日本でも安倍政権が「女性の活躍支援」のひとつとして、2016年に外国人家事労働者の受け入れを一部の地域で解禁しましたね。
アジアの中で香港は、先駆けて外国人家事労働者を受け入れています。
ワーママをはじめ、私たちに最も身近な存在である外国人家事労働者の仕事のひとつがお手伝いさん。
こちらでは「フォーリン・ドメスティック・ヘルパー」、通称「ヘルパー」と呼ばれ、彼女たちのおかげで、香港の女性はとっても働きやすい環境の中で仕事ができているんです。
今回はヘルパーさん、そして女性が働きやすい香港の文化について紹介したいと思います。
ヘルパーを雇うのは富裕層だけにあらず! 一般家庭でもヘルパーを雇うのが当たり前
とある日曜日の公園の写真です。これはコーズウェイベイという日本でいう渋谷のような街なのですが、何かのイベントをしているかのように見えます。
でも、そうではなくて、日曜日にお休みのお手伝いさんたちが友人たちとランチやお茶をしているのです。
彼女たちはフィリピンをはじめとして、インドネシア、マレーシアなど世界各国から来港。お給料をもらいながら、雇用主の家に住み込みで働いています。
(写真/噴水の前で写真を撮ったり、談笑したりするヘルパーさんたち。毎週日曜日のいつもの光景)
お手伝いさん(ヘルパー)と聞くと、やはりお金持ちが雇っているイメージでしょうか?
でも香港では一般家庭でもヘルパーを雇っています。ヘルパーのお給料は月にHKD4,310=約¥60,000※ほど。これに家庭により食費を上乗せしたり(しない場合は食事をシェアする)、ボーナスを払うことも。香港の家庭はほぼ共働きなので、ヘルパーを雇っているのが通常です。
※2016年12月現在、The Government of the Hong Kong Special Administrative Region、HPより
香港の女性はすごく仕事が好きなのか、
というと必ずしもそうではなくて、
香港の家賃が高すぎるので、共働きでないと生活できないというのが現状のようです。
また、保育園はあるのですが、入園がかなり限定的で、利用できないとなるとヘルパーを雇うことになります。家事、育児はヘルパーがするもの、両親は働くもの、という認識があります。
ヘルパーがどれほど社会に馴染んでいるかというと、例えば、娘の学校の規定やお知らせには「auntie(おばさん、ヘルパーの呼称)がお迎えの場合は…」など、ヘルパーが送り迎えや、クラスの付き添いをすることが前提で書かれていますし、娘が2歳の時に参加していたプレイグループ(週2、3回、1時間ほど先生や他の子供と遊ぶ学校のようなもの)で、付き添いで親が参加していたのは、9人中私1人でした。午後に公園に行っても、まわりの付き添いはほぼ、ヘルパーか祖父母です。
香港には、失業率を下げるためにも分業の文化が根付いていて、レストランでも食器を下げる係、ショッピングカートを片付ける係とあり、それぞれ自分ができることをするという考えがあります。「若くて働ける者は働こう!」という感じなのです。
ヘルパーの具体的な仕事とは?
ではお手伝いさんはどんな仕事をしているのか?
それは、家事、育児全般です。
朝ご飯の用意、子供に朝食を食べさせ、学校に送って行く、ランチ、夕飯の買い物や準備。車を持っている家庭では洗車などもします。けれど、頼む量や内容は家庭により違っています。
例えばヘルパーのいる友人にどんなことを頼んでいるのか聞いたところ…
「食事は自分で作りたいから、その他の家事や子供と遊んでもらっている」、「家事はやってもらっているが、子供の面倒を見るのは主に自分」といろいろ。
「食材は自分で選びたいから、買い物は自分でする」という人もいれば、「買い物から食事作りまですべて任せている」という人もいます。
特に正解や決まった形はありません。
私も当初は、「お手伝いさんが食事を作ると、家庭の味がなくなるのでは?」という心配をしていましたが、そんな心配は無用でした。例えば、料理好きな人は、食材を切ってもらって、最後味付けや炒めて、クライマックスだけを担当すればいいんですもの。ヘルパーに日本食を教えている友人もいるし、彼女たちが今までの経験で身に付けた外国料理の腕を生かして「○○食パーティー」をすることも。
他には…
・タクシーに乗るときに、土日は混雑するので並んでおいてもらう
・子供の学校の支度、着替えさせることは全部してもらって、最後バス停まで連れて行くのは自分
・帰省のときに手伝ってもらうために空港まで一緒に来てもらう
・その日、週、月でお願いすることをルーティンにしている
という家庭も。
「自分よりも子供に愛情を持って接してくれて、しつけもしてくれるのには驚き」という話もあります。また、子供の面倒を見てくれるだけではなく、晴れた日に車いすに乗ったご老人とヘルパーが散歩している姿も本当に良く見かけます。
良い人に巡り会うと「もうヘルパーなしの生活は考えられない」というのがだいたいの感想です。
(写真/お年寄りを支えながらモール内を散歩するヘルパーさん)
では実際ヘルパーとの暮らしはどんな風なのか?
次回は自分の経験を含めて、香港の人々の考え方の一例をご紹介したいと思います。
初出:しごとなでしこ
スーれいな 香港在住エディター
モード系、コンサバ系のファッション誌の編集を経て、フリーエディターとして活躍中。国際結婚を機に香港に移住し、現地で地元フリーペーパーに執筆や、日本の女性誌のライター、翻訳を行う。只今、ノマド海外ライフを送りながら、二歳の娘の育児に奮闘する日々。