2回にわたってご紹介してきた「女性が働きやすい国、ホンコン」。
香港で女性が働くには欠かせないお手伝いさん(ヘルパー)の存在についての詳細はこちらを。
ヘルパーの制度に対する香港の人々が持つ価値観や考え方についての詳細はこちらを。
しめくくりの今回は、ついに私が実際に雇い始めたヘルパーさんとの生活についてお話しますね。
ヘルパーさんとの暮らし
いろいろ悩み、不安もありましたが、今では、ヘルパーさんを雇って大正解だったと思っています。子供が大好きなヘルパーさんで、遊ぶのがとっても上手。リサイクルの紙でお菓子を作る、お絵描きを一緒にする、娘は私と一緒に遊んでいるときよりもずっと楽しそうにしていました。
(写真/ヘルパーさんに抱っこされて家に帰る娘)
ヘルパーさんには朝、掃除、朝ご飯の支度などしてもらっています。午前中は私が娘と遊び、11時に娘が3時間の学校に行くのと同時に私も家を出て、6時まで仕事をしています。忙しくないときはジムに行けるなど、自分の時間もできました。6時に娘と一緒に夕食を食べて、お風呂に入れ、私が寝かしつけ、ヘルパーさんは8時には自分の部屋に戻ります。
料理、掃除などは基本的にお願いしています。
日本での生活や、1人でやっていたときと比べて、断然心に余裕ができて、娘としっかり向き合えるようになりました。
日本にいたときは徹夜作業も普通にあり、主人に任せて娘の起きてる姿を見ない日もあったので、同僚から「脳内ベイビーなのでは!?」と思われていたほどです(笑)。
今も、もっと働きたい気持ちもありますが、これくらいのバランスを試していきたいと思っています。長時間働いているときは「娘ともっと時間を過ごした方が良いのかもしれない」と思うこともしばしばあり、どんな立場でも悩みは尽きないのかなとも思います。
実際、自分が子供の頃、ヘルパーが家にいた香港人の友人に、子供としてはどんな気持ちだったのか聞いてみたところ…。
「家にずっと遊んでくれる友達がいるみたいな感じ」
と言っていました。それでも「自分がヘルパーに任せて良いのかな、という気持ちはある」と語っていました。ただ、
「両親も夫も働くことを勧めてくれるから、ヘルパー文化はラッキーなことと思う」と。
香港では独身女性も香港人のヘルパーさんを雇って、週何回か掃除にきてもらったり(外国人のヘルパーさんが住み込みでなく時間制で働くことは違法です)、クリーニング代が安いので、洗濯はすべてクリーニングに出してしまう、という人も多いです。もちろん料金体系が安いのでできるワザでもあるのですが、香港人の良いところは人に任せることがうまいところだと思います。それに、家事を外注することに罪悪感がありません。これは心理的にすごく大きいと思います。
香港では、働く女性に対して他にもこんなことが…
こちらで働く独身の友人がこんなことを言っていました。
「仕事相手が、結婚しているかどうか聞いてこないからすごく楽。
結婚しているかどうかは仕事の能力に関係ないのに、日本ではいつも聞かれるのが嫌だった」
と。また、「好きなタイプは〜?」とかいう会話にならなくて、気が楽だと。
年齢が離れていても、友人という感覚があり、年下男子から急に「姉さん」扱いされることもなく、変に気を使われることもないから、その点では「日本に帰りたくなくなった(笑)」そうです。
女性の方が稼いでいるカップルもいますし、友人で旦那さんを日本から連れてきた人もいます。
もしくは、結婚していても女性が香港に来て、単身赴任している人もいます。
女性だからこうしなければいけない、こうあるべきだという意識から解放されている人も多いし、そんな選択肢もあるのだと知るだけでも、自分も世界が変わりました。
幸い今のところ、わが家ではヘルパーさんとトラブルはありません。保育園が(原則的には)ないのは困りましたが、今私も働けているのは、香港にヘルパー文化があったお陰です。
私は父親が既に他界しているのですが、不幸中の幸いというか、育休中に入院して亡くなったので、最期の3ヶ月は毎日病院に通い、看取ることもできました。けれど、もし育休中でなかったらどうしていたのだろうと思います。介護休暇もあるかもしれませんが、働きながら、介護をしていた友人もいます。
今の日本では、料金体系が違うこともあり、フルタイムでヘルパーを雇うことが難しいと思います。けれど、香港が外国人家事労働者を受け入れ始めたのは1973年のこと。日本も時間はかかるかもしれませんが、ヘルパー制度でなくても、働きたいと思ったとき、育児や介護、何かで困ったとき、助けになる社会資源が増えて、女性が物理的にも精神的にも、もっと働きやすい社会になれば良いなと思います。
違う国の制度や考え方をお伝えすることで、働く女性のみなさんに少しでも参考や励みになれば幸いです。
初出:しごとなでしこ
スーれいな 香港在住エディター
モード系、コンサバ系のファッション誌の編集を経て、フリーエディターとして活躍中。国際結婚を機に香港に移住し、現地で地元フリーペーパーに執筆や、日本の女性誌のライター、翻訳を行う。只今、ノマド海外ライフを送りながら、二歳の娘の育児に奮闘する日々。