁寧に作られています。
次に、「築地漬け亭」(7丁目)。旬の魚を西京漬、大吟醸漬(酒粕漬)、江戸漬(甘味噌漬)、などの「漬け」にした「漬け魚専門店」です。店の紹介文には「築地で三十余年、業務用の切身を取り扱ってきたマルエイ交洋物産の三代目、自称『漬け人』が厳選した魚に、適した漬け時間と漬け床を研究し、すべてにこだわった手づくりの逸品です」とあります。
▲「築地漬け亭」。店頭のリストで選ぶと、店の奥から冷凍してある商品を出してくれます。
さわら西京漬(一切800円)、銀だら大吟醸漬(650円)、金目鯛江戸漬(600円)などが代表的な商品。一切れずつの販売と、お得な詰め合わせもあり、初心者には人気商品3点を詰め合わせた「お試しセット」(1500円)がおススメ。持ち帰り専門店ですが、電話で予約しておけば好みの魚を焼いてくれるサービスもあります(一切80円)。日祝日・水曜定休で営業時間は9:00~17:00(土曜日は~15:00)。
▲この日の「お試しセット」。銀さけ江戸漬一切れ、ほたて貝柱粕漬二切れ、銀だら・金目鯛・鯖の西京漬各一切れ。
3店目は「オリミネベーカーズ」(7丁目)。TVや雑誌で数多く紹介され、知名度はかなりのものなので老舗かと思いきやオープンは2011年3月。まだ6年なんですね。もともとは場外市場に1932年(昭和7年)からある老舗の包装材料専門店(折箱屋さん)の「つきじ折峰」がはじめたお店。今では築地のほかに、勝どき店、新大橋店があります。
▲「オリミネベーカーズ」。小さなお店なので店内に客が5人ほどで混雑状態。
改良剤や乳化剤など添加物を一切使用せず、素材の味を生かしたシンプルなパン、がウリ。築地ならではの商品としてよく紹介されるのが「サバサンド」(504円)。新鮮なサバを塩焼きにしてレモンを効かせたチャパタサンドです。ほか、築地っぽい商品として人気なのが「フォカッチャしらす」(298円)、「フォカッチャいいだこ」(298円)。このあたりはぜひ一度試食をオススメします。水曜日定休で営業時間は7:00〜19:00。
▲「フォカッチャいいだこ」と「フォカッチャしらす」。どちらもたっぷりのってます。
そしてオリミネの2軒隣に位置するのが「酒の勝鬨・勝鬨酒販」(7丁目)。アマゾンや楽天市場等で通信販売を幅広く展開していることもあり、日本酒好き、ワイン好きにはちょっと知られたお店です。創業は1952年(昭和27年)。間口に比して奥行きのある店内には日本酒、焼酎、ワインが所狭しと並べられ、希少酒、限定酒、旬の酒が数多くあるので、酒好きにとってはうれしい限りです。また、近くの居酒屋「築地とときち」と月1回のコラボイベント「テイ酒(シュ)ティング」をはじめ、飲み比べイベントも開催。
今では大メジャーとなった山口県、旭酒造の「獺祭」をかなり以前から取り扱っていたようで、おそらく獺祭に関しては全種類の品揃え(確認したわけではありませんが)。磨き2割3分の純米大吟醸から、「獺祭酒ケーキ」「獺祭煎餅」「獺祭ライスミルク」なども売られています。並べられた酒を眺めているだけであっという間に時が過ぎてしまうかのように感じられるこのお店、日祝日定休で、営業時間は8:30~19:00(土曜日は~18:00)。
▲「酒の勝鬨・勝鬨酒販」。店内の品揃えは、間口からは想像できないほどの豊富さです。「獺祭 純米大吟醸48 寒造早槽(かんづくりはやぶね)」(1695円)と獺祭ライスミルク(129円)を購入。獺祭48は新酒しぼりたてで、ちょっと甘めの飲み口。10月〜3月の期間限定販売。楽天ではもう売切れのよう。
まだまだ紹介したい店はあるのですが、ここまで書いてかなりの長文になってしまいました。というわけで、食のコンパクトシティ=裏築地の後編はまたの機会に。
初出:しごとなでしこ
T.KOMURO
編集者。主として男性向け情報誌の編集長を歴任。2015年5月、住居を築地に移し、愛犬の悟空とともに週末TSUKIJIライフを楽しんでいる。